2008年10月02日

太平洋を越えてきた大津波

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日頃週刊で発行される経済メルマガが先週からはほぼ毎日更新されたり、いつもは色んなネタを書いているブログが経済一色になってしまったりしている。

 

先週あたりから物凄い勢いで世界中を情報が走り回り、皆が猜疑心で他の人の行動を見ている。

 

イギリスの銀行での取り付け騒ぎとかがあったし、大手証券会社が吹っ飛ぶなど、もうこうなるとどこも自分を守るだけで精一杯になる。

 

そりゃそうだが、こういう時は10歩くらい先を見て見たい。つまり、今回の米国発大恐慌の先に何があるかってことだ。

 

一番には金融の再編である。

 

日本は91年にバブルが崩壊しても何の手当てもせずじっと黙って耐えてたから、97年、ついに耐え切れずに長期信用銀行、山一證券が飛んだ。

 

91年当時の被害総額は10兆円と言われてたのが、7年間も何も手当てせずに放置してたもんだから、その被害は100兆円を越してしまった。

 

米国は今が一番の山場であり、米国を中心にして販売された様々な金融商品を抱えている銀行、特に日本の地銀はこれからいくつも吹っ飛ぶだろう。

 

ただ、銀行救済はしないけど金融システムは守っていくのが行政なので、日本では更に銀行の再編が進む。それによって銀行の体力強化を図るともいえる。

 

日本も振り返ってみれば97年頃からどんどん銀行の再編が進み、現在はメガバンクが誕生して、これでやっと欧米の大手銀行と対等に戦える規模になった。

 

その間銀行で働いていた人からすれば毎年自分の働いている銀行の名前が変わり、リストラに遭い、それこそジェットコースターに乗ってたようなものだ。

 

実質無金利状態を10年続けて、本来は預金者が受け取るはずの金利をすべて銀行が吸い取って、要するに国民の個人資産を奪っておいて今やっと体力が取り戻せたのが今のメガバンクだ。

 

米国でも次々と銀行が合併して、来年の今頃にはスーパーメガバンクが誕生するだろうし、それが金融システムの安定化には繋がる。

 

だから世界の動きを見れば一年後は全く新しい銀行体制が政府管理下に構築されて、金融は安定した方向に向かうだろう、誰が主導権を取るかは別にして。

 

金融の中心は今後多極化していく。21世紀は東京?ニューヨーク、ロンドンが拠点となるだろう。とくに欧州がこれから最大の拠点になるのではないかという気がするし、専門家の間では経済と政治の多極化、米ドルが基軸通貨から外れていくだろうと予測されている。

 

でも、一般の人々にとっての問題は誰しも自分の足元だ。ニュージーランドの銀行は大丈夫なのか?という点である。

 

この点に関しては先週も書いたけど、不安はない。

 

何故ならNZの銀行経営自体は安定しており、利益を出しているからだ。丁度銀行の決算が終わったところだが、出てくる数字はそれほど不安なものではないだろう。

 

もちろん米国の強烈なパンチで株価が急降下したり為替が大激動しているけど、預金であれば問題はない。

 

なぜなら人間が社会で生活をしていく限り個人間や企業間の決算システムは絶対に必要だし、そのための存在が銀行なのだから、すべての銀行を潰すことなんて出来やしない。

 

ましてや預金者の預金を保護しないという仕組みを取っているニュージーランド政府ではあるが、それは自己責任の話であり、今回は自己責任とは全く関係ない、太平洋の向うからやってきた「津波のような金融システムの崩壊」を防ぐというのが目的だ。

 

この点で自己責任と金融システムの保護をごちゃごちゃにして、「私のお金はどうしよう?」とどこかの掲示板で書いたりしているけど、それは問題を混同しているし現場を見ていない。預金はそのままNZの銀行に預けておく。それが一番安全だ。

 

NZでは銀行と言っても現在は17行しかなく、三菱UFJとかシティバンクみたいに個人取引をしてない銀行もあるので、日頃普通の人が利用するリテール銀行はどれもが決済システムに入り込んでいる。どこかを倒産させて自己責任ですよなど、出来ない話なのだ。

 

技術的にやるとすれば、下位銀行が上位銀行と合併する、例えばナショナルバンクとANZが合併したような方法はニュージーランドではあり得るだろう。

 

また、豪州の親銀行が今回の影響を受けて、例えばANZが資金不足になりせっかく買収したナショナル銀行をどこかに売却するという可能性などだ。

 

しかし銀行自体はNZでは健全であり、要するに親会社が倒産しても優良な資産としてどこかが買ってくれるので、銀行自体の資産は守られる、つまり預金者の預金は保護されるという事だ。極端な話もし売りに出れば、NZ政府が一時国有化するかもしれない。

 

ニュージーランド航空がアンセットの影響で倒産した時も、あれは完全な自己責任で倒産したわけではないし公共の財産であるからと国有化した。

 

更に政府が金融市場に資金をどんどん導入することで国民に安心感を与えようとしているのも、今回の問題が「他の大陸で起こった津波が、太平洋を越えてやってきたのだから、自己責任というものではない」と理解しているからだ。

 

大恐慌と言うとどうしても日本の大正時代の取り付け騒ぎをイメージする人がいるが、今の金融システムはそんなに脆弱ではない。

 

今回も米国では一般市民からは「銀行や証券の連中は今まで高い給料を貰ってたのに守るなんてふざけんな!」という意見があり救済法案は通過しなかった。その気持ちはよく分かる。ただ、今の問題は金融システムをどうするかの問題であり、自己責任の話ではないのだ。

 

自己責任の部分については、いずれ米国では「儲けすぎたディーラー」や「ボーナスを取りすぎた経営陣」を相手に告訴などの形で追及していくだろう。スケープゴートは後でいくらでも用意出来る。米国はそうするだろう。

 

ただ、よそで起こった津波のためにこっちまでおたおたする必要はない。自己責任で買った不動産とは最初から話が違うのだ。



tom_eastwind at 00:05│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 | NZニュース

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