2008年01月03日
タウランガ
12月30日、Q1をチェックアウトする日の朝、ホテルのレセプションに素朴な笑顔の白人の女の子が立っていた。
その時はまだ青空で、ゴールドコーストがこれから大雨に突入するってのは、波と風の強さから予想できる程度だった。
「オークランドに行くの?」
「違うよ、オークランドに戻るんだ。僕はオークランドに住んでるんだ」
ちょっとびっくりしたような顔で、彼女がこちらの顔をじっと見る。
「私は、タウランガなんだ〜」ちょっと間延びしたような、遠くを見るような目で話しかけてきた。
「いいとこじゃんか、タウランガ。何でゴールドコーストなの?」
そう何気なしに聞くと、彼女は、
「タウランガにはホテルがないからね〜」と、少し苦笑いをしながら答えた。
聞くと、オークランドでホテル専門学校を卒業した後にタウランガに戻ろうとしたが、まともな仕事がなくて仕方なくゴールドコーストまでやってきたとの事。
ゴールドコーストであれば、同じ白人だし、黙っていればキーウィとも分からないしね。給料も悪くないから、ここでしっかり稼いでいくわ。
次?次はまだ考えてないけど、シドニーかな。ここも、それほど長くいるとこじゃないわよね。自分のキャリアを考えれば、もっと上のポジションに行く為に、良いホテルを渡り歩かないとね。
オーストラリアが2千万人の人口を抱える日本のような大きな国家だとすれば、シドニーは東京、ゴールドコーストは沖縄みたいなものだ。ケアンズは、戦前の台湾と言ったところか。
その位置関係で言えば、ニュージーランドは北海道だ。オークランドは北の玄関札幌で、タウランガは網走か。
普段東京に住んで生活をしている人からすれば、札幌の事なんて考えもしない。ましてや網走なんて、それどこ?感覚だろう。
クリスマスホリデーが近づいてきて、それで初めて北海道旅行、札幌、網走番外地となるのだろう。
2003年5月に書いたコラム「尾瀬」と同じで、シドニーに住む人からすれば、ニュージーランドは時々行くからよいのだ。クライストチャーチ転勤などなってしまうと、それこそ島流しであろう。てか、多分その時点で会社を辞めるよね。
民間企業で家族を犠牲にして転勤を受けるのは、世界広しと言えども日本くらいのものではないか?
そして、タウランガで生まれた女の子からすれば、毎日同じような海と山を見て、ろくな仕事もない田舎町に住んでいながら、テレビから入ってくる情報は大都会の豪華なレストランや一流ホテルのパーティ、そしてリゾートの高級ホテルで過ごす家族の姿なのだ。
まして、野心も根性もあれば、自分を試してみたいだろう。幸い、英語も出来るし肌の色も同じだ。ビザも不要である。
よし、行ってみよ、海を渡って新天地へ。
渡った先では、都会独特の冷たさや嫌らしさを感じもするけど、それでもタウランガで働くよりはずっと楽しいし給料は増える。嫌なことがあれば、ふるさとのお母さんに電話すればいいんだもんね。
去年も随分たくさんのキーウィ医師がオーストラリアに渡ったそうだ。ニュージーランドで貰う給料の2倍近い収入なんだから、それも当然だろう。
どんな愛国心に訴えても、道徳に訴えても、若者はやはり何か新しい場所、新しい人生を見てみたくなるものだ。それを止める事は出来ない。
これからもニュージーランドから中間管理層や知識層がオーストラリアに移動するだろう。その穴を埋めるのは、海外からの優秀な移民しかない。
今回ひしひしと感じたのは、ニュージーランドはオーストラリアの7番目?の州であるって事だ。経済圏が一つなのであり、オーストラリアの鉱物資源景気は、そのままニュージーランドの景気に直結している。
良いか悪いかではない。経済実態としては、一つの国家なのだ。だから、北海道の田舎で生まれた子供は、より良い生活を目指して東京へ向かう。
昭和の時代に田舎から集団就職で都会に向かった若者のようなものだ。
「じゃね、楽しい旅を」、そう明るく声をかけてくれたタウランガの子に、思わず
「君もね」と返して、空港行きのタクシーに乗りこんだ。
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この記事へのコメント
私自身縁があってkiwiの彼と付き合うようになったのですが、彼を通じて日本とNZの違いを感じたり、話し合ったりしています。彼は東京で5年働いています。彼も私も毎日の様に感じていますが、東京はCrazyだなぁと思います。リラックスできない人々ややり切れないニュースに悲しくなることもあります。もちろん良い面もありますが、それでもゾンビのように働きたくはありません(笑)
私たちはまぁ堅実に働き、投資し、ようやく今年NZへ行く予定です。土地を買い投資兼リラックスできる本当の生活をしたいとおもいます。
いつも参考になるrealな記事ありがとうございます。ちなみに彼はタウランガ出身です・・・
Mayumiさん同様いつも社長のリアルな記事を読んで「ああ〜NZで心穏やかな生活がしたいなあ」と思う日々です。もうしばらく日本で働く予定ですが、NZ目指してがんばります。