2006年12月24日

麻布十番 カシータ

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「新一之橋の交差点を左にお願いします」

 

11月最終日の夕方は、5時頃にはすでに薄暗くなり、汐留のロイヤルパーク汐留タワーホテル(長い名前だし同じような名前のホテルが他に2軒あるのだからめんどい)からタクシーを拾った頃には、すでにヘッドライトを点けた車列が、そろそろ師走に入ろうかという銀座の街並みを照らしていた。

 

 

東京が江戸と呼ばれていた頃の古地図が手元にある。1600年代だから、江戸幕府が何とか始まった時代のものだ。古地図によると、江戸城の南側にあたる汐留は、その当時、松平政千代のお屋敷があったところだ。

 

お屋敷の隣の海側には濱御殿、今で言う浜離宮がある。今回泊ったホテルから、浜離宮がちらりと見える。浜離宮から先は今も埋め立てされてないのは、さすがに天皇への遠慮か。

 

高層ビルからは、浜離宮に出入りする車が見えるが、当時はまさかこんな建物が出来て、浜離宮を見下ろすような不届きな平民がいるとは、さすがの天皇も徳川幕府も思いつかなかっただろう。

 

そう言えば皇居近くの高層ビルは、高さ規制をした方が良い、でないと、天皇や皇太子の家が丸見えじゃんという議論も出ている。たしかに、夫婦喧嘩の真っ最中をフライデーされたらまずいよね。

 

そして汐留。ホテルの窓からは左手に見える築地市場だが、地図の上では浜離宮の隣にある築地が見つからない。

 

もう少し地図を眺めていると、どうも1600年代は築地という地名が存在しなかったようで、その地域は掘割に囲まれた大名のお屋敷になっている。築地の向かいにある西本願寺は地図に存在するが、このお寺もその築地側ともう一辺が掘割になっている。

 

つまり築地西本願寺の前の掘割を埋め立てて大きな道路にして現在の築地が出来上がっているのだ。そいでもって、築地に市場が出来たのは昭和10年、それから現在の築地の歴史が始まっているのだ。

 

なるほどなるほどと九州出身の山猿は東京の発展に妙に感心しながら、でもまあ天皇と言っても邪馬壱国の亜流でしょくらいの気持ちでホテルを出た。

 

冒頭に戻るが、タクシーで向かった先は麻布十番。江戸時代には狸の住んでる場所=狸穴と呼ばれていた地域だが、商店街は昭和のイメージを残し、有名なそば屋とか芸能人行きつけの焼肉屋などが軒を並べている。

 

地下鉄大江戸線の麻布十番駅が出来たので、陸の孤島ではなくなったが、新宿や汐留の機械的なイメージからはかけ離れた、とても静かな一画だ。

 

さて、本日の目的地は麻布十番にあるカシータだ。東京に行くと、大体一回は食事に行く。東京に良いレストランは沢山あるが、特に個人向けのサービスをシステムとして導入しているこの店では、様々な新しいホスピタリティが学べるので、仕事の上でもとても役立つ。

 

そして今はイーディというオーストラリア出身の関西弁を話すマネージャーがおり、オセアニアの話で盛り上がることも出来るので、個人的にも楽しみにしている。

 

数日前のブログでも書いたが、今回の東京出張はとにかく男性お一人様飯が多く、カシータも男性お一人様だ。

 

このカシータ、それほど宣伝していないにも関わらず、殆ど常連の予約で毎晩満席になる店だ。まずタクシーが止まると、ビル前の歩道にお店から出てきたウエイター君が、きちんと待っている。雨の日は傘を持って待ってくれてる。

 

お店自体はビルの8階にあるのだが、予約の時間を見計らって、その日の担当者がビル入口で当日の予約リストを持って待っているのだから、最初から心地よい気持になれる。

 

「いらっしゃいませ、tomさん!」明るく声をかけてくれる。慇懃無礼でもカジュアルでもない、丁度良い声のトーンは、個人の名前を呼ぶというちょいテクで更にお客を喜ばせてくれる。

 

彼らはお店が顧客管理をしているので、僕がどこから来たか、何の為に食事をするのか、どんなお酒が好きか、前回の来店時に問題はなかったかなどを、スタッフ全員がデータ共有している。

 

だからエレベーターの中でも、初めて会った新人さんとでも話が弾む。「ニュージーランドは今夏なんですよね、どんな感じですか、夏のクリスマスって?」「サンタがサーフィンボードに乗ってきますよ〜」等と言う他愛のない会話をしながら8階へ上がる。

 

この店はちょっと変わった造りになっており、レストランのダイニングスペースとは別に3メートルほどのちっちゃな池?プール?があり、これが真っ青な色にライトアップされていて「癒し」のイメージを提供している。

 

待ち合わせ用のバーで、いつものジントニックを貰う。タンカレーベースの奴だ。今日はどうせお一人様なので、とっとと一杯だけ飲んで、後はそのままダイニングルームに上がる。そうそう、ここはバールーム、ダイニングルーム、デザートルームと分れているのだ。特に窓際のテーブルだと、東京タワーが丁度肩の高さに見えて、とても綺麗。

 

ここのシェフは、いつも新しいメニューにトライしていて、新しい食材発見にいとまがない。その日のお勧めを聞くと、「シェフが自信を持った一品です!」と持ってくる料理は、大当たり3、普通4、外れが3くらい。

 

最高を狙い過ぎて、いつも「前よりよい料理」と考えるから失敗も当然あるが、それは前向きな結果だし、普通のレストランであれが出たら、どの一品も看板メニューになるだろうなって感じ。

 

おいしい料理は、本当に人を、あっと言う間に笑顔にさせてくれる。

 

さて、この日は男性お一人様なので、ウエイターの皆さんも特別気を使ってくれてる。いやいや、決して同情ではなく(思いたい)、プロとしてお一人様で来たお客様を楽しませようとする気持だ・・・?

 

まあまあ、早速喫煙席から最も離れて隔離されているような禁煙テーブルに案内してもらうと、メニューを開いて説明を聞く。前回と比べて三分の一くらい変わっているな。季節の素材を使う店だから、年中同じメニューはどうしても限られてくる。

 

1000円で食わせてくれる1スプーン料理ってのも楽しい。元々胃袋が鳩並に小さいので、小皿をつつくのが大好きな僕としては、こういう前菜が、同じ値段で吉野家の牛丼が3杯食えるとは知っていても、牛丼3杯並みの満足感を与えてくれるなら、十分納得だ。

 

食事は、食べる事としての体の栄養補給と、ご馳走という意味での心の栄養補給と言う二面があると思ってる。カシータは僕にとっては心の栄養補給なので、この量で十分。

 

勿論吉野家はdaisukiだし、日本で必ず行く店の一つであるが、カシータと吉野家を、値段のみを取り上げて比較する事は、そうしたい人はそうすれば良いが、やはりお店とは味だけではなく、造り、雰囲気、サービス、そういう全体的なバランスを考えた満足度の勝負であると思っているので、どちらも素晴らしい店だと思う。ただ、概念が違うだけなのだ。

 

ワインはいつもニュージーランドワインを注文する。少しでもNZ産のワインがこういう店で売れてくれて、一人でも多くのお客がニュージーランドに興味を持ってもらいたいという気持ちが半分、後の半分は、本当にニュージーランドの白がすっきりとして飲みやすいからだ。

 

お一人様で色んな事を考えながら、ゆっくりと料理を楽しむ。途中、マネージャーのイーディもわざわざテーブルに座って一緒にワインを飲んでもらったりしながら、約2時間の食事を楽しむ。今晩も、どれも力の入った美味しい料理とワインを楽しませてもらった。

 

東京では今だもってまともなレストランでも禁煙席を持っていない店が多い。それより前に、客のマナーが全くなってないから、お店も禁煙と言いづらいのだろうが、すし屋のカウンターで煙草を吹かしている親父を見ると、政府の批判よりも国民批判をしたくなるのは僕だけか?

 

この店の最後の〆は、最上階にあるデザートテーブルで頂くポートワインだ。テイラー10年ものをニイップグラスでもらい、ビターの効いたチョコレート系のデザートと合わせて、夜空にくっきりと見える東京タワーを眺めながら、一杯やる。僕とほぼ同じ時代に出来たタワーを見ながら、日本を離れた頃の事や、それからの生活を思い出す。

 

いや〜、それにしても人生って、楽しいな〜。もう一回生まれ変わっても、同じような人生を歩きたいな。

 

海外で起業、今までにないビジネスをどんどん作り出して、うまくいったものもあれば失敗作もあるけど、どれ一つとして、だらだらと流されてやったものはない。

 

毎日毎日が勉強と肝試しのような生活はそりゃ〜どきどきするけど、それが人生じゃないかなと思ったカシータの晩。

 

お一人様だから持てる、ゆったりした時間。

 

この美味しい空間を次回も楽しめるように、明日もまた頑張ろう。

 

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tom_eastwind at 00:01│Comments(0)TrackBack(0) 世界と日本 味めぐり 

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