2005年11月29日

永福町大勝軒

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この店の売上はすごい。一日680杯のラーメンを店内用に作り、お土産用を含めると1100杯(一杯が1050円のラーメンだ!)売れているので、年商3億円という事だ。

 

醤油味で、メニューはラーメンのみ。バケツみたいな丼に、普通のラーメンの2杯分の中太麺が出てくる。レンゲがでかくて、しっかりと麺をすくいあげてくれる。

 

ガイドブックやラーメン本に必ず出てくるこの店、永福町のお客様を訪問する度に見かけていたが、今回やっと時間が取れて食べる事が出来た。

 

狭い入口の引き戸を開けると、正面から右側にかけてはL字型のカウンターになっていて左側はテーブル席が申し訳なさそうに置いてある。カウンターの内側は透明な板で仕切られており、まるで工場のような厨房が見える。

 

たまたま座ろうとした正面のカウンター席に雑誌が載せてあったのでどけようとすると、その左隣にいた作業着姿の兄ちゃんがにこっと笑って「すいません、ここいるんです」ほ〜、OK,じゃあってんで右側にいるサラリーマンおじさんの横に席を確保した僕は、普通のラーメンを注文して、テーブル周りをぐるっと見回した。

 

隣の席を見ると、バケツサイズの丼に入った醤油ラーメン。1955年の開業以来、いつも味を少しずつ変えながら、お客様に飽きられないように努力しているという姿勢や、ラーメンだけでなく、お客様がお店の外で並ぶ時には、日傘や雨傘を用意、まだ冷蔵庫が家庭に普及していなかった時代に、氷水でお客を喜ばせるなど、様々な工夫を凝らして現在に至る。当初は出前の売上もお店の半分くらいを支えていたが、味の低下の問題があってやめた。

 

そんなお店の歴史を取材した地元ラーメン新聞の記事を読んでいたら、左隣に凄い兄ちゃんが戻って来た!よく肥った巨体は、肩から耳たぶまで刺青だらけ。トイレから戻って来た彼は、「ええ、そうですね〜」等と、声だけ聞いたら普通のサラリーマンみたいな声を出していたが、巨漢の迫力は半端ではない。

 

まあいいや、記事を読みつづけると、この店ではトイレをお客に貸さないらしい。どうも親の代からの言い伝えみたいで・・・あれ〜?隣の兄ちゃん、今トイレから戻ってきたぞ?

 

そうなるとついつい悪い癖が出てくるのが、僕のひねくれ者の証拠。ラーメンが来るまでの間、いろんな筋書き意地悪く考えてみた。

 

その1:バケツサイズの丼に入った醤油ラーメン=とりあえず量でごまかしですか?

 

その2:1955年の開業=つまり、醤油に鶏がらスープをぶっかけたラーメンを出していたという事ね。

 

その3:いつも味を少しずつ変えながら、お客様に飽きられないように努力している=独自の味を出す創作ラーメンというより、何を出してよいか分らないから味を変えるという、捜索ラーメンですな。

 

その4:お客様がお店の外で並ぶ時には、日傘や雨傘を用意=う〜ん、並んで欲しかったのだね〜、よく分る。

 

その5:まだ冷蔵庫が家庭に普及していなかった時代に、氷水でお客を喜ばせるなど=そりゃ、味で勝負できなきゃ仕方ないわな。

 

その6:出前を止めた=それって、普通に考えて当然じゃない?少なくとも元祖長浜は出前なんて味の落ちるサービス、最初から夢にも思わなかっただろうね。

 

さて、待つこと10分、ラーメンが来ました!待ってる間にも近くのテーブル席の4人家族が「おいしいね〜このラーメン」とか、東京弁で話してる。隣の巨漢も、ケータイ片手に、おいしそうにチャーシュー麺をがつがつと食ってる。

 

もしかして、僕の考えって、ひねくれ妄想?もしかしたら本当はおいしいの?そう思いながら、僕の前に出てきたラーメンを、しっかりと上部から見つめた。

 

まずは麺。何故か麺の腰や固さだけは、麺の外側1ミリ程度のとこの色と、内側の色の変化を見れば、ある程度判断が出来る。出てきた中太麺は、茹で釜に入ってる時間が長すぎなのと、釜から取り上げる時の水切り不足とが重なって、外側が余分に水を吸っている。麺が多すぎるのが一番の原因だろう。

 

次はスープ。魚だしを使っているが、芸がない。ただ魚がいて候。それだけの味。深みも隠し味も感じさせない、べたーっとした軽い醤油味だ。最後まで食べさせる為にスープに油を含ませて油膜で熱が逃げるのを防いでいると言うが、その油は単に熱いだけ。

 

具は愚なり。でろりんと麺の上に広がった焼豚は普通にパサパサで味がなく、歯の間に突っかかる。メンマは、おいしいと言うが何を自慢したいのかよく分らない。これでメンマだけ別売りをするのは良い度胸。東京の人は可哀想としか言いようがない。

 

その後、何とか空腹のお腹に半分だけ麺を突っ込んで、降伏。いやいや、参りました。東京人って、みんなよく汗をかいて働いて、疲れた体に塩気を補給する為に、醤油ラーメンを食う習慣が出来たのでしょう。

 

おいしいものを食べるという習慣がなかった労働者は、まずは腹を満腹にさせて塩気を補給するという視点から、こんなラーメンを作ったんでしょうね。その意味ではすごい発想だと思う。味を捨ててでも量に拘るという姿勢は、神がかりですね。

 

いやいや、一食損をした気分。人生は時間限定されているのに、その内の一回をもろに無駄にした気分でした。

 

こんな書き方をしましたが、東京の人がこのラーメンをこれからも愛しつづけるのは否定しません。大勝軒は東京だから育ったラーメンだし、これを美味しいと思うのは大阪の神座(かむくら=3度食べたらおいしさを理解出来ると言われてる、一回では絶対に美味しいと思えないラーメンもどき)をおいしいと思う大阪人の気持ちと同じ。

 

好きなものは好き。それで良いと思う。但し、だからと言っておいしいとなると、これはやはり、ある程度客観的な基準をベースに考えたほうが良いのでは?勿論誉める所ありますよ。テーブルが綺麗とかドアがちゃんと開いたとか、お釣りを間違えなかったとか、それは立派だ。

 

何はともあれ、ご当地名物を食べました。香港の水上レストラン並に、おいしくねーけど(おっと失礼、おいしいと思う人には美味しい)一回はモノの試しで食わないと、話のネタにならないという食い物ですから、誰でも一度は行く事をお勧めします。

 

いや〜、名物に美味しいものなしとは、よく言ったものです。

 

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tom_eastwind at 13:47│Comments(1)TrackBack(0) 世界と日本 味めぐり 

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この記事へのコメント

1. Posted by buy tramadol   2006年04月19日 00:35
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