2007年02月24日

旅なのだから

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僕は、NZの出入国カードの職業欄には「Travel Agent」と書いている。

 

当社は何屋さんなのか?時々お客様から不思議に思われて聞かれることがある。

 

以前は雑貨品販売の「コンボショップ」で古着、食料、ビデオレンタルなんてやってた。英語学校の「プレミアイングリッシュスクール」を運営してた事もある。JAAN(その後EastWindに改名)という無料日本語月刊誌を発行していた時期もある。

 

携帯電話レンタルは今もやっているし、英語学校紹介やテレフォンカードの販売もやっている。情報センターと呼ばれることもある。

 

医療通訳、海外旅行傷害保険、住宅管理など、上記とは全く関連のないビジネスも行っている。

 

勿論海外送金や両替、外貨預金なども扱い、そういう意味では、今現在僕が取り扱っている「移住」は、一番新しい商品とも言える。

 

ただしそれも、今までやってきた旅行ビジネスの知識が積み重なって出来上がった商品なので、過去が確実に現在につながっている。てゆ〜か、元々の僕の本業である旅行業の知識が、そのまま現在のすべての商品に反映されていると思う。

 

旅の途中に必要となるすべてのものを揃える。旅の途中で使える電話がなければ携帯電話、病気になれば現地の医療、事故を起こせば保険、現地通貨が必要なので両替、日本食、英語、ホテル手配、住宅手配、要するにキーワードを「長期旅行」とすれば、それぞればらばらの商品が、一つのグループにまとまる。

 

でも日本で、何も背景を知らない人に職業を聞かれて「旅行業」と答えると、「航空券やホテルの手配」をする会社と思われる。旅行会社が何で英語学校紹介とかビザ取得とかやってるのか、意味不明になるので、最近の日本では「移住コンサルタント」と自己紹介するようにしている。

 

僕にとって移住の仕事というのは、一種究極な「旅」の販売だと思っている。月に行くのは距離的に究極な旅だし、移住は期間的に最も究極な旅だろう。

 

この点、今の旅行会社で働く人々がどれほど理解しているか分からないが、旅行会社のすることは、お客様の要望を聞いて、その為に必要な部品(アゴ=食事などレストラン、アシ=移動手段、バスや飛行機、マクラ=宿泊手段、ホテルや旅館)を揃えて、このすべてがお客様の希望するように円滑につながることだ。この行程を管理するのが添乗員である。

 

ところが、それがすべてOKであっても、お客が怒ることがある。何故か?それはお客が旅行に求めるものは、実は旅の持つ具体的な要素だけでなく、それは非日常の世界を求めているのであり、目に見える商品そのものだけではないという点だからだ。

 

だから移住をすると言っても、お客様に言われた事を単純に、例えばビザを取得して住居を手配するだけでは、僕らの仕事が終了したとは言えない。

 

最終的にお客様が満足したかどうか、そこがすべてである。これがなければ、旅行屋とは言えない。つまり僕ら旅行屋が売っているのは、「満足」という付加価値だからだ。

 

例えばバーで酒を飲むのは自宅で飲むよりも高い。それでもバーが存在するのは、そこに付加価値=満足感があるからだ。

 

満足の種類は人によって違う。家庭では味わえない雰囲気、マスターとの他愛もないおしゃべり、今隣に座る女性、今日は誰が飲みに来るのかと待つ期待感、人によってみな違うだろう。

 

でも、その「満足」を得るために、店頭価格より高いお酒を買っても「納得」するのだ。てゆ〜か、目に見えない付加価値がそこに存在するって事だ。

 

旅行業で言えば、それは「高級ホテル」の手配かな。東京で泊まるのに東横インなら6000円で泊まれるところを、彼女との旅行なのでパークハイアットホテル1泊6万円を払う。それでも男は納得して満足してお金を払ってくれる。

 

だから僕らの仕事は、ホテルに泊まりたいと言うお客様の本当の目的を会話の中で推測する。誰でも無駄金は払いたくないから、費用を聞けば安い方がいいんですと言うが、そこで「このようなホテルもありますよ」と言うと、「おお、そうか、それなら価値があるね」と判断してもらえる。

 

最終的な判断はお客様に任せるものの、正確で細心な情報を、出来るだけそのお客様に合った形で提供することが仕事だと思っている。

 

閑話休題

 

お客様の移住工程表と費用計算をワードやエクセルを使って作成していると、昔、日本にいた頃に日程表と見積書を手書きで作ってた時代を思い出す。あの頃も今も、同じ事やってるじゃんか。

 

「あの頃」はファックスもなく、長距離電話は値段が高いので、北海道の旅館の予約をする時は往復はがきを使っていた。あの頃、1970年代には、日本人が海外に移住するとか、ましてやそれが商品になるとか、ましてx2自分がNZに移住するなんて思いもしなかった時代。

 

時が移り現代になると、インターネットで情報公開が始まり、移動手段が低廉化かつ高速化してきて、移住というものが商品になった。月に行くのも商品になっているから、不思議ではない。但し、その「旅の特性」は何も変わるものではない。

 

月旅行だって移住だって、最後は自分の故郷に戻るって事だ。何故なら移住とは言え、NZの墓場に入りたくてこの国に来る人は、殆どいないからだ。

 

つまり、いつかは故郷である日本に戻るのだから、日本を出発してNZに来て、また日本に戻る、それが普通の旅行より期間が長いだけの、やはり「旅」なのだ。

 

最近は30代の方からの問い合わせ激増だが、やはり皆さんの不安は将来である。移住に失敗したら、戻るところをどうしようと言う。だから、最初から日本にいずれ戻ることを前提に計画を作れば良いだの。

 

ニュージーランドで自分の若い日々を過ごし、子供をバイリンガルに育て上げ、60歳過ぎてそろそろかな〜と思ったら、それからは日本に住居を移しても良い。その頃には日本も良い政治家が出てきて、まともな国になっているかもしれない。

 

または、海外旅行を5年くらい楽しんで、ああ、もう十分海外生活を満喫したので、じゃあそろそろ日本に帰ろうか、それでも良い。旅を堅苦しく考える必要はない。

 

だから、移住を考える人たちに言いたい。移住は旅なのだ、失敗があるはずがない。自分で金を払って旅行に参加するのだ。いつ帰るかは、本人の自由。だってあなたには、迎えてくれる家族が日本にいるのだから。

 

旅なのだから、気軽に行こう。

 

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tom_eastwind at 00:07│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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