2008年08月06日

ビジネス売買契約

8b8ef1a9.JPG

今日はニュージーランドの会社の買収契約を成立させる。

 

当社の位置づけは、ニュージーランドで起業したい人と、ニュージーランドの既存ビジネスを売りたい人を結びつけるコンサルタント=仲介役である。

 

起業と言っても目的は様々で、日本で行っている事業をニュージーランドで展開したいと考える人のためには、会社をゼロから設立することもある。

 

また、既存のビジネスを購入することでロングタームビジネスビザと言う永住権を取得したい人もいる。

 

どちらの場合も問題は、売る側がいるか、と言う点だ。

 

日本だと、親子代々のれんを守りってなもので、ビジネスを売るなんてあり得ん!という人もいる。また、ビジネスを売るとなると、まるで悪いことみたいに考えてしまう傾向がある。

 

でもニュージーランドでは、親のビジネスを子供が継ぐという発想はあまりなく、むしろちっちゃなビジネスを大きくしたら、後は売却してしまうという感覚である。

 

だから、ビジネスで何かを売って儲けるという視点と、ビジネス自体を売って儲けると言う視点があるのだ。

 

でも、誰も自分のビジネスがON SALEだとは、あまり言いたくない。自分から売りに出すと、どうしても価格が低くなるし、第一誰にでも言うことが出来るような話ではない。だから売りの情報は、表面には出てこない。そこで僕らのようなコンサルタントの出番となる。

 

レストランでビジネスランチをしてる時とか、どこかのバーのカウンターでビールを飲んでる時とか、仲良くなった弁護士連中とコーヒーを飲んでいる時とかに、「そう言えばあそこが〜」とか「実はこんな話があるんだけどね〜」てな感じで、テーブルの下からこっそりと出てくるのだ。

 

所謂ビジネス売買コンサルタントがウェブサイト上で載せているのは、あれは氷山の一角。本当に面白みのあるビジネスは身内でしか回さないのだ。

 

このあたり、本当に田舎の地縁社会である。

 

あまり知られていないが、ニュージーランドの起業家ビザ(LTBV)のポリシーでは、既存企業の買収とは「当該会社の株式の25%以上を取得すること」が最低条件となっている。実際にはもっと積み上げて33%以上とか、できれば経営支配権が取れる51%とかが良いのだが、要するに会社を丸ごと買わなくても起業家ビザで永住権が申請できるという点なのだ。

 

そして、2〜3年後に永住権が取得出来れば、その時点で株を売却することが出来る。てか、中国人や韓国人の場合は、いたってごく普通のビジネスとして株の売買を行っている。

 

中国人経営のお土産やさんで、「ここでやっても絶対に儲からないでしょう?」みたいな場所や商品でやってる場合、僕はよく冗談で「ビザショップ」と言ってる。

 

それでもニュージーランド経済に貢献して雇用を創出しているのだから、政府としては問題ない。そのビジネスを誰かが再度購入して経営している限り、国からすれば納税と雇用があるのだから問題ないのだ。

 

ただそうなると買う側からして難しいのは、「適正価格がいくらか?」と言う点だ。ここでデューデリジェンスの問題が出てくる。

 

最近の日本でもM&A、企業買収がよく行われるようになって一般化された言葉だが、企業の株価がいくらなら適性か、またその株を再度売却する際にどの程度の価格で売れそうなのか、と言う「読み」である。

 

勿論非公開未上場企業の話なので、どこまで相手側の出す情報を読むか、また実際にその商売を見て、それがNZにおいては将来性があるのか、などなどを読まねばならない。

 

最初に見るのは、当然相手の会社の決算書である。日本の決算書ほど難しくはない。

 

意外に思われるかもしれないが、今儲かっているかどうかは、あまり関係ない。大体どこの会社もオーナー企業であり、利益を出して納税するよりは、経費を使って少し赤字にするのが一般的だからだ。

 

だから決算書を見ながら、その数字がそのビジネスモデルと合致しているかを見る。大体どんなビジネスでも、大事なのはビジネスモデルだ。そこさえしっかりしていれば、後は自然と家賃、人件費、経費部分が適正かどうかが分かる。

 

それで、経費とビジネスモデルをつき合わせて、本来出る筈の利益を見つける。この利益を年間に直してその2〜3年分の合計と、会社の持つ資産と、ビジネスモデル自体が誰にも真似が出来ないものか、又は誰でもすぐに真似できるものかを見る。

 

これで買収価格を算出する。

 

そうすると面白いことに、企業経営者は、自分の会社の価値を外部に客観的に評価されたことがないから、皆「ほ〜、そうなんだ」と口を揃えていう。

 

ただ、これで出てくるのはあくまでも数字の上だけなので、今度は実査をする必要がある。実際にその店や企業の中に入って、日常業務が回っているか、ビジネスモデルが実際に顧客の足をその店に向かわせているか、である。

 

なので僕の場合は、日頃から時間があれば街を歩き、どんなビジネスがどの程度お客が入ってるのかを見ることになる。帳簿だけでは実際のビジネスは分からない。

 

だから時々、売りたい人がネタを持ってきて「これなんぼで売りたい」と言うのだけど、「その店知ってます、その売値違いますよね」と切り返すことになる。

 

僕の立場は、買い手側のエージェントとしてデューデリジェンスを行い、出来るだけ買い手の利益になるように交渉を行い(勿論売り手としても納得出来る金額)、弁護士を通じて法律的な問題がないかを確認して、税理士を通じて株の売買契約を作成し、最後に署名を両者にしてもらうことだ。

 

毎年20〜30件程度の会社設立をやっているので、それに伴った上記のようなビジネス売買も発生する。ただ僕の立場は常に買い手の利益代表である。

 

だからどんなビジネスを紹介、仲介するかは、当然ながら最も重要。何せ買い手のお客様とは、これから何年もの長い付き合いになる。変なものを売ってしまったら、そのお客様は目の前にいるわけなので、後でトラブルになる。

 

そこで大事なのは地元とのコネクション。ほんとのところ、どうなの?ってブラックボックスな部分だ。これを、時にはキーウィ、時には中国人、時には韓国人、勿論日本人からも情報を収集して、さあどうしましょうって考えるのが僕の仕事。

 

日頃はあまりこういう事は書かないのだが、最近よく「結局君はなにやなのか?携帯電話レンタル会社?医療通訳会社?旅行会社?不動産会社?ファイナンス会社?ビザコンサルタント会社?ガイド派遣会社?」と聞かれる。

 

勿論全部答えはYESなのだ。実際にうちの会社は色んな事をやっているので、人によっては今でも僕が携帯電話レンタルの会社の人間だと思われている。

 

ただ、そのような仕事はすでにルーティン化されていて僕自身がする必要はない。なので、「君はなにや?」と聞かれれば、僕の仕事は移住と起業のコンサルティングです、となる。

 

他にも色んなケースがあるのだけど、今日は「起業家部門のビジネス買収」について、でした。

 

などと偉そうに書いてると、こんな声が聴こえてきた。

 

「情報収集が大事だなんてのを言い訳に飲み歩いてるだけでしょ」

・・・それはまあ、そうだけど・・・。

 

「大体情報収集なんて、記憶失うほど飲んで出来るわけないじゃん」

・・・それもたしかに、そうだな・・・・。

 

「あんまりかっこの良さそうなことばかり偉そうに言うんじゃないよ、飲んでる時の写真ばらすぞ!」

・・・・失礼しました! 

 



tom_eastwind at 16:47│Comments(0) 諸行無常のビジネス日誌 | NZの不動産および起業

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔