2006年10月19日

連鎖ストレス症候群

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 「ちょっとあんた、何やってんのよ!」

「あ。お客様、申し訳御座いません」

「謝ればいいってもんじゃないでしょ!一体どうなってるの!!」

 

日本でよく交わされる会話である。

 

 

自己責任を理解できない消費者が、よく自分の馬鹿さ加減を棚に上げて相手を怒鳴り上げる場面を見かける。マスコミなどもよく使う手段だが、毎日TVを見ている消費者も、マスコミの非道理な理屈を憶えて実に都合よく使っている。

 

昼時の東京の丸ビル、行列の出来ている混みあうレストランで、一番後ろに並んだ客が店員に聞く。

「後どれくらいかかるの?」

「そうですね〜、この行列ですから、後30分は待ってもらいませんと〜」

「あんた何いってんのよ、あたしは忙しいのよ!どうなってるのよ、この店は!」

 

まだ食ってもいない、金を払ってないのに、客でもないのに「店の姿勢がおかしい」と怒る。おいおい、君は商品を買ってないよね?それで客でもないのに、何を言ってるの?と思うが、本人は至って真面目。何故ならこの女性は、自分の都合しか考えてないのだ。

 

 

ストレス連鎖症候群の実例:

 

「ちょっとあんた、何やってんのよ!」若い女の子が、昼下がりのコンビニでレジの店員相手に怒鳴っている。

 

「あ。お客様、申し訳御座いません」どうやら商品の渡し間違い、女の子がマイルドセブンを注文したら、マイルドセブンスーパーライトを出したのだ。

 

「謝ればいいってもんじゃないでしょ!一体どうなってるの!!店長呼んでよ!」消費者一流の、相手のミスを一切認めない苛めである。

 

問題は、怒られた「店員」も、仕事を終わって自宅に帰る時は消費者になるという事だ。

 

夕暮れの中、疲れた体を引きずってJR駅に来ると、地震の為に安全装置が働き、電車が停止している。すると仕事中に理不尽に怒鳴られた事と疲れが合わさって、駅員に向かって怒鳴り上げる。

 

「何やってんだよ!電車を早く走らせろよ!」

文句を言ってる彼は、じゃあその電車を走らせて事故が起こったら責任を取るのか?あまりにも無責任な発言だ。

 

怒られた駅員は、その場で言い返すことも出来ず、職場を後にして繁華街に出る。憂さ晴らしの酒飲みだ。そして飲みに行った居酒屋で、そこで働いてる女の子がちょっとした手違いで間違ったお酒を持ってきた。ピーチハイを注文したのに、ウーロンハイが来たのだ。

 

「ふざけんな!俺はこんなもん注文してね〜ぞ!客を舐めてんのか、こら〜!」

「あ、お客様、申し訳御座いません」

「謝って済むもんじゃね〜ぞ、どうしてくれるんだ!」

 

どうって、普通に「これ、違うよ」といえばよいだけなのに。第一、それが大きな問題か?しかしこの駅員、今日の夕方、乗客から怒鳴られた怒りが抜けないままに、酒がそれを増長させている。

 

店長まで呼び出させて土下座させて、やっと気が治まった駅員は、最終電車で酒臭い息を吐きながら自宅へ帰る。

 

その後、この居酒屋で働いていた女の子が、店長に思いっきり怒鳴られる。

「何やってんだ、ばかやろ〜!お前のおかげで俺まで怒られたじゃね〜か!いいか、よおく憶えてろ、今度やったら首だぞ、クビ!」

 

お店を出た女の子はそのまま帰宅。でも翌日、たまたま買物に行ったコンビニで、レジの店員が間違って出したタバコを見た瞬間、昨日の自分に起こった事件を思いだして頭が突然真っ白になる。そして

 

「ちょっとあんた、何やってんのよ!」

「あ。お客様、申し訳御座いません」

「謝ればいいってもんじゃないでしょ!一体どうなってるの!!」

 

これこそ日本が抱える負の連鎖、連鎖ストレス症候群である。

 

誰もが他人のミスを認めず、実はミスでもない事をミスのように扱い、それに対して「業者」が正当防衛しようとすると、周囲でよってたかって「謝れ〜!」とやる。これこそ正常な判断能力を失った洗脳集団ではなかろうか?

 

少なくとも、人はミスをするものであるし、そのミスにしても相手の人格を傷つけるような怒り方をする程のことだろうか?それほど今の日本では、心に余裕をなくしている人が多い。生きるだけで一生懸命、だけではない、そこには負の連鎖がある。

 

実際に、責任を取らねばならないような問題もある。妊婦が病院で誤診され放置され、死んででしまった事件。苛めで自殺した子供に対する学校の無責任さ。

 

だが、そのような事件と、JRの電車が地震で自動停止した問題が、果たして同じ土俵で判断されて良いものであろうか?たまたま違った酒やタバコを出した、その程度の事で怒鳴る必要があるのだろうか?

 

ニュージーランドでは人的ミスが実に多い。バスが道を間違える、銀行の窓口で入金額を間違える、テレビは時間どおりに放映されない、弁護士が書類を書き間違える、とにかくミスは多い。

 

しかし人々は、それに対していちいち怒ることをせず、むしろ笑顔で「今日は暑いもんね、私もこの前この道間違ったのよね〜」と、友達同士で笑っている。

 

そのおおらかさは、学校教育や国民性にも通じる。人はミスをするものという理解と、人に笑顔で接する事で、その人は次の機会に、他の人に笑顔で接する事が出来、それが更に他の人の笑顔と、つまり、笑顔の連鎖症候群があるのだ。

 

NZが良いところであるのは、たくさんの理由がある。その中でも大きいのは、この、笑顔の連鎖ではないだろうか?

 

日本で生きている限り、ストレス連鎖症候群から抜け出す事は出来ないだろう。何故ならそれには国民的合意が必要であるが、それには「何故日本は皆ストレスがあるのか?」という事を、立ち止まって落ち着いて考える必要があるが、立ち止まる時間も、考える事も出来ない人々が、今の日本の大多数を占めているからだ。

 

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tom_eastwind at 11:18│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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