2007年06月25日

日本の、今から

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土曜の夜にニュースを見るつもりでチャンネルを回してたら、、、って、これはテレビのチャンネルがテレビ本体に時計のタイマーみたいに付いてた時代の言い回しだ。今はリモコンをがちゃがちゃやってたら、と言うのが正しい表現になるのだろう。

 

40年以上も前のテレビでは白黒テレビというものがあり、カラーテレビを買えない家庭では、番組の左上に「カラー」と表示が出ると、何だか「こら、貧乏人、まだ白黒かよ」と言われた気持ちになったものだ。

 

それでもいつかはカラーを買える、隣のお宅がクーラーを買えばうちも買う、会社の仲間が車を買えばうちも買う、みたいな、みんな横並びに成長していた時代があった。

 

1964年、東京でオリンピックが開催されることになり、その頃東京で生活していた町中の乞食が追い出されて普通のアパートに住まわされ、オリンピックと合わせて新幹線が開通し、1970年には大阪で万博が開催され、日本が皆で手を繋いで成長してた時代があった。

 

勿論そんな時代でも、成田の三里塚闘争、安保闘争、色んなことがあったが、総じて日本全体が成長した時代だった。

 

「就職が決まって 髪を切って来た時 もう若くないさと 君に言い訳したね」

 

松任谷ゆみの作った「いちご白書をもう一度」の歌詞にあるように、学生時代が終了して、すべての日本人は企業戦士になった。

 

で、本題に戻ると、リモコンをがちゃがちゃやってたら、丁度「日本の、これから」と言う番組を見つけた。どれどれ、何やってるんだと思ったら、何と格差問題。テーマは4つ。

 

正社員と非正規社員問題

成果主義の功罪

長時間労働

すぐ辞める若者

 

スタジオに集まった様々な人々がコメンテーターと一緒に語り合う番組だ。

 

テーマ自体は面白いのだが、何となく、ガス抜き?って感じもした。と言うのも、どの問題も奥が深いし、学者の一般的労働理論と現場の主体験に基づいた感想が、対等な場で議論として成立するわけがない。

 

そんな事、NHKだって分かっていながらやっているのだろう。

 

「私がADやってた時の時給は240円ですよ!」

「平成18年に過労死した人は、認定されているだけで147人、月100時間残業です」

「残業って、大体サービス残業を計算しないで、何を言ってるんですか」

「やりたい事が見つからないから、早めに見切りをつけるなんて、世の中をなめてる」

 

実に様々な意見が出て、番組構成としては良く出来てる。

 

「お、こいつ、俺の言いたい事言ってくれてるね〜」と、お茶の間でせんべいでも食いながら観れる番組だ。視聴率は取れるだろう。

 

ただ、こういう議論は、お互いに「相手の立場が理解できない」人々の議論なので、最後は感情論になる。

 

「じゃあ、あんた現場に来てみろよ、一体どこに正社員の仕事があるんだよ!」

「自分が努力もしないで社会が悪いなんて、甘えだよ!」

「非正規社員が増えれば、正規社員は益々管理業務が増えて残業ばかりだよ!」

「正規社員の賃金は非正規社員がいるから払われてるって事実に、何で気づかない!」

 

最後は

「嫌なら辞めろ!」

「学者やエリートに何が分かるんだ!」

で、終了。

 

どう見ても、NHKは、最初から「まとめよう」とする気持ちはないようだ。

 

竹中さんも言ってるけど、小泉政権次代は、企業が体力を取り戻すために労働者に負担を強いた、大手企業が体力付いたら、次は最低賃金の値上げと正社員化による労働者の体力の取り戻しだと言うのが、現在本来あるべき姿だ。

 

が、途中まではこの計画がうまくいったのに、安倍政権に代わり、さあ賃上げとなった瞬間に経済団体が腰が引けてしまい、現在のような、過労死、自殺、鬱病、格差社会という状況になっている。

 

今の日本の状況を、以前のニュージーランドと比較してみれば分かりやすい。

 

この国も1980年に倒産した。その後1984年に民営化と規制緩和を導入し、何とか1990年代後半には、企業が体力を取り戻した。

 

その際に政府は、企業が出来るだけ自由に行動出来るように、それまで経営者の足かせとなっていた組合活動を法律的(組合加入の自由、交渉権を認めない等)に押さえ込み、法人税を下げて外国に逃げた企業を呼び戻し、企業の活性化を図った。

 

その結果1993年には国家財政が黒字化して、その後も関税障壁の廃止などを行った。しかし、それからも労働者には労働分配率は高まらなかった。何故それでもニュージーランド国民は行動を共に出来たのか?

 

それは、ニュージーランドが持つセーフティネットがしっかりしていたからだ。15歳から60歳(当時)まで無条件に貰える失業保険、60歳(当時)から貰える老齢年金、無料医療、無料教育と言う仕組みがあったから、国民が自殺者も出さずにやっていけたのだ。

 

では、セーフティネットの原資はどこから捻出したのか?それが政府企業の民営化による売却利益、公務員の大幅削減、外資の導入である。この時期、消費税を導入してもいるが、一般国民に大きな負担を与えずに、見事にソフトランディングしたのである。

 

労働党が政権を取ると、2001年以降は、企業利益の配分を労働者に手厚くし始めた。最低賃金の上昇と組合活動の再開だ。

 

「組合が帰ってきた!」と経営者には恐れられたが、それほど大きなストライキもなく労働者の賃金は確実に上昇している。経営者は最初どうなるかと見ていたが、低賃金で働く労働集約型産業でも、消費者に価格転嫁出来る企業は、商品値上げで対応して、大きな問題になってない。

 

電気代、バス運賃などが今年になって10%近く値上がりしたが、労働者の賃金も値上がりしており、「生活がぴ〜んち!」って声は、社会全体では、あまり聞かない。勿論親の代から失業している連中や、何となく技術もないままにこの国に住んでる外国人労働者からすればきついものはあるが。

 

今の日本の問題は、昭和20年代に混沌カオスになった日本が、焼け野原の中から次々と新しい技術を持った企業が出てきて、その中でトヨタやホンダのように、本当に社会貢献出来る企業が選択されて、日本経済を担うようになった状況だ。

 

まだまだ5年は格差問題が続くと思う。今やっと大手企業が息を吹き返したところだから、これが中小企業に行きわたり、全ての労働者が満足を得るまでは、どうしても時間がかかるだろう。

 

そして、その間には必ず社会に擂り潰される人々が出てくる。しかしこれは仕方ない。戦後の日本でも、多くの人が社会の中で擂り潰されていった。

 

「蛍の墓」など、最も分かりやすい例だ。一番弱い奴は、捨てられるのだ。

 

「ふざけんな、擂り潰される奴の気持ちになってみろ!」と言われるかもしれない。ただ、これだけは言える。

 

「はい、僕は擂り潰された家庭で育ちました。だから擂り潰された人の気持ちは、誰よりも分かります。だからこそ皆が幸せになる社会を作りたい、その為には結局、擂り潰されないように努力するしかないんだって事が分かりました。そうやって強くならないと、弱い、擂り潰されそうな人を守ってあげられないんです」って。

 

ただ、戦後は、全ての国民が「米国との戦争に負けた」と言う事実を、身をもって味わった。だから国家をゼロから創り上げようと言う気持ちもあった。一歩間違えれば、俺も戦争で死んでた、そういう危機意識を持った一般国民が、国家を創り上げた。

 

今の問題は、多くの若者が、自分の国が経済戦争に負けた敗戦国であると言う認識がない点だろう。自分の生活が苦しくなったとか非正規とか言ってるが、それ以前に自分の拠って立つ国家が崩壊したのだという事実に気づいてない。

 

崩壊した国家で、自分が生き残っていきたいのか?ならば、他人をどうこう言う前に、政府に守ってもらおうとする前に、自分が戦え。それしか生き残る道はないんだ。

 

その当事者意識がないままに、お互いに相手を責めても、結局NHKのガス抜きに利用されるだけで、それ以外の意味はないと思う。

 

国民啓蒙番組局としては、今の時代を若者に理解させ、それで頑張る者には正社員の座を、頑張らない者には、首を切った後で言い訳できるように(だってさ〜、あん時皆が言ってただろ、自己責任だってさ〜)状況説明しているんだろな。

 

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tom_eastwind at 00:00│Comments(1)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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この記事へのコメント

1. Posted by May   2007年06月26日 03:45
私はもっぱらサービス残業をしている。月間30時間以内くらいだろうからかわいいもんだ(それでもそれを当たり前っていう日本の企業はいただけないが)。私の知り合いは大学卒で大手企業に就職したが、彼は夜中の1時2時でもまだ事務所で仕事をしている。先日電話で鬱が社会問題になっている話をした。鬱になって当たり前だよ〜、普通の人間なら。睡眠時間さえまともに与えられないんだから、おかしくもなるよ。NZではまだdepressionは社会問題ではないですか?日本では風邪引きのごとくうようよいますよ。

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