2007年01月04日

博多 箱崎宮

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「はこざきぐう」は、今から1100年くらい前に出来た神社で、元寇の侵略で焼失したが、その後再建されて現在の姿になったと伝えられている。

 

 

このお宮の入口に、戦後すぐの頃から開いている焼き鳥屋台がある。その名は花山。

 

博多以外の人にはあんまり分りにくいだろうが、屋台と言っても、炭の焼き場を中心に丸椅子が10数脚並んで、更に季節によってはテント風に軒を広げて、例えばこの花山などは、正月は100人近くが一度に座れる屋台になる。

 

花山は戦後すぐに花田さんというオヤジさんが始めた屋台で、今はその息子さんが継いでいるが、彼とも30年近い付き合いだ。僕は10年ほど箱崎に住んでいて、20代の頃は、酔っ払って店に行くと「にいちゃんさ〜、酔ったら味も分からんかろ、はよう家に帰り〜」と言われて、水を飲まされたものだ。

 

この店はタクシーの運転手にも人気で、夜中になると必ずタクシーが数台表に停まって、運転手がラーメンを食べている。何せ美味い。ラーメンだけではない、「シロ」と呼ばれる豚の腸は一本100円だが、これなど絶品。他にも分厚くきった牛タンなど、とにかく何を食っても外れがないのがこの店だ。

 

焼き台は勿論開店当初から炭を使い、塩は津屋崎という近くの海の塩を天日で干している。今の時代だとこういうのを「本格的!」とか「もう最高!」とか「美味しすぎる!」なんて、語彙不足の幼稚言語を並べるのだろうが、この店の8割は地元の常連であり、そんなしょうもない言葉で店を誉めるなどしない。

 

ただひたすら、食べに来る。親が子供を連れて食べる。子供が彼女を連れてくる。結婚して、奥さんと子供を連れてくる。そのうちおじいちゃんが孫の手を引いて食べに来る、そういう店だ。

 

誰も、この店の焼き鳥を美味しいなどと言わない。そんなださい事は、誰もしない。ひたすらもくもくと食う。

 

しめにラーメンを食べるが、これがまた美味い。美味いなんて言わないと書いてる僕が、この場で美味い美味いというのも変な話だが、実際に美味い。

 

元旦のお昼に花山に顔を出した。うちの家族からすれば、「屋台」の意味も不明で、博多弁なんてちんぷんかんぷんだが、まずはお父さんが20代の頃、何を食っていたのかを知ってもらう為に連れて行ったのだ。

 

最初に「シロ」を食わせて、サガリ、タン、ズリ、その他あれこれを食わせると、とにかくみゆき16歳が、お皿から顔を上げない。食べっぱなしなのだ。

 

竜馬9歳も、焼きあがったネタを柚子醤油につけて、がつがつとかぶりついている。この二人が美味しい時の食べ方は、実に凄まじい。親の皿にあるものも、遠慮なく平気で持っていく。

 

ちょっとでも不味ければ「お腹一杯」と言って、どれだけ空腹でも絶対に食べないガキどもが、とにかくよく食う。

 

「シロ」など、最初に注文して、半ばで再度注文して、最後に注文して、合計40本以上食った。豚さんの冥福を祈る。しめはラーメン。竜馬9歳は、丼の端っこまで舐めるほどだ。

 

店の大将と暫く話をしている間に、焼きネタはどんどん消えていく。今日は元旦だ。次々とお客が入ってきては、テーブルを賑わせている。話をしている間も大将は、参道を通る参拝客に「ほ〜い、ラーメンと焼き鳥はどうですか!うまいですよ〜!」と声を掛けている。

 

もう十分に商売になってるし、一言も喋らなくてもやっていけるのに、オヤジの代から受け継いだ商売の気質がそうさせるのだろう、50過ぎになる今も、現場の先頭に立ってラーメンを作ったり焼き鳥を焼いたりしてる。

 

屋台には日本人スタッフ8名程度に混じって二人の中国人留学生がいる。「お前ら、しっかり日本語覚えなやぞ〜、折角おやっさんがお前らを出してくれたんやから、だらだらするっちゃないとぜ〜!」と、焼き台の前で檄を飛ばしている。

 

この近くの馬出という場所で日本人家族が中国人留学生に皆殺しにされたという事実も、前向きな大将とっては関係無い。「あれは悪い奴やけど、うちで働いとんのは、俺がしっかり鍛えてやるったい」大将からすれば、オヤジから引き継いだ屋台を、自分の腕一つでここまで大きくしたという自信がある。

 

政治家でもなく役人でもなく、誰に頼る事も出来ない中で、とにかく前向きに積極的に生きてきた大将は、見かけは今でも30代後半で通るような色男だ。何よりも、顔が生き生きしている。

 

「にいちゃんとこの子供は、もう16歳か、俺の方が真面目にしとっちゃったけど、何でかいなうちの子供はまだ12歳やもんね〜、にいちゃんの方が手が早かね〜」等と、大将としょうもない馬鹿話をしながら、焼酎のロックを片手に箱崎宮を背中に午後を過ごす。

 

その後一度ホテルに戻るが、夕食をどうするかとなった時に子供たちが「焼き鳥!」となり、再度花山に向かう。すでに小雨はやんだ夕方、参拝客も少なくなった神社の入口にタクシーを停めてもらい、「大将、また来ました〜!」

 

「おりゃ、また来たと〜」

「子供たちが、焼き鳥もいっぺん食いたいんですよ〜」

 

竜馬9歳は、最初から「ラーメン頂戴!」と飛ばしている。おいおい、焼き鳥を食う前からラーメンかよ。みゆき16歳は、お昼に食った「シロ」の味が忘れられないようで、早速8本注文。

 

その後も次々とお昼のメニューを続けて頼み、約2時間、延々と焼き鳥を食べつづける子供たち。僕は焼酎を飲みながら、そんな家族と屋台を、交互に見回す。

 

いくらアスファルトの道路と言え、一年365日営業して、皿洗いの水等を使いまわしているから、道路がぼこぼこしている。坐り心地の悪い丸椅子と合わせて、床がぐらぐらするような感じだが、そんな店に何十年も通える事の幸せを感じた。

 

元旦から楽しい家族旅行でした。

 

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tom_eastwind at 16:18│Comments(0)TrackBack(0) 世界と日本 味めぐり 

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