2008年09月18日

志ら玉

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志ら玉

 

昨晩は、これまた自分で行けることは一生ないような老舗料亭へご招待いただく。

 

名古屋に行くたびにいつもご馳走になっているので本当に申し訳ないくらいなのだが、お客様から「たまには純和風懐石はいかがですか?」とお勧めしていただき、料亭も懐石もテレビの中でしか見たことがない僕としては、えいや!って感じでお受けした。

 

それにしても今回は食事出張かと思うくらい食べる機会がある。普通なら出張の後半は体がべっとりと疲れたようになって飯が喉を通らなくなるのだが、美味しいものを頂いているせいか、今回は最終日にも関わらずあまり疲れもなく、食事も美味しくいただく。

 

それにしても日本の文化は楽しい。奥が深い。建国170年の歴史しかないニュージーランドと比較するのは不公平だとは思うけど、この料亭の作り、行儀作法、味、途中のてなぐさみ、どれ一つをとっても絶対にニュージーランドでは存在しない内容だ。

 

てゆ〜か、こういうのは、やっぱりその文化が生まれ育った地域から外に出してしまうと、それだけで変化していくのだろう。

 

お店では「お値打ち」と言うことばを頻繁に聞く。出された料理を食べつくすことが出来ない僕は、まるで値打ちの分からない人間だ〜みたいな視線で見られる。

 

三味線1美味しい料理を手軽な値段で提供し、更に仲居さんの素敵な笑顔と毛氈に坐って三味線を弾いてくれるお遊び。

 

聞けばすべての座敷を回って楽しませているComplimentary serviceなのだから素晴らしい。

 

 

かなり御年なおかみさんが、にこにこしながら「名古屋のPRソング、是非とも聴いてくださいな、あたしゃ昔は美人三姉妹、今は恐怖のばば三人ですが、怖がらずに楽しんでいってくださいね〜」と明るい声で話しかけてくれる。

 

甚句とは今の時代の言葉でPRにあたるそうだ。昔美人のおばあさんの時代には、PRって言葉なかったでしょう。それを今の時代に合うように変化させて、伝統の技を守りながら客を楽しませる術を知っているこの人たち、ほんとに素晴らしいなと思った。

 

「そんな素晴らしい日本をダメにしている今の時代ってのは、全部ひっくり返してがらがらポンってやんなきゃダメだよ」お客様がおっしゃる。

 

お客様は単なる知識人というだけでなく、様々な日本文化にも通じており、そして政治にも経済にも明るく、何よりも独立不羈、そして自分の頭で考えることを当然とする素晴らしい方で、いつも学ばされることが多い。

 

なのでこの晩は、食事を楽しみ日本文化に頷きお客様とのお話に学ぶものがあり、実に楽しい夜となった。

 

それにしても何よりも思うのは、ここ数年で完全に「潮目が変わった」ということだ。今まではこのようなお客様は日本における少数であり、実際にニュージーランドでビジネスをするなんて人は超少数だった。

 

ところが今、30代後半から40代前半の人々がニュージーランドに目を向けてビジネスを始めている。

 

「日本の常識は世界の非常識」って紙に書くと、それをそのまま自分の知識のようにひけらかす上場企業の社員。

 

ところが彼らに「だから世界の常識で考えましょうよ」と言うと、「え〜!そんなの非常識ですよ!」となる。

 

「だ〜から君の常識は世界では通用しないし、世界に打って出なければ少子高齢化が進む日本に市場はないのだから、ジリ貧になるではないか!」と説明しても、やっぱり理解出来ない。

 

つまり、本に書いている言葉を口にはするが、その意味することを自分の頭で理解していないのだ。自分で考えることが出来ないのだ。まさにxxである。

 

でも、いつの時代も生き残れるのは、自分の頭で考えて行動する人々だ。

 

この料亭も今では老舗だが、創業当初は様々な苦労もあっただろう。それでも打って出た。そして今も、大事なものを守りながら変化し続けている。

 

京都の歴史あるお菓子屋に言わせれば、常に変化し続けることこそが生き残る道だという。

 

つまり、常に変化し続けながら守るべきものを守ったから今があるのだ。

 

変化し続けるには、常に現状に疑問を持たねばならない。その為には現状がどうなのか客観的に判断せねばならない。そこには知識と健全な危機感が必要である。

 

しかし、だからと言って生き残る為だけに「守るべきもの」を棄ててしまっては、生き残る意味がない。

 

知識もなく危機感も持たず自分の頭で考えない人間の未来はない。常に変化し続ける日本の伝統文化に囲まれてお客様と話しながら、本気でそう思った。



tom_eastwind at 13:25│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 | 日本

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