2007年12月19日

Pursuit Happyness

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「あんたの言い訳は聞き飽きたわ。“大丈夫だよ”って、子供が生まれた時も、そう言ったわよね」

 

そう言って、いたいけな5歳の男の子を残してニューヨークに去っていった女。

 

残された男と子供の生活が始まる。 

 

 

Pursuit Happyness」 はWill Smithの新作である。本当は最新作と書こうと思ったのだが、既に次作が出てるので、新作。

 

つづりが違うってつっこまないでね、原作がこうだから。意味あるし。

 

幸せを追いかける権利は誰にでもある。でも、何もせずに幸せを受け取る権利はない。追いかけてジェファーソン、頑張った人間だけが受け取れることが出来る。それが資本主義だ。

 

物語のそこここにアメリカ建国の父の一人、ジェファーソンの言葉がちりばめられている。

 

資本主義が正しいかどうかは別にして、その場所で生きている限り、その場所のルールで戦うしかない。そんなルールはおかしい!って言うなら、他所に行けよ。

 

幸運ってのは、本当にあるんだよね。でもそれは、道端に転がってるんじゃなくんて、一生懸命努力している時に、突然転がり込むんだ。

 

そいつを掴む勇気のある奴だけが、生き残れる。右手で綱を保持したまま左手で次の綱を掴むことは出来ない。右手の綱を手放して飛んだ奴だけが、初めて左手で次の綱をつかめるんだ。

 

俺に出来るかどうかなんて考える余裕はない。父と子供、生き残るにはその道しかないのだ。

 

貧困で不安定なセールスマン生活の中、パートナーに見捨てられ、住んでいた家の家賃も払えず夜逃げし、モーテルに逃げ込む。

 

これでは駄目だ、子供と二人、ずっと将来がない。そう思った彼は、家族の再生を賭けて起死回生の勝負をする。現在の医療機器セールスをしながら、大手金融ブローカーの門を叩くのだった。

 

一日が24時間しかない中、医療品セールスのかたわら、金融ブローカーのインターンシップ(6ヶ月間無給だ)を受け、同時に5歳の子供の託児所の送り迎え、そして料理をして洗濯をして掃除をして営業をして仕事を覚えて、それでもその仕事が6ヵ月後に正式採用になる確率は20分の1以下。

 

これがどれだけ大きな賭けか、分かるだろうか?

 

第一、インターンシップに参加することさえ狭き門なのだ。そんな中、彼は何とか智恵を絞って狭き門を潜り抜ける。

 

ところがそれだけ頑張っている時に運悪く、政府の税金が払えずに銀行口座を差し押さえられる。時の政権は俳優上がりのレーガン政権、福祉に大きなしわ寄せが出た時代だった。

 

ついにはモーテルも追い出され、ホームレスになる。

 

自分の5歳の子供を守る為だけに、インターンシップの仕事が終わって真っ先にシェルターに駆け込む。ある晩、たった4つしか残ってないシェルターに何とか間に合うが、そこで割り込みする男と喧嘩になる。

 

「ここは俺の番だ!俺は順番に来た、仕事を終わらせて駆けつけたんだ!お前が割り込んだんじゃないか!」

 

そうやって何とか一晩のベッドを確保する、すべては子供の為に。4人用の部屋で、他の人に気を遣いながら、ちっちゃな洗面台の水で子供の体を洗ってあげるうちに電気が消える。

 

消灯だ。子供をベッドに入れた主人公は、「お父さんは外で待ってるからね。ドアをちょっとだけ開けておくから、ゆっくり寝なさい」と言う。ちっちゃなシングルベッドを子供の為に確保してゆっくり寝かせた後、主人公は将来の為の勉強に、部屋の外に出る。

 

たまにはシェルターを確保出来ないこともある。そんな時は電車や駅のホームで朝を待つ。

 

 Pursuit Happyness necktie

女性と子供だけを預かる施設で、「あなたは駄目よ」と言われた父親はどうするだろう?僕なら、子供だけ泊めて、自分は野宿で十分だ。それなのに、主人公は、「駄目だ、俺と子供はいつも一緒なんだ!」と言い切る。愛、かな。

 

 

 

子供へ向けた愛がずれてないから良い。自分の考えの押し付けではなく、子供を守ってきちんと育てたい、そのキモチが物凄く伝わってくる。

 

いたいけな子供が、そんな父親を愛おしそうにじっと見守る。この映画の一つの売りは、実の子供が映画に出てるってとこだ。Will Smithの実の子供が共演しているのだ。

 Pursuit happness bus 1

 

子供に対する愛と、親の気持ちを押し付けて自分のコピーを作ろうとする自分勝手の違いを、子供は見事に見抜いている。だから、この子はお父さんをdaisukiだ。

 

 

 

冷たい大都会の下で、父子二人が肩を寄せ合って生きる姿は、映画の中で女性シンガーが歌う「明日に架ける橋」とかぶさって、実に印象的だ。

 

現代社会の極限の状況に追い詰められて、それでも自分をきちんと守りながら戦っている人って、どれだけいるんだろう?

 

今の日本は血を流さない戦争と同じ状態だ。

 

1960年代にベトナムのジャングル戦で神経をすり減らして戦った米兵が、時たまの休暇にタイや沖縄で女を買い、ピストルを腰に下げたまま飲み歩いてた。そんな連中と今の日本のサラリーマンは同じだ。

 

神経をすり減らし、ぼろぼろになるまで働き、それでもちょっとした失敗で人生を失い、家族を守ることも出来ない精神的負担に疲れて、夜の街に走る。

 

そして家庭は崩壊して、一体何の為にここまで生きてきたのか分からなくなる。

 

そんな状態で立ち直ろうとする精神力は、おそらく日本人100人のうち、99人は持ち合わせてないだろうな。

 

主人公は、そんな状態から戦いを始めた。子供を守る為に。

 

実話に基づいた映画らしい。どこまで実話か分からない。しかし、今も奥さんに逃げられそうな旦那は、是非見ておいたほうがいい。自分が主人公の立場になった時、どこまで戦える?

 

終りがうざくない。さっくりと、これからの将来を見せるだけで終わってる。余計なことをだらだらと書かない。気持ちよい終わり方だ。

 

映画を見終わった後、テレビを見ながら今日買ったおもちゃを組み立ててた竜馬に、思わず”Hey boy, it’s time to go to bed, you must wake up early’n tomorrow morning” と、つい英語で話しかけてた自分に気づいた時、かなりこの映画にのめりこんで観てた自分に気づいた。

 

 やばいし。それでも、人に勧めたい、特に結婚しているカップルに勧めたい、素晴らしい一本でした。一発の銃弾も飛ばない映画を褒めることは滅多にない僕の推薦です。

 

ちなみにうちの奥さん、「まあまあね」とほざいてた。ちぇ。もっと頑張るよ。

 

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tom_eastwind at 00:45│Comments(1) 最近観た映画 

この記事へのコメント

1. Posted by May   2007年12月20日 03:42
この映画、日本では1年くらい前に見ました。
私も結構はまりました。
昨夜は「甲殻機動隊」を見ないか、と言われましたがアニメはあんまり好きじゃないと言ったらラッセル・クロウのボクシングの映画を見ることに。
Waterloo駅前でおつまみの中華を調達し深夜までビデオを見ました。
昨日から「geek」が何か検索しろ、って。未来のパートナー?はコンピューターおたくなのか??

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