2008年09月14日

サファリツアー

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サファリパークツアー

 

最近は日本人観光客が大幅に減少している。激減とはいかないまでも、21世紀初めの16万人と比較すれば20%以上落ち込んでいる。

 

これに合わせたかのようにニュージーランドのワーキングホリデイ市場も冷え込み、これは激減と言える。ビザを取得してやってきた人の数x滞在日数で言えば、これも21世紀初めの頃から比較して70%以上の落ち込み。

 

日本全体としてもワーキングホリデイ市場はそれほど大きく伸びていない。ところがこのビジネスは古い時代の旅行業と同じで、机とパソコンと電話があれば仕事が成立する。

 

だから今は業界一位と言われているワーホリ斡旋会社も、実は1999年に設立した後発会社だったけど売り方さえうまければ企業規模に関係なく売れるのだ。

 

でも新規参入の会社が続出する一方で顧客が増えないので、当然販売競争は激化する。その結果として「たたき合い」が発生している。

 

こうなるともう、旅行業と同じ道を辿ってしまう。とにかく買ってもらいたいから、リスクを説明しないし商品を知らずに売る。

 

あ〜あ、旅行業も留学業も、ダメじゃん。

 

でもそこには、ダメになった理由がちゃんと内包されている。

 

1980年代のパッケージツアーが盛んな頃、業界大手のカウンターに来たハネムーナーカップル、とっても幸せそうに「ハワイ旅行に行きたいんですぅ〜」てなこと。ところがその依頼を聞いてコンピューターを叩いて調べた若い女性担当者、「ただ今ハネムーンは満席です」だとさ。おいおい、パックツアーがすべてかよ。

 

それから数年して、左手の小指のない人がハワイの入管でチェックされて入国した後に逮捕されたもんだから大問題。入管で退去ならまだしも、市内に出た小指レスに対して警察は犯罪者扱い。逮捕、留置、簡易裁判、強制退去。当分は入国禁止。

 

これは手続きをきちんとしなかった担当者のミスであり、旅行会社が結局は賠償することとなった。

 

(両方とも業界ネタなので何が問題かって背景をブログでは説明しずらいな)

 

パッケージ以外に商品を知らない担当者、タリフとコンピューターがすべての時代。自分で何も考えない人々。

 

つまり、旅行業界がバカやってた時代に、今の構造不況はすべて内包されている。旅行屋が叩き売りな「香港チャーター400名!」とか智恵遅れな商売やってて、21世紀になって消費者に見捨てられたんだ。

 

でも、旅って一体なんだろう?

 

それはやっぱりお客様の希望を叶えてあげることが第一で、その希望が現地との触れ合いとか観光地の感動とか美味しい食事とか目的があれば、それが旅の理由だから、それをかなえるために旅行会社は最大の努力をして、その対価として手配費用をもらう。

 

でも、旅って天候や航空会社、ホテル、バス、食事等、様々な要素が絡み合っており、どっかで問題が起こるのは、それこそ旅。だから旅においてトラブルは付き物なのだ。だからそのトラブルを、転ばぬ先の杖として事前告知をしながら、そのトラブルを楽しむ方法を教えるのが旅のコンシェルジェの役目。

 

ちょっと旅行会社的なドライなかき方になったが、旅を商売にして30年飯を食っている僕としては、この点は明確にしておきたい。

 

人に感激を与えるとき、その価値はいくらか?例えばバリシニコフのダンスを映画で見たときは800円。安すぎる。

 

お客様がクサヤの干物を何の前振りもなくいきなり食わされたら、たとえそれが名物でも本気で「二度と来るもんか」と思うお客様もいるだろう。

 

感激とはそれだけ大事なものだし、そこは付加価値の要素がたくさんあるが、同時に人によっては感激のポイントが違う。だから旅行やは相手を見て気持ちを読み取り彼らの好き嫌いを理解してクサヤの干物を説明して、旅の驚きを喜びに変えさせる方法を知らねばならないのだ。

 

旅とはまさに付加価値の塊であるが、付加価値は人によって違う。

 

人は旅行会社を使わなくても旅をが出来るし、地球の真ん中かどうかは別にして旅先で愛を語ることで、一生忘れない幸せを創れる。

 

「愛、それってなんぼ?」

 

「少なくともお金じゃないでしょう」

 

「でも、お金を払わないと地球の真ん中には行けないよね。愛も語れない」

 

じゃ、そこまで行く為の効率的なコース、愛の語り方、ホテル選び、そんな、トータルコーディネートをするのが手配担当者と添乗員。その為には二人の愛の形まで知らねばならない。

 

こういう「愛」を生む作業に付加価値はある。でも、付加価値のあるサービスを提供出来る旅行屋が今の時代、いないのだな。旅のコンシェルジェがいなくなった。てか、彼らが価値がないから消費者が切ったのだ。彼らが人間らしい生活をしてないから、お客様を理解出来ないのだ。

 

何でこんな事を書いたかと言うと、最近のツアーはまさしく付加価値のない「サファリツアー」で、見たい動物が居なければ金返せとなる現象が多いからだ。これを日程管理と呼ぶようだ。

 

おいおい、動物って動いたり止まったりする。時間によっては見えないかもしれない。でもそのリスクを背負ってるのが旅だし、旅には常にリスクがある。だから、旅のお供がいかにうまく事前説明するかが勝負なのだ。

 

もし動物が見れなくても、その場の雰囲気を空気として味わって、それを異文化として理解して楽しませる、そういうのが旅だよね〜。

 

でも、販売担当者がきちんと説明していない。「あ、あとは現地ガイドがちゃんとやりますから〜」

 

現地では動物制御できないし。

 

でもそれ・・日本の法律では違うんだって。見たい動物がいなければ返金。

 

一体いつから、旅が「消化ツアー」になったのだ。旅はトラブルの連続であり、それをも楽しませるのが旅行やの力だ。

 

オリンピックツアーで開会式のチケット付きのを買ったのに旅行会社の手配ミスで開会式に参加出来なかった。こりゃあ旅行会社のミスだ。

 

でもオーロラツアーで本来オーロラが発生する時期に天候不良でオーロラが見えなければ全額返金か?

 

一体いつから、日本人ってこうなったのだ?自己責任とか、まあ自然だからしゃあないかって言う心の余裕とかをなくすって。それは、売る側が現場知らずに机上の空論で契約ばかりわいわい騒いだ挙句に現場を無視した「旅程規約」を作ったからだ。

 

つまり本来は、トラブルも含めて喜ばせるのが旅行の本質なのに、日程どおりにツアーを運行することが目的になったから、敏感なお客様の心を変化させてしまい、クレームを発生させるようになったのだ。

 

いいんだよ、オーロラが発生しないリスクを変動係数に入れて自動的にツアー価格を高く設定しても創れる。でも聞きたい、あなたが売りたいのはそういう商品なのか?(一応言っておくがうちの会社ではそのような商品は売ってない)

 

お客が言う。「サファリパークでは、客の為に無理やり引っ張られてでも動く動物を見たい。でも自然を見たい」

 

それって矛盾。

 

じゃあ無理やりお客の前にちっちゃなライオンを連れて行けば今度は「虐待だ」と言うし、動物を自由にさせて動物が見れなければ「ツアー契約違反」と訴える。

 

自然が欲しければたまには動物を見れないこともある。どうしてもサファリツアーで動物を見たければアフリカに行くしかないのだ。

 

「やだ!そんな高い金は払いたくない!でもライオン見たい!」そういうお客様にはNOと言う勇気も必要なのだ。

 

異文化を知りたければ最低の理解力は必要!確約が欲しければ高くなる。そうやってお客様に教えていくのも、実は旅行やの仕事なのだ。

 

現場を知らない役人根性連中と、旅の素人が旅行業界を破壊させた。

 

とにかく今の日本、やばいぞ。間違った消費者保護が結局旅の喜びを失わせて、お客と旅行会社をいつの間にか対立関係に追い込んでいる。その結果旅行会社が能動的活動を出来なくなり、お客は旅を楽しめなくなっている。

 

写真はクイーンストリートにある古いビルの飾りです。古いものを大事にする、良い文化ですよね。

 



tom_eastwind at 03:43│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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