2006年11月21日

今年2回目のJury その1 NZの陪審制度

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月曜日の朝、夏だと言うのにひんやりした小雨の中を傘も差さずに高等裁判所に向かった。

 

高等裁判所の正面玄関から地下にある集合場所までギャロップで駆け下りたら、時計は丁度集合時間の9時15分を指しており、部屋から溢れ出た人々の後ろに並んで、雨に濡れたジャケットを拭きながら、係員に名前を呼び上げられるのを待っていた。

 

 

そう、今日は高等裁判所の陪審員に呼ばれたのだ。一年で二回目って事で要領も分かったので、今回はかなり余裕で周囲を見る事が出来た。

 

 

この部屋に呼ばれたのは、オークランド地域に住む無作為に選ばれた約150名の人々。でも、肥ったおばさん(刑務所の面会で行列を作る人)とか目つきの悪い学生とか昨日のラリがまだ残っているような失業者みたいな、あまり雰囲気のよろしくない人が目立つ。

 

僕は、もしかして間違って被告側の集団に混じって裁判のレクチャー受けてるのか?そんな事を疑い始めた時、係員が僕の名前をMr付きで呼んでくれたので、どうやら自分が正しい側に立っている事が分る。オフィス街で働く白シャツ連中は、色んな理由をつけて断っているのかな。

 

今日の法廷は3つ。発表がある。第一号は、麻薬の違法所持と販売で、3週間程度の審理。軽いな、これは。でも何でこんなに長いんだろう?

 

陪審員に選ばれたが初めての人も多いようで、今までは「他人事」だったのが、このあたりで「自分事」に感じられたようだ。

 

本当に自分が選ばれたら3週間会社を休めるのか!それとも失業中だからダブルインカムになってラッキー!と思ってるのか、いずれにしても少し明るい雰囲気が漂う。

 

ちなみに会社員が陪審員に選ばれた場合、その期間の給料は会社が全額保証して、有給休暇とは別に休みを与えなければいけない。選ばれた会社員にとっては宝くじに当たったような喜劇、社長にとっては出会い頭の交通事故のような悲劇である。

 

陪審員に対しては更にこの期間、一日につき62〜84ドル程度の日当と、交通費が支給される。この日当を確定申告するべきかかどうかは、外国人の立場で厚かましいと思ったので、あえて聞かなかった。

 

そして第二号は、おおっと出ました、殺人!それも3件の罪状で告訴されている、普段は絶対に会えない極悪人だ!人権擁護のこの国では果たして「社会による復讐」が承認されるのか?!何てはしゃいでたのは、どうも僕だけのようで、周囲の温度が真夏のオークランドから真冬の南島の峠の吹きっさらしみたいに、一気に下がるのを感じた。

 

見かけはかなりイッてる陪審員でも、実際の生活で殺人事件なんて遭う事はなく、想像もしない人々ばかりが集まってるんだな。「死」という冷たい空気が、霧のようにみんなの上に覆い被さる。

 

「この審理期間は4週間、50名を選びます」陪審員候補が他に比べて特別に数が多いのは、重要事件なので陪審員拒否等もたくさん出るだろうとの裁判所側の読みであろう。

 

3件目は強盗事件で、これはあまり重要でないので、審理期間は一週間。

 

どの法廷に当たるかは、150名の皆の目の前で、商店街のくじびきで使う六角形の「がらがら」に名札を入れて、がらがら回して順順に抜き出していくと言う方法。

 

150名の中で陪審員候補になるのは100名程度。他の人は、名前を呼ばれなかったらそこで帰ってよい。勿論お金は31ドル+交通費を貰える。

 

僕の名前は、結局殺人事件の陪審員を選ぶ際の、ちょうど25名あたりで呼ばれた。さ〜て、殺人犯の顔を拝みに行きますかと思って、50名と一緒に外に出ると、急に係員が戻ってきて「16号法廷を用意してたんだけど、都合がつかなくてさ、後1時間くらいその辺でぶらぶらして、11時45分に再集合してね」という説明。

 

何じゃそら。仕方ないので、正面玄関横の喫茶店で、ソーセージロールとアールグレイの朝食を取る。

 

この喫茶店は1800年代の暖炉やアイロン、レンガの壁などの調度を残してはいるし、働いてるおばあちゃんも、その頃から働いているのかと思ってしまうが、お客はマントを来た弁護士やPA(パーソナルアシスタント、要するに弁護士見習かお手伝い)が打ち合わせをしている。

 

彼らの脳みそは現代の法律でぎっしり詰まって、戦闘態勢バリバリの雰囲気が、5m離れたこちらのテーブルまで伝わってくる。

 

彼らの恰幅のよさは、その態度で陪審員を圧倒し、出来れば食いついてでも被告を無罪に持ち込み、最後に目の玉が飛び出るような請求書を被告の家族に送りつけようとしているのがみえちゃんですわ。そりゃまあ、彼らの場合は出来高制ですから、気合も入ります罠。

 

ここで負けたら,何の為に苦労して大学出たのか、意味がないのですな。

 

隣のテーブルでは、軟らかそうな巻き毛の金髪の20代前半の男の子が、更に軟らかそうな脳味噌でこの状況を楽しんでいる。

 

定職もないのだろう、これから4週間をどう過ごそうか、ねえねえ、殺した奴って、この前の新聞に出てたあいつだよねとか、隣のテーブルに一人で座るジャンパー姿にスリッパのマオリのおっちゃんを掴まえて、くっちゃくちゃとくっちゃべっている。

 

長くなったので、明日に続きます。写真は、高等裁判所内にある、高等裁判所の模型です。実物ではありません。

 

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tom_eastwind at 00:02│Comments(1)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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この記事へのコメント

1. Posted by 山羊B   2006年11月21日 21:19
私も今年初めて、運良く?陪審員の当選?通知を頂きました。
乳児を理由に断ったのですが、次回があるので覚悟しておけって!レターをもらったので、参考にしたいです。続きが早く読みたい・・。

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