2007年06月26日
黒船
昨日書きながら、ふと思った。
多くの経済ブログで、小泉は国家を米国に売却したとか、外国人の食い物にしたと言う発言がある。
実は1984年にニュージーランドの総選挙で勝利して首相の座に着いた労働党党首デビッドロンギ首相も、彼は現役の最中から国民に「売国奴」とか「首切り人」と呼ばれた。
国家の資産を次々と外国人に売り渡したり、国家公務員を民間企業に移管させたからだ。
彼は改革の途中、1989年の総選挙でジムボルジャー率いる国民党に大敗した。売国奴であり首切り人を許さないという国民の意思表示である。
2007年現在、デビッドロンギの行った経済改革を非難する声は、それほど聞かない。
確かに当時に比べてニュージーランドには多くの外国人が入ってきた。国勢調査でもアジア人の人口増加が目覚しい。それだけでなく、英国からの移民、米国からの移民も増えて
来ている。
規制緩和により外国企業が次々とニュージーランドに乗り込み、新しいビジネスを提供している。(成功しているかどうかは別として。この点はいずれ別の機会に書きたい、これは英国式戦略だと思う)
その結果、電話代は10年前に比べて半額近くになり、国際線は次々と外国人によって増便され、空港は拡張して、レストランは増えて、雇用も増大して給料も増えた。
では、その代わりにキーウィが受け取ったマイナスの資産とは何だ?それは、外国人と肩を並べて生活をするという窮屈さだ。それを窮屈と感じるなら、ね。
もう一つ言えば、競争の原理であろう。今までのニュージーランドは社会に参加する機会も平等、結果もすべて同等、要するに働かなくても手取りは同等だった。
この部分に、機会は平等だけど結果としての受取額は同等ではないよという仕組みが導入されたのだ。
平等という意味は誤解があるので、おそらくこれからは表現方法が変化するだろう。手取り金額が同等であるというのは、その労働の質や結果に差があれば、それは同等だが不平等である。その意味で平等を唱えるなら、結果の差に対して賃金で格差をつけるのは当然ではないか?
ただ、それが下がりすぎて国民生活に不安を与えないように、税金の再配分によってセーフティネットを構築するのが政府の仕事だ。
資源のない小国の行う規制緩和とは、元々資源のない国が外国からの資金やノウハウを移入させる事だ。もはや自国ではどうしようもない状態になっている国家を立ち直らせる為には、少しでもお化粧をして外国人を受け入れるしかない。
デビッド・ロンギ首相が就任した当時、ニュージーランドでは物価凍結令が発令されてた。すべての商品の値上げを一切認めないという法律で、これは日本では1946年に発令された。つまり、国家が崩壊した時にしか出てこない法律だ。
そんな状況で、デビッドロンギ首相が取った方策は、痛みを伴う改革だった。もうすでに自分の力ではどうしようもないところまで来ていたのだ。
ニュージーランド国民も、今はそれを理解して、歴史の本では彼を肯定的に評価している。そして何よりも、今のニュージーランドの経済成長がデビッドロンギの政策を見事に体言していると言える。
昨日も書いたが、日本は経済戦争で敗戦したのだ。負けたのだ。国家が崩壊したのだ。その事実の認識なしに昔を懐かしがっていても、何も進まない。
「蛍の墓」は、本当に悲しい話だけど、泣いてばかりいても前に進めない。
小泉首相が就任直後に国民に説明した。「痛みを伴う改革だ」と。その言葉が、今の日本の状況をとても良く説明していると思う。
あの時、小泉首相が話した言葉を「ふんふん」とか、他人事みたいに聴いてた人、今からでも遅くない、これからも痛みは続くんだって事を、早いうちに知って欲しい。
どんな政治家も、評価が下されるのは数年先だ。おそらく小泉元首相は、日本人を信じて「痛みを伴う改革」を行ったんだと思う。苦しいけど、日本人なら耐えられる。
これから50年先を見据えて、今は苦しいけど、外国人がどんどん入ってくるけど、日本人は黒船の時も耐え抜いたし、入ってきた外国文化をうまく日本人向けに作り直して、更に良いものを作った、だから我慢してやっていこう、日本人を信じて。
そういう事ではないかと思う。
トラックバックURL
この記事へのコメント
彼もまた大卒で大手企業に就職したのに、それを捨ててしがない塾の講師をしながら布教している。未だ、夢を見ている者がバカなのか、現実と向き合って辛い思いをしている者がバカなのか、な〜んも考えないで日々暮らしている者がバカなのか、それともみんな賢いのかわかんない。分かっているのは、毎日がさして楽しくない、という事だけだ。明るいニュースはない。