2007年03月26日

最低賃金上がる

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ニュージーランドの最低賃金である1時間あたりの時給は、4月から11.25ドルに上がる。年休も、今までは3週間だったのが4週間になる。3月までの最低時給が10.25ドルだったので、約10%の賃上げになる。それに年休が増えたのを加えれば、実質的に10%以上の賃上げと言える。

 

この背景にはニュージーランドの底堅い景気の推移がある。政府が予想以上の黒字を出し、企業が引き続き利益を出しており、お金持ちが増えている状況では、最低賃金を上げる事で貧富の格差を少しでも縮めると共に、企業による労働力の買い叩きを防ぐ事にある。

 

失業者に働く意欲を持たせる為に、働いた方が失業手当貰うよりも得だと知ってもらい、就職の機会を増やし、それでも働けない人にはセーフティネットを充実させて、社会の秩序を維持すると言う政策は、現時点では効果が出ている。

 

失業率は3%半ばだし、住宅と車を購入し終わったキーウィは、次の消費手段として高級レストランでの食事が流行り、客単価はここ数年で2倍近くに上昇している。高級レストランでは食事だけで100ドル、料理ごとのワイン付コースだと165ドル、それでも週末はお洒落なキーウィで満席になっている。

 

こういうのを見ると一部の日本人は「バブルでしょ?」と言う。

 

日本人は物忘れの激しい人種なのかもしれないが、では日本の昭和後半の景気はどうだったか?昭和30年代から60年代の日本の未曾有の好景気時代には、世界一の賃金を受け取り、世界一のサービスを享受したのは、僕ら日本人ではなかったか?それをバブルと呼んだか?

 

それは日本人自身の努力と共に、最初は朝鮮戦争による特需、そして1ドル360円と言う円安による低賃金を生かして、電気製品を小型化して米国と言う大市場に乗り込んで売りまくり、本家である米国RCAをテレビ事業から撤退さしめたほどの幸運に恵まれていたからだと言える。

 

その後も冷戦の最中には西側に付くことで核の傘に守られて独自軍隊を持つ必要もなく、米国に守られながら、その懐に深く食い込んで経済的利益を謳歌した。

 

1980年代後半になって国策の失敗によりバブルを招いて大失敗したが、少なくとも1985年くらいまでは、日本はバブルではなく、政治の巧妙さと、人々の勤勉さと、人口増加と、ちょっとの幸運の中で正常に発展してきたのだ。

 

今のニュージーランドが人口増加と北半球の治安の乱れによる景気であるのは間違いないが、だからと言って景気が悪いのかと言えばそうではない。理由は他動的要素であれ、景気が良いのは事実なのだ。

 

だから、バブルバブルと泡立つのではなく、素直にこの景気に乗っかって、不動産投資でも銀行預金でも、しっかり利益を得れば良い。引き際さえ間違わなければ、十分な利益が見込める。バブルで最後にジョーカーを掴んで大損したと言っても、バブルの初期でさえ利益を出した人はたくさんいるのだ。

 

要するにニュージーランドであまり欲をかかず、ほどほどに投資をして、北半球の戦争が終了する気配が見えて、移民法が厳しくなるのが見えたら、その時に投資を引き上げればよいのだ。

 

この辺のタイミングは、海外だろうが国内だろうが同じだ。海外だからやらないとか国内だからやるではなく、数字を積み上げてみれば自然と出てくる答えだと思うのだが。

 

いずれにしても、それが賃金にも反映されてニュージーランド全体で景気の良さを享受しているかと言えば、ここに「波に乗り切れない」アジア移民の問題がある。

 

アジアから移民としてやってきた人々は、今も最低賃金で働いている人が多い。移民と言ってもこの国が受け入れを始めたのは80年代後半であり、移民は今だ一世が殆どだ。だから言葉に不自由するし現地でのコネも縁もないから、良い仕事にありつけない。

 

また、白人であればCinCInなどの高級レストランで高いチップを貰って働けるのだが、中国人移民だと、どうしても言葉の通じる中国レストランで、厳しい中国人オーナーの下で働くしかない。そこでは白人が作った法律のウラをかいて、様々な形で低賃金労働が押し付けられる。

 

まあ米国に比べればその賃金差は比較的小さいのだろうが、それでもきつい仕事や安い仕事がアジア人移民に集中するのは、避けられない。特にここ数年のオークランドで目立つのは、建設現場で働くアジア系や中東系の移民である。

 

ホテルに行っても、ひげを蓄えた中東系や、専門学校を卒業したばかりの中国系が目立つ。

 

もっと苦しいのが、ニュージーランドで永住権を取得したものの、なかなか思った仕事に就けない日本人である。

 

30代半ばでやってきた彼らは、夢と希望を持ってやってきたのだが、ニュージーランドは技術、サービス共に随分遅れているから、自分が持つ技術はすぐに認められて、移住当初から高い給料と地位が保証されていると思ってくる。

 

ところが実際には地縁も血縁もない街では、経営者としても「見も知らないアジア人」を採用するには抵抗がある。どうせ採用するなら、友達の子供を高い給料を払ったほうがましだと考える。そのために、なかなか日本人移民には良い仕事が回ってこない。

 

なのでどうしても言葉の通じる日系企業で働くということになるのだが、それでは当初思ってたような高い給料も知的業務もない。

 

周囲のキーウィは、どうもたいして賢くもなさそうなのに何故か高賃金を貰っている。それに比べて日本の一流大学を苦労の上に卒業して、大企業に就職した俺が、何であいつより安い賃金なんだ?ってことになる。

 

ただ、ここで思い出して欲しい。日本で働く移民は、どれほど毎日一生懸命低賃金で働いているかを。ブラジル移民は日本に渡り何とか生活を維持しているが、それでも同世代の日本人から比べれば恐ろしいほどの低賃金だ。

 

ブラジル移民は思っているだろう、どうして同じ年なのに日本人と俺と給料がこんなに違うんだ?

日本人は言うだろう、言葉も出来ないし違う土地から来た赤の他人を雇うよりは、給料が高くても友達の子供を雇った方が、よほど気心が知れて安心だ、だって日本人同士だもん。キーウィも同じなのだ。

 

それでもニュージーランドは、最低賃金も含めたセーフティネットがあるので、決して食うに困らない。ただ、日本人として生活をするには少し不足してしまう。共働きが出来ればよいのだが、子供が小さいのでそういうわけにもいかない。

 

そうなると残された道は、ちっちゃな子供が大学を卒業して労働力になって家計に協力出来るようになるまでは、お父さんが朝から晩まで休みもなく一生懸命働いて(幸い多くのNZ企業では兼業可能)、年休は全部アルバイトに費やして、お母さんは安い食材を探して無駄が出ないような家計を運営していくしかない。

 

または、最初からある程度の金融資産を持ってきて、給料の他に金利で食えるようにするとか、最初から自宅を購入して生活費を削減するか、である。

 

どちらにしても、お金がないままに夢だけを持ってやってきても、ニュージーランドで天国のような生活を過す事は出来ない。

 

勿論例外もいる。僕が直接知っている人でも、資金が殆どない状態から数年で資産を作った人もいる。ただ、彼らは誰もが異常なほどの努力をして、幸運に恵まれ、仕事の目の付け所が良かったからだ。

 

また、家族に資産があり、それを自分に投資してもらい、そのお金で住宅を数軒購入して管理、投資額の3%程度の利回りで家族に対する返済を行うと言う方法で資産を作る人もいる。

 

ただ言えるのは、普通に日本からやってきて普通に働いて、それで普通にお金が溜まるほどニュージーランドは甘くないということだ。

 

移住をお考えの方、しっかりと経済計画を立ててからやってきて欲しい。

 

もし資金がなければ親から金を借りる。それを恥ずかしいと思うのではなく、親の金を銀行よりうまく回して儲けさせてやるくらいの気持ちで来れば良いのだ。

 

じゃあお金もないけど移住したい、そういう人はどうするか?簡単だ、ぶっ倒れるまで働け。一日の睡眠時間を4時間に切り詰めて、土日も仕事をして、出来るだけ早く投資資金を作る事だ。そうすれば23年で自己資金が出来る。住宅購入の頭金程度は溜まる。

 

後はわらしべ長者のように、すこしずつ確実に資本を増やしていくことだ。え?そんな大変なことって出来るんかって?

 

あなたのお父さんに聞いてみたらよい。昭和の日本人がどれだけ朝から晩まで働いていたかって事を。当時の日本人は、働くことに目的があったから徹夜しても翌朝は普通に会社に行った。過労死なんて言葉は存在しなかった。そして1980年代の「NOと言える日本」を作ったのだ。

 

世の中に絶対安全などない。ならば、腹を括って自分を信じて自分に投資してみることだ。

 

写真はビクトリアストリートから眺めるナショナルバンクタワー。

 

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tom_eastwind at 19:30│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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