2008年09月01日
笑う警官
「笑う警官」 佐々木譲
本屋で平積みの中に見つけた、「10万部突破で続々重版中!」という触れ込みの帯が付いてて、ましてや「警察小説の金字塔!」までも書かれているし、エンターテイメントの世界に復帰した角川春樹のハルキ文庫なので、とりあえず購入した。686円+税=ハルキ文庫への投資みたいなものだ。
この投資、結果から言って利回り20%くらいかな。悪くはないし、ゴミのような小説が世間で人気を得ていることを考えると、こういう良質の本は量産して、本の世界だけは「良本は悪本を駆逐する」となってほしいものだ。
クイーンズタウンに滞在中に一晩で読み終わった。てか、スキーで疲れて街で食事して9時過ぎに戻ってきて、それから4時間程度で450ページ程度の作品が読み終われるってのは、内容がかなり読みやすいと言うことだ。
全体の筋書きは最初の10ページくらいで大体見えてきたのも読み進むのが早い理由の一つ。
これは解説でも言ってるとおり推理小説ではなく警察小説だ。だから推理しながら読む必要はなく、警察内部をテーマにしているから、何冊かこの手合いの本を読んでれば入りやすい。
ただし人気の「半落ち」などの警察小説を書いてる横山秀夫の暗い文体とは違う。
北海道を舞台にした小説なのだけど、北の海の暗さはなく、参加するメンバーが4月第二週の春の大通公園を舞台にしてタイムリミット24時間で活動するのだが、皆明るい。
サラリーマン特有の暗さや諦め感がないので、読後感も悪くない。時期も、北海道警の裏金問題等不祥事などが出てきたのと一致するのでよく売れたようだ。
しかし、筋書き自体は既存のいろんな筋書きを引っぱって来て合成させたようなものだ。
クリントイーストウッドの映画の設定をちょびっと、藤原伊織の文体のような香りを少し、みたいな、いかにも「おぬし、混ぜたな」と思わせる。
でも決して出来上がりは悪くない。本人の文体に嫌味や特徴がないから、いろんなのが混ぜやすいのかもしれない。
だから、初めて本に触れる人が読むには、とても入りやすい作品だし、「よし、次を読んで見ようか」と言う気持ちにさせる。
この作品は映画化されるという話もあるようだ。
エンタメ小説が当たれば映画に持っていく筋書き。ハルキ文庫さん、よくやりましたね(絶賛と言う意味ではなく、うまく読者を誘導しているって意味)。エンターテイメントをよく分かったお方です。
「野生の証明」で薬師丸ひろ子を高倉健と共演させて世間をびっくりさせたハルキさん、刑務所から出てきても現役ですね。