2005年11月18日

哀しい色やね

素晴らしい夜景と小気味良いイタリアンにすっかり天にも昇るような気持ちになっていた僕は、突然近くで破裂するような馬鹿声を聞いて、地上に引き戻された。

 

「ガハハ!おもろいな〜、おいねえちゃん、酒モッテコイヤ!」

生まれた時からサルなみの脳みそで、他人を威圧したり大声を出す事だけで何とか今まで大阪のどぶ板の裏側の溝鼠なみに生き残れてきたような、バブル時代にあくどい事をして銀行や役人を脅して成り上がった、ちんぴらのような連中が群れていた。

 

5mほど離れた4人掛けボックス席に座っているけばい中年カップル+いかにも生まれた時にお母さんの腹の中に脳みそを忘れてきましたといった馬鹿面若年カップルのグループが、すぐ横の舞台でブルースを歌っているガタイの良い黒人歌手を無視して馬鹿笑いしていた。

 

見てると、テーブルのクロスの上にタバコの灰を直に落としながら、襟がオーストラリアの爬虫類並に天を向いて跳ね上がった明るい青のスーツを着ているおっちゃんがいた。

 

「まったくやで〜、ほんま困ったもんやな〜、がっはは!」この笑いは隣にいる原色ばばあである。今時愛地球博のマンモスもびっくりして逃げ出すような、化石的原人類だ。醸し出す雰囲気、顔、着てる物、すべてが見事にマッチしてて、こりゃ確かに、マンモスも食われる前に逃げるよなと思うほど、下品さ丸出しのカップルである。

 

しかし世の中は、類は友を呼ぶと言うか、向かいに座っている若いカップルはどうやら兄妹らしいが、またきちんとあふぉバランスを取っている。

 

「そやなオヤジ、わしからすりゃ、あんなとこ一発で通るんや、当たり前やないけ、がははは!」

そうかそうか、今日は合格祝いか、なるほどなるほど、で、何だ、脂ぎった団子鼻から、公害防止装置のぶっ壊れた煙突みたいにタバコの煙を吹かしながらビール飲んでるお兄ちゃんは、一体どこの大学に合格したんだ?大阪南夜間大学か?

 

妹も、顔中の痘痕と鳥の巣みたいな「とさか頭」を振り回しながら、きーきーと何か騒いでる。体重がかなり標準を超しているせいか、そのあたりの床が心なしか沈んでいるようだ。かなり重いのだろう。ねーちゃん、そんな若い身空で人生棒に振るなよって、思わず老婆心が出てしまうような哀れさだ。

 

  

しかし、よく見回してみると、周囲にはそう言う客が目立つ。煙突みたいにタバコを吹かしていたり、食べ残しの皿の上に直接タバコの灰を落としてたり、トイレで洗った手をぶるんぶるんと振り回しながらテーブルに戻ってくる奴ら。

 

その後マネージャーに話を聞く機会があった。そのマネージャーも、つい最近マネージャーになったばかりの20代後半。しっかりと関西弁で説明してくれた。

 

「ここは元々大阪でもかっこつけずに、本音で話をする地域なものだから、形式などを嫌う人が多い。ホテルのトップGMは外国人だが、中間層はみな南海電鉄時代の人材で、GMが目指すような高級路線は、難波では受け入れられないと反対している。だからGMはこの店のマネージャーを首にして僕を採用した。

 

外部の血を入れたいという事だろう。しかしフロントや裏方はあいも変わらず「ここは大阪だから」という理由で、何につけぶつかっている。タバコにしても、禁煙席など作ると地元から反対されるからと、今だもって導入していない。

 

だからお客様が見るように、いろんな面でちぐはぐさが出ているのだ。本当なら国際ホテルの路線で行き、それでお客を取るべきなのだろうが、毎日の売上を考えると、難波の地元客を手放してはやっていけない」これが彼の趣旨だ。

 

ビジネスモデルが大きく変化する時に、一番ついていけないのは、今までの既得権益にしがみついたサラリーマンなのかもしれない。

 

大阪が地盤沈下して自治体として倒産寸前になったのも、過去の先人の努力の上にあぐらをかき、何の努力もせずにぬくぬくと手抜きをした連中の不作為であり、自分立ちの時代だけを何とか切り抜ければ、他人のことは知らんという「自分勝手」が招いた結果だ。

 

これが約1年前のホテルの実態だった。こんな事を書くのも、実は今年もう一回このホテルに泊る事になったからだ。

 

さて、今回の宿泊では、今でもバーでうどんを出しているかどうか、聞いてみよう。

 

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tom_eastwind at 11:19│Comments(0)TrackBack(0) 世界と日本 味めぐり 

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