2006年07月29日
亀山自給
何となく語呂が良いので、使ってみた。
今日のお題は、日経ビジネスに最近取り上げられた特集での、シャープ亀山工場で働く労働者の時給についてである。
時給1100円。これがシャープ亀山工場で働く、シャープの下請け協力会社に人材を派遣している会社の派遣労働者の賃金だ。
年収300万円は堅いと言われて、北海道から出稼ぎに来た30代男性が、一日12時間労働できつい上に、作業中の事故で怪我をしたら「もう来なくて良い」と首を切られた。
愛知県で働く派遣労働者の平均時給は日本人で1,347円、日系人は1,296円と、殆ど格差がない。
この賃金で正社員並にこき使われ、不要になったら首を切る。派遣が自由な働き方という人もいるだろうが、きちんとした生活をするには、あまりにも不安定な職種である。人を大事にして終身雇用や年功序列賃金を堅守してきた日本が、完全に様変わりしているのは、誰もが感じている事だろう。
去年から今年にかけて日本の企業は決算で次々と最高益、トヨタに至っては1兆3700億円の利益を出しているが、その利益の源泉を追い求めれば、安い人件費にたどり着くのではないだろうか?
大手銀行も利益を出しているが、この仕組も実は国民からの搾取だ。銀行は、国民が預けたお金をサラ金などに5%程度の高金利で貸し付けたり住宅ローンで3%の金利を取ったりして利益を出しているが、本来は国民に利息として配当せねばならない部分を、日銀のゼロ金利という名目で金利ゼロ状態にしているから、利益を計上出来るのだ。
つまり、製造業の利益も金融業の利益も、すべては国民に無理難題を押し付けて得た利益であり、もっと簡単に言えば、取れるところから取っているだけだ。
こんなのを経営努力と言ってしまえば、誰でも経営が出来るよ。弱いところから取る、やくざと同じ発想だ。新しいビジネスを創り、誰もが潤う、そういうビジネスモデルでない事に、今の日本の悲哀がある。
ところがそれだけ国民からお金を搾り取っているのに毎年30兆円の赤字を出している日本という国は、一体何だろうと思う。よくもまあ、国民がクーデターを起こさないものだ。従順な羊とでも言うか、長いものには巻かれろと言う根性なのか。
それに比較して、というか国家の比較をしても仕方ないのだが、ニュージーランドの最低時給は現在10.25ドル、5年前と比較しても40%近い上昇を見せており、法定の年休も今年から4週間に拡大され、それでいて国家は毎年黒字である。
今年は利益の還元という事で、会社の法人税や個人向け所得税の減税を検討中という、まさに国民の為の国家であると言える。
この違いは一体どこから出るのか?それはやはり、国民の国民による国民の為の国家造りという事を、国家の主体である国民が理解しているからだろう。
ニュージーランドはイギリスの伝統をひいており、400年前のクロムウェルの時代から市民が国王に対して戦い、血を流して自分の権利を勝ち取って現在の地位を築いてきた。それに比べて江戸時代から「お上」とあやめ奉る日本の国民は、ある意味搾り取られても仕方ない性質なのかもしれない。
しかし、国民全員がそうなわけではないから、自分で「何かおかしい」と思う人間は、自分が人間らしく生きていける国に移動するのは、当然の権利ではなかろうか。
移動の自由、それこそ国家が憲法として保障している国民の権利なのだから。