2008年07月06日

克己


鳴沢了シリーズの最新作「久遠」読了。金曜の夜から取り掛かって、最後の50ページは日曜の午後のお風呂で一気に読みきったので、カバンに入れてあった日経ビジネスまでは届かず。

 

こいつは今日の夜、家族でスタローンの旧作「クリフハンガー」を見ながら読むかな。

 

今回は、今までの鳴沢シリーズと違い、かなり人間的な成長を描いている。筋書き自体の面白みよりも、鳴沢ファンとして主人公の内面的な心の成長を傍にいて見つめているほうが面白い。

 

 久遠 上―刑事・鳴沢了 (1) (中公文庫 と 25-12)


 

つまり、筋書き自体は今までの焼き直し的なところがあるので、今までのシリーズを読んでない人には、殆ど意味が分からないのではないか?読み切りシリーズにしては、どうなのか?

 

せめて今までの話を少しおさらいしながら書けば、以前のシリーズを読んでなくても読んだ気持ちになれるし、次に買ってみようかって気になるのではないか?このあたり、作者の意地か編集者の判断か?

 

ただ、本は楽しむものだ、面白くてなんぼと思う僕からすれば、う〜ん、作者の意地なら今までの作品の質の高さに免じて理解するし、編集者の判断であれば、そりゃ戦略的に問題ありでは?と、敢えて異論を唱えたい。

 

今回も筋トレと食事コントロールが横糸で入っている。それもたっぷりと。ダイエットや筋トレ、健康についてあまり正しい生活を送ってない人が読むには、ちょと嫌味かも。てか、話自体が常に「何かとの戦い」を意識して書かれている。

 

それが時には犯罪者との戦いであり、時には友人との戦いであり、そして自分との戦いであり、そして常に逃げないことがテーマなのだから、そりゃいつも言い訳ばかりして逃げてる人間には辛いだろう。

 

それにしても、警察や探偵、犯罪小説に最初にこんなダイエットとか筋トレとか、自分との戦いを横糸を入れるようになったのは、誰だろう?僕が思い出す限りでは、スカーペッタシリーズで中年女性主人公が、目の前にあるおいしそうなピザをついつい食べてしまい、「ああ、これで明日は余分に5km走らないとね」と嘆くシーンである。

 

それにしても警察とか探偵小説では、タバコは大事な小道具だった。フィリップマーローシリーズ、特に「長いお別れ」や「さらばいとしき人よ」では、タバコがなければ話が進まない。

 

 

長いお別れ (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 7-1))

 

それが数十年経って現代になると、警察官がダイエットのために筋トレを行い、タバコを吸う人間の横に立つのを嫌い、夜9時以降に食事をする事を蛇蝎のように嫌がるようになるとは、レイモンドチャンドラーもびっくりだろう。

 

それにしても警察小説としては鳴沢シリーズよりも「半落ち」で有名になった横山秀夫の方が売れてるのは、今の日本の世相を示しているのだろうか?

 

半落ちに限らず彼の作品は、弱いサラリーマンとして警察を描いている。日本で棚に平積みされて、「こりゃ面白い!」とか「警察内部の知られざる実態!」とかにのせられて買ったのだが、はっきり言ってあれは、弱い男(社会人、ですね)が自分の弱さを許してもらう為に読むような本だ。

 

警察官でさえ人間、とか、記事に出来なかった記者がどうこうとか、世の中の変化や戦いについていけない人が組織に巻き込まれて流されていく事への言い訳ではないか?

 

 

だから、世間がますます国際化して厳しくなり、生き残る為の努力は半端ではないない時代に、サラリーマンとしてなんとか組織にしがみついて、そんな自分に言い訳をする、そんな連中が増えているから売れているのではないか?

 

 陰の季節 (文春文庫)

 

 

 

 

会社は人生のすべてではないし、しがみついてお慈悲で生き残る為の手段ではない。

 

 

それよりも家族や自分の生活を優先するために、優先できるだけの能力を身に付けて、会社を選ぶ立場になり、いずれは国も会社の延長として、政府による面倒見が悪ければ退出する、そんな考えでないと、21世紀は生きていけないのではないかと思う。

 

そんな時に横山秀夫の作品が売れているのだから、多くの日本人男性の21世紀の未来が見えるような気がする。もっと怖いのは、オークランドの日本人社会でも「横山秀夫」現象が出ているという事だ。

 

今日久しぶりにスリーピースのスーツに袖を通して見た。随分着てないな。最低5年以上は着てない。買ったのは二十数年前。ずっと箪笥の隅っこ。

 

今でも十分に着られた。あの頃、無理をして買ったけど、よかったなって今思う。

 

明日は雨が降ってなければ、これで出社してみよう。



tom_eastwind at 15:35│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 | 最近読んだ本 

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