2008年01月04日

ジョーダン

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英語の発音が随分綺麗で、思わず聞いた。

 

「あんた、オージーかい?」

「僕かい?僕はウェールズから来たんだよ」

「なるほど、イングランドからだね」

「いやいや、ウェールズから来たんだよ」

 

シドニーのシャングリラホテルのバーでの話だ。初日に奥さんと一緒に飲みに行った時にカウンターでサーブしてくれたお兄ちゃんが、二日目も仕事をしていて、今日はこちらも一人だし、その晩はたまたま忙しくなかったので、カウンター越しにちょっと言葉を交わしたのだ。

 

ウェールズ出身の若くてハンサムなブロンドのジョーダン君は、5年前に英国の大学を卒業してシドニーに来た。バーテンダー暦は6年だ。

 

ウェールズ出身の彼からすれば、イングランドは別の国だ。東京から来たと言ったら、ああ、中国からだねと言われたようなものか?

 

元の宗主国とは言え、豪州は別の国である。なんらかのビザを取得して生活をしているのだろうが、これって移住だよね。

 

そう思いながら、豪州の話を聞く。最近の景気、政府与党が変わったこと、シドニー人の気質、外国である豪州で英国人(English Man) はどのように過ごしているのか等など。

 

彼からすれば「どうでもいいことを聞く奴だな」と思っただろうが、英国で大学に行くってのは、それなりに頭が良い証拠なのだろう、問題点を簡単に整理しながら丁寧に一つ一つ答えてくれた。

 

「この国の景気はハワード政権でうまくいったね。資源大国であるってのは今の時代の流れに乗ってる」。

 

sydney submarine「アボリジニの居住区でウランが取れたりするんだけど、1800年代からつい最近までアボリジニを人間として認めずに居住区に押し込み、ウランが取れるとなれば、更にそこからも追い出す政策は、なかなかタフな心がないと出来ないよね」。

 

「もしアボリジニが文字を書いて政治に興味を持って白人を訴えれば、随分と面白いことになるぜ」と、ウインクしながら答えてくれた。

 

勿論これはきつい皮肉だ。ジェームスクックがこの国を「発見」して、それに次いで英国人がアボリジニを虐殺して自活手段を奪い、更に居留地に押し込み、彼らの子供を奪い準白人として育てる等、米国に渡った白人もびっくりの手段でオーストラリア大陸を強引に先住民から奪い取ったのだから、これがもし1900年代に行われていれば、オーストラリアという白豪主義国家は成立しなかっただろう。

 

まあ、簡単に言えば1700年代から1800年代にかけて世界中で行われた植民地分捕り合戦時に、ちょいと誰にも見えない南半球で、火事場泥棒みたいに作った国家みたいなものだ。

 

同じように新天地に渡ったキーウィ白人は、少しの争いはあったもののマオリと白人の共同国家を創り上げ、後にはマオリ関連法を作って彼らの先住民としての権利返還を進めたわけで、このあたり、同じ英国からやってきた同族とは思えない。

 

てか、実際は同族人種ではあるけど階級が違ったから、道徳観念に大きな格差があったのが一番の違いだろう。

 

sydney police and justice本国で刑務所に入れられてた犯罪人を、一生の島流しにする為に送り込まれた場所が豪州である。そして犯罪人とそれを監視する軍隊が元となって国家が成立しているのだから、暴行、虐殺、強奪、何でもありだろう。

 

それに対してニュージーランドに渡ってきた移民は組織移住であり、移住できるほどの資金を持つ中産階級なのだから、しっかりとした道徳観を持った敬虔なキリスト教徒でもある。

 

まあニュージーランドと豪州の成り立ちを比較するのが本題ではない。

 

「たまたま田舎モノが自分の痩せた畑をしょぼしょぼと耕してたら、そこから鉄鉱石やウランが出てきたって話だね。日本にもそんな連中はいるだろ。自分の持ってた土地に高速道路ができて大もうけした奴、あの手の国家版だよ」

 

ジョーダン君は、こちらが日本人旅行客だと分かっているので、わりかし気軽に話してくれる。

 

「英国から来たってのは、まずアクセントでばれるね。だから最初から英国から来たって説明するほうが気軽だよ。ただ、この前のラグビーワールドカップの時は、さすがにスポーツバーでは飲めなかったな」

 

前回のワールドカップでは、豪州、NZともに敗退したが、勝ち残ったのがイギリスと南アだったので、イギリスと南アからの移住者は、本国のようには派手に騒げなかったという。

 

その後、しばらく窓から見える景色を一人で楽しんでいると、カウンターの内側から、ジョーダン君と若い女性スタッフが、カクテルの材料の呼び方について笑いながら議論してた。

 

「これはハイブよ(笑)!」彼は「違うし。これはハーブだよ〜」

 

sydney cruise boatオーストラリア訛りで話す彼女と、クイーンズイングリッシュで話す二人は、違う国家の人間でありながら、随分楽しそうだ。

 

結局シドニーに滞在した3晩とも、このバーに寄った。それも、彼の接客や話し方に、移住という視点から見て、とても興味を持ったからだ。

 

彼がアジアからの移住組より有利だった点。それは、肌の色が同じで、言語が完璧に理解出来て、文化を理解出来ることだろう。

 

そう言えば、僕が香港に移住した時も、黙っていれば肌の色が同じだから香港人と思われた。後半では言葉も自由に使えたので、ゲームセンターで遊んでた時に一斉取締りに来た警察に、普通に香港人と同じように捕まった。その時は身分証(ID)を見せて事なきを得たが。

 

そして同じ漢字文化であり、なおかつ中国の歴史や文学に興味があって、ある程度読み込みもしてたので、会話の中でもそれほど無理なくついていけた。

 

今考えてみると、これは強いわ。同じように香港にやってきた白人は、どれだけ言葉が出来ても、やはり第二階層の市民である。一線を越えることは出来ない。僕には、それが割合軽く越えられた。肌の色と漢字文化、だろう。

 

だから、アジア人が西洋文化圏に入り込むってのは、肌の色が違うってだけでまず大きく不利で、次に英語がネイティブ並みに喋れないから更に不利で、ましてやキリスト教をベースにした文化の違いも受け入れがたければ、こりゃもう、どうしようもない。その社会においては、第三階層くらいの扱いしか受ける事は出来ないのも、当然であろう。

 

だから、移住しようと思うなら、自分の世代ではほぼ間違いなく乗り越えられない英語のネイティブとキリスト教文化の理解が大きな問題となっているのだから、はい入国しました、今日からこの国の居住者です、100年前に移住してきた白人と同じ扱いをしてくださいと言っても、それは心情的に無理と言うべきだろう。ましてや、肌の色となるとマイケルジャクソンしても意味はない。

 

むしろ、門戸を開けてくれただけ有難いと思うべきだろう。人口減少で悩んでるくせに、他国の労働者を低賃金でこき使い、使い終わったら永住権など与えずに本国に送り返すだけのどっかのアジア国家よりも、まだ表面的な平等は守られていると思う。

 

移民政策は色んな先進国が悩みながら取り入れてきた政策だ。考えてみれば、自分とこの国民だけで政治をやれれば苦労はないのだ。

 

ところが、世界が自由化される中で、人々の移動が急激に増えてきて、その結果として自国民が減少する国では、移民が必要となる時代となった。

 

そう、良い意味で言えば、人々が自分の住みたい国を選ぶようになったのだ。

 

ニュージーランドのように、教育の質は高くて学費も安くて、でもって給料も安い国だと、結局人材輸出大国となってしまう、皮肉な結果でもある。

 

いずれにせよ、移住をするからには、肌の色はどうしようもないけど、英語力と相手の国の文化を学ぶ、それもかなり真剣に学んで、その国に溶け込む努力が必要だろう。それなしにガチャポンみたいな、ハイ、来ました、平等にしてね、なんてのは、望むべくも無い。

 

中国に今から移住する人は少ないだろう。しかし中国が自由化されて、かの国から多くの人々が世界中に向かって移住していくだろう。

 

彼らは自分たちがどう扱われようとかまわない。二級国民で問題なし。要するに、食えればよいのだ。駄目になれば本国に戻ればよい。ありもしない自由とか平等をどっかの掲示板でだらだらと仕事もせずに書き込む前に、働いてカネを作ろう。

 

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tom_eastwind at 13:49│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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