2007年10月21日

TriBeCa

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TriBeCa  (トライベッカ) 

 

そろそろ薄暗くなりかけた金曜の夕方、パーネルのレストラン街が次々と明かりを点けて開店する中を、キースが運転するタクシーはゆっくりと長い坂を登る。

 

数年前に訪問したきりすっかりご無沙汰していたレストラン「トライベッカ」はパーネルからニューマーケットに走る道の途中にある。

 

シックな調度のメインダイニングは緑の芝生に覆われた庭に面しており、夏になれば庭にセットしたテーブルで食事も出来る。

 

いつも地元のお客で賑わっているが、シティで仕事をしてノースショアに住む僕からすると、パーネルはちょっと微妙な位置である。

 

飲むなら車では行けないし、かと言って酒を飲まない奥さんに運転してもらい子供連れの家族で行くような雰囲気の店ではない。

 

なので、パーネル地区自体が随分ご無沙汰だったのだが、今回は偶然地元日本語情報誌に「トライベッカで働く日本人」と言う記事が出て、それで思い出して金曜の夜に予約を入れて、いつもの飲み友達と一緒に訪問することにしたのだ。

 

この友達と飲みに行くと最後は大体漫才飲み会になって周囲を笑わせてしまうおちゃらけ状態になってしまうのだが、見かけは普通のカップルに見えるので、初めての街で飛び込みで飲むバーでもレストランでも、結構どんな店でも安心して入れるのがお得だ。

 

TriBeCaとは、ニューヨークにある古い倉庫群の街の名前だ。Triangle bellow Canal Street(キャナル・ストリート下の三角地帯)の略。

 

ダウンタウンの最南端に近い、北をキャナル・ストリート、西をハドソン川、東をブロードウェイに囲まれている、だいたい三角形をしたエリアである。有名な日本食レストラン「Nobu」がある場所としても知られている。

 

オーナーはアメリカ人、マネージャーはフランス人(食事後に立ち話をした時、最初は普通に英語で話してたけど、なんとなく少し訛りを感じたので聞いてみたら、元々はフランス出身なんだと言われた)との事。

 

古くてシックな煉瓦作りの建物の一画にあり、入り口が道路の裏側にあるため、初めて訪問する人は、どこから入ってよいか迷う。

 

トライベッカというネーミングから、古き良きニューヨーク、1920年代の、男が男だった、そして女が女だった時代を彷彿させるが、実際に煉瓦作りの店に一歩足を踏み入れると、そこは古き良き時代の書斎のような作りになっている。入ってすぐ左側にちょっとしたスタンドバーがあり、そこで軽く一杯飲んだ後に、奥のダイニングルームに行けるような作りになっている。

 

店に入った僕らは、バーには寄らずに(次の予定が8時に入ってたので)記事に載ってた日本人ウエイターの案内で、そのままダイニングルームに向かう。

 

内部がまたシックで良い。写真にあるような、古き良き時代のメインダイニングって感じだ。良い。これは良いぞという予感が心をよぎる。そして日本人ウエイターに椅子を引いてもらい、黒皮で縦長の、これもシックな感じのメニューをもらう。

 

「今日のお飲み物は、まず何になさいますか?」と、軽い笑顔を頬に載せた彼が尋ねてくる。

 

物腰の柔らかい、てか、一発で「お、これって日本の高級レストランで今一番流行ってる接客スタイルじゃね〜か!」って分かる丁寧なサービス、この時の嬉しさ!ここニュージーランドだよね、東京じゃないよねって、思わず頬をつねりたくなるような、嬉しいびっくり!この人、まるで日本のレストランで食事をしているような雰囲気を醸し出してくれるのだ。

 

実は日本でも、かなりのレストランではがっかりさせられるサービスが多い中で、更にこのニュージーランドと言うプロフェッショナルサービスの後進国では殆ど期待出来ないサービスがあるのだから、それはもう料理以前の段階でかなり盛り上がり、思わず高いワインを一本出してもらった。

 

レストランの要素は、味、サービス、雰囲気である。この3つがうまくバランスが取れているのが良い店と言える。

 

バランス、これは大事。

 

例えば銀座の久兵衛に行って、寿司職人さんが「何になさいますか?」などと語尾を下げて押えた話し方で言われると、ちょっと照れくさい。銀座のすし屋なのだ、短く切り揃えた髪にまっさらで真っ白な寿司着で「へい、らっしゃい!握りましょうか!それとも少しつまみますか!」と、きりっとして語尾が上がるような発音で会話を開始したいものだ。

 

それに比べてシックなレストランで求めるサービスは、語尾をきっちり押さえ込んでお客との心地よい距離感を取ることで知性を感じさせる一方、お客が会話をしたければすぐに乗るけど、でも話しかけられたくないなら、どうぞお二人で会話をお楽しみ下さいという無言のメッセージが伝わるような会話だ。

 

ぶっつけから「あ、すいません、ライトビールくださ〜い」って言う友達を無視して、僕は一人でワインを注文する。おいおい、この雰囲気でライトビールかよ?よほど喉渇いてるんじゃね〜か?だったらその辺の水道水でも飲んでろよとか心の中で思いながら、僕はフードメニューを眺めていく。

 

イベリコハムがニュージーランドでも手に入るんだとか思ったり、たたきとか日本食じゃん、ここのシェフ、何人だとか思ったりして、メニュー見学を楽しむ。

 

いろいろ見学してみて、どれも美味しそうだが、量が不安。どかっとこられても食えないぞ。

 

そのうちDegustation Menuと言うシェフのお勧めコースを見つける。一皿は少量で色んな料理を楽しめるやつだ。メニューの一番最後に、こっそりと載ってる。

 

やっとニュージーランドも、量じゃなくて味を楽しむ習慣が定着してきたなと思いながら、ェフのお勧めコースにする。

 

Chestnut, Shallot and Truffle Soup

 

最初のスープは、なんと取っ手付きのちっちゃなコーヒーカップのようなニップサイズで出てくる。これが可愛いだけでなく、美味しい。サイズが小さくても、しっかり味がついているのだ。これには、ちょいとびっくり。

 

クラウディベイのソービニヨンブランクと合わせても、両方とも飲み物なのに十分楽しめる。こりゃいいな、しょっぱなから「ここどこ?」空気を流して、オークランドにいる事を忘れさせてくれる。

 

Kelp Crusted Yellow Fin Tuna

 

次はツナだ。しっかりとした赤身を一筋取り出して外側を炙り、半生で辛味ソースを横に置いて出してくれる。おうおう、西洋人の魚の扱いも、少しは日本人に近づいてきたな、何とか食えるぞこれはって感じで、いけてる。付け合せのソースのバランスが良い。

 

Seared NZ Scallops
Iberico Jamon and Manchego, Char-grilled Asparagus Vinaigrette

 

これが一番良かったかも。貝柱をバターソースで合わせて軽く炒めてるのだが、貝柱の柔らかさを失わせずに、熱を通すことで味を更に馥郁(ふくいく)とさせている。隣にそろりと置いたイベリコハムが、一緒に食べると、また違う世界の別の喜びに連れてってくれる。これって何だ〜?

 

旬のアスパラガスも、貝柱に喜ばされた舌を、野菜独特の苦さ甘さで元に引き戻してくれるので、実に楽しい。

 

Seared Venison Tataki
Pear and Ginger Remoulade
Xocopili Paint

 

鹿肉のたたき。これは昔風の味だ。脂身が少ないから口の中でギトギトしない。大体日本人の霜降り信仰くらい馬鹿げたものはない。肉は赤身をがっつりと食うのがイノシン酸のうまさなのだ。

 

鹿肉は「ゲーム」なので、ゲーム肉独特の臭みを消す為にフルーツを使う。このバランスも良い。

 

新しいお皿になるたびにウエイターからの説明が入るが、これがまた気が利いている。この人、絶対NZMAとかの料理クラスの先生として接客を担当すべきだ。日本の接客を世界に!ワインをきれいに注いでもらい(これがきちんとできる店は少ない)、次の料理にトライする。

 

Roast Fillet of Beef
Buttered Cavalo Nero,
Merguez Mini Dogs and Hazelnut, Gorgonzola Jus

 

最後のメインは牛肉だったのを、お願いして二人ともラムに変更してもらった。これはちょい失敗かな。てのが、前の鹿肉ともろにかぶったからだ。ラムラックかと思ってたら、鹿肉のたたきと同じような「叩き」型式の、外側に火を通して中を半生で輪切りにして食わせる型式だったのだ。

 

勿論これはこれで美味い。美味なだけに、ここでかぶったのは、俺の責任だと自己反省。

 

Sorbet Refresher

Meyer Lemon Brulee
シャーベットとブリュレのデザートでしめてもらうが、615分に開始した食事が、その時点でもう815分。やばし、次の予定がきてる。

 

申し訳ないがと最後の素敵な飾り付けのデザートを食いながらお勘定をしてもらう。ちょいと失礼かなとか思うが、まあ仕方ない。

 

しかしまあ、かなり鮮烈な感激だった。いや〜、久しぶりに満足のいく食事だった。こんな事って、オークランドでは少ないよね。シティに戻るタクシーの中で、相棒と「こりゃいいね〜」の連発だった。

 

8時に約束してた友達も、結局そいつも別の宴会で遅くなり、丁度良い時間で会えた。馴染みの店を数軒回って、楽しい金曜日を過ごした。わいわい騒ぎ、これってまともな社会人かよとか思いながら飲む、歌う。途中でいろんな人と会って話すが、あまり記憶なし。結局土曜日の朝に目が覚めたら自宅のベッドで転がってたって状態。

 

良く働き良く遊ぶ。

 

それにしてもこのレストラン、次も是非とも行かなければと思わせる雰囲気でした。

 

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tom_eastwind at 00:50│Comments(3)TrackBack(1) 諸行無常のビジネス日誌 | 世界と日本 味めぐり

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1. いろいろな悩みも  [ 夫婦・カップルの悩みに効く魔法 ]   2007年10月21日 19:03
「夫婦・カップルの悩み」のサイトを作成しましたのでトラックバックさせて頂きました。もし不要な場合はお手数ですが削除して下さい。

この記事へのコメント

1. Posted by May   2007年10月21日 00:58
そうですね。料理がおいしくても接客がマズイと行く気がなくなってしまう。飲み屋でもスタッフがきちんとプロの仕事してる所は気持ちがいい。さ〜て、Toyboyに騙されてあげた(いや、マジでやられた)けど、そろそろ働きますかね。一応リフレッシュしたような。私はひとところに長くいられる人ではないので(いかんなぁ、次に何をやらかすか分かんない人だってさ)ご〜いんぐまいうぇい。
2. Posted by May   2007年10月21日 01:02
そうですね。料理がおいしくても接客がマズイと行く気がしなくねりますね。飲み屋でもスタッフがプロのお仕事してる所は、また来ようかな、って気になる。さ〜て、そろそろ始動開始しますかね。遊びすぎた。私は次に何をやらかすかわかんない変な人だそうで、日本人がみんなこんなんだと思われたら困る、って友だちに言われた・・・。
3. Posted by May   2007年10月21日 01:05
やだー、システムエラーって出たのにはじめのも行ってる。
なんだか馬鹿の上塗りみたいで、やだなぁ。

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