2007年10月02日

さらば長き眠り

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さらば長き眠り

 

原リョウの約600ページの探偵小説読了。

 

レイモンドチャンドラーに心酔した素人が、プロと呼ばれている玄人をぶっちぎる作品を創り上げた。

 

プロは面子の問題もあり、他の作者の真似が出来ないが、原リョウの場合は元々レイモンドチャンドラーが好きであり、自分でもフィリップマーロウみたいな私立探偵を書いてみたいという根源的な気持ちがある為、チャンドラーの作風を真似ることに全く抵抗がない。てか、真似たいのだ。

 

でもってこの「さらば長き眠り」は私立探偵沢崎シリーズの三作目にあたり、出色の出来である。結局昨晩は夜中の2時までかかって読了した。てか、読み終わらずに寝れない。

 

最近は「はまれる本」になかなか出会えずにストレス溜まってたので、これで一気に気持ちがすっきりした今朝である。

 

舞台は1993年頃の東京。

 

私立探偵が連絡を取るときは事務所の電話で、留守番サービス会社と契約をしている。誰かを尾行する際も、携帯電話がやっと出始めの頃で、貧乏な私立探偵はそんなもの買う余裕はないから、途中で公衆電話を使って連絡を取る。

 

レコード屋に行けばCDと言われる、コースターの大きなものが売られている。

 

日産自動車が290億円の赤字で座間工場を閉鎖する記事や、円高ドル安で過去最高の115円台をつけた記事が、本文の中に散らばっている。

 

文体はまさにチャンドラーだが、状況を日本に置き換えても何の違和感もないのが作者の力量だろう。普通外国作家の真似をすると、文章に独特の「臭み」が出るが、この作品では、言葉に「浮き」が全くない。

 

ロサンゼルスを東京に置き換え、郊外の一軒家を自由が丘のマンションに置き換え、訪ねるショップを駄菓子屋にして、フィリップマーローの大好きなバーがカラオケスナックになり、沢崎に「折角の英国調のインテリアの雰囲気を、店の一番奥のステージに取って付けたように鎮座しているカラオケセットが台無しにしていた。経営者の趣味も客の嗜好には譲歩しなければならないのだろう」と言わせている。

 

そうそう、あの頃はカラオケが、それまでの本を見ながら歌う型式から、画面が出てきて字幕を見ながら歌う型式に変わり始めた頃だ。

 

僕も1987年頃に、馴染みのお店のオーナーに「ねえ、カラオケとかあったら歌うかな?店の雰囲気が壊れるかな〜」と相談を受けたことがある。出来れば入れたいのだが、馴染みの頑固な客が離れてしまってもな〜というオーナーの苦しみがよく分かる。

 

1993年と言えば、まだバブルが弾けた事に国民が本気で気づいてない時代だ。それからやってくる長い不況のトンネルなど、誰も想像出来なかった、日本の最後の「よき時代」である。

 

「あの頃」を思い出し、文体を楽しみ、ジョニーウォーカーブラックを楽しみ、久々に朝の2時まで「お一人様」の時間を楽しんだ。

 

写真は麻布マハラジャ。お立ち台が一世風靡した時代でもある。「INTO THE NIGHT」、「GIVE ME UP」等がガンガンかかっている時代を覚えている人には、少し懐かしい、昭和から平成に変わる頃の日本が感じられて、ちょいと面白いかも。

 

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さらば長き眠り (ハヤカワ文庫JA)

 

 



tom_eastwind at 11:46│Comments(0)TrackBack(0) 最近読んだ本  

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