2008年06月20日

「貴重品はございますか?」

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日本国内での空港でのチェックイン時。

 

「貴重品はございますか?」

「ああ、あるよ、この二人の子供と奥さんだ。機内に持ち込んでもよいかね?」

「・・・どうぞお持込下さい」

 

又は

 

「貴重品はございますか?」

 

「うむ、これは困った質問だ。何故なら貴重品とは君と僕の価値観の違いによって大きく解釈が異なる。例えばこの地球は、僕にとってとても貴重だけど機内に持ち込めないよね。そうだ、ならば甲子園みたいに地面の土を掬い取って持ち込むか?

 

それにこれこれ、このカバンだって古いけどもう4年も使っているから貴重だよね、例えば君が初恋の彼女と初めてデートした場所って、とっても貴重だよね。さて、君と僕の貴重品に関する考え方の違いについてはどう思う?今から半日もかけて議論すれば、少しはお互いの考え方が理解出来るかもしれないよ」

 

「・・・どうぞ飛行機にお乗り下さい」

 

何か嫌な客と思われるNO−1みたいな書き方だけど、これには原因がある。

 

世の中にはお互いに「話さなくても分かる範囲内での常識」が常に横たわっている。

 

ところがそれを理解出来ない人間にとっては、どうもそのあたりの「合図」が分からないのだ。だから「分かってるでしょ!」と言われても、分からないものは分からない。

 

何が貴重なのか貴重じゃないのか。こういう曖昧で具体性のない部分で相手側の「常識」を押し付けられると、どうも異常に反発してしまいたくなるのが、僕の悪い癖だ。

 

国際線のチェックインで少し楽なのはその辺で、結局民族が違えば常識が違うと分かってくれるから、常に具体的な説明をしてもらえるし、相手を元々異邦人として扱ってくれているから、こっちの話を聞いてくれる。

 

ところが日本の役人には、どうもこれが通じないようである。

 

国際線で日本に到着する際の携帯品・別送品申告書が再開された。これはふざけんなって内容である。

 

ガイジンからすれば「あれ?これ何書くの〜」程度のお笑いだろうが、日本生まれの日本育ちの僕からすると、折角面倒で様々な手続きが簡素化されたってのに、またも古い仕組みが戻ってきて、最悪、日本人やってるのが恥ずかしいって感じ。

 

今日も機内で、前の座席に坐ってた初老の日本人(おっちゃん、クリームホワイトのジャケットにお洒落な縁なし眼鏡、縦じまのワイシャツ、軽そうなスラックスを一枚革の黒皮の靴とつや消しのベルト、丸坊主だけど60歳後半)が、「おいおい、何で今更こんなもん書かされるんだよ!」とキャビンアテンダントに向かって怒ってた。

 

そりゃ普通の日本人なら怒るだろう。自分の国がどんどん落ち込んでいくのを目の前で見るのを喜んでいられる奴は普通じゃない。中央官僚くらいしかいないよね。

 

とにかく内容が自分勝手である。お上が押さえつけて上から目線なのだ。ガイジンに対しても自分のルールを押し付けて申告書を書かすのだ。

 

大体一度止めたシステムを何で再度導入するのだ?時間や手間の無駄を省く為に折角書類を廃止したのに、自国の財政がやばいとなると急激に態度を変えて、自分の金でもないのに日本人が持ち出したり持ち込んだりするのを管理して、いかにして個人の資産を管理して取り上げようかって事だから、泥棒もびっくりな話である。

 

第一この書類、書くほうからすればいろいろ不明な点がある。現住所?それは今回泊まるホテルの事か、自分の地元の住所なのか?他にもいろんな点があるけど、要するに不親切なのだ。

 

でもって今回一番感じたのが「など」である。いかにも役人の言葉遣いだ。

 

日本への持込が禁止されているもの:「麻薬、大麻、阿片〜MIMAなど」となってるが、最後の「など」ってどんな意味?要するに規制する側が何でも裁量で処理出来るように、「など」があるのだ。

 

例えば持病の薬とか風邪薬とか正露丸(香港人に人気がある)とか、乗客からすれば「こんなもんは書かなくて良いでしょ」と思ってても、そしてその場ではとりあえずスルーさせておいても、「など」さえ付けておけば、これから何年後でもこの書類を証拠として「申告漏れ」または「虚偽申告」で訴えることが出来るのだから、実にさもしい心である。

 

大体この内容って、こっちを最初から犯罪者扱いしているのか?って疑問を持ちたくなるような内容で、まともに海外で商売やってる人間からしたら、腹立たしいことおびただしい。

 

大体政府とは最小規制を作るべきで、「これこれは駄目、それ以外は原則OK」とするべきなのに、「原則全部駄目、これだけならOK、でも後で規則変わるかもよ、その時はさかのぼって適用しますからね」では、まさしく自分勝手である。

 

だからこのおっちゃんもかなり怒ってたのだ。これは俺もわかる。実は数ヶ月前に機内と税関で大喧嘩したのだ、それも全く同じケースで。

 

「いつからこんなもんを再開したんだ!」

「いえいえ、書かなくても良いですが、次回はよろしくお願いしますね」

「ふざけんな!あとになってどうこう文句言うつもりだろうが!」

 

結局僕は適当な点はいい加減に書き込んで提出したが、実に腹立たしい。

 

元々政府の役目とは国民の間の利害調整であり、規制は出来るだけ少ないほうが良いのが基本である。昔の中国の王様も出来るだけ規制を作らないことで国民に自由を提供して長期政権を保つことが出来た。

 

でも考えて見ればこのおっちゃん、これはキャビンアテンダントに怒るのではなくて日本政府に怒るべき事柄である。何で被害者が被害者に怒るのだ?こんな規制を導入したのは政府であって、彼らCAではない。

 

このおっちゃんも、文句があるなら空港の税関に言えって感じですね。それにしても日本政府、本当に真綿で首を絞めるようにじわじわとルール変更をしているな。

 

個人資産、戴きに参りましたよ、さあさあ皆さん並んで、この箱(国家の税金箱)にお金を入れてね、てな事だろう。

 

でもね、そんな事やってる間に日本−オークランド便はどんどん減便させられて、その飛行機が7月から北京に飛ぶようになる。

 

5月にヘレンクラーク首相が福田首相を訪問した際も、やんわりとだけど「日本がちゃんとお金払わないと食料は中国に売るよ」みたいな発言をしていた。

 

国内の目先の自分の今日の利益だけ考えてたら、あっと言う間に置いていかれるぞ。



tom_eastwind at 13:28│Comments(1)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 | 日本

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この記事へのコメント

1. Posted by とある素浪人   2008年06月20日 20:37
お上、お上といわれているうちに、すっかり公務員の鼻が伸びてしまったんでしょうね。
もっとも、「武士の家計簿」という本には、官僚がお手盛りで自らの利権を決定する習慣は、明治政府誕生時にすでに見られるそうですが。
そもそも、幕府を倒して新政権を樹立した際に、自らを貴族にして、利権をほしいままにするあたり、やっぱり出自の卑しさに起因するんですかね?白州次郎のいうnoblesse obligeという精神の欠如を引き継いでいるんでしょう。
この際、お下、お下と呼ぶようにしたほうがいいかもしれませんね。

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