2008年10月12日

ますます続くジェットコースター

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1NZドルが軽く60円を切った。おう、来たぞ来たぞ。この数字は金融のプロ連中からは8月下旬の時点である程度見えており、その時点では1NZドルが77円くらいだった。

 

(だったら77円のときに円を買い60円で売れば大儲けとなるんだけど、金融やってる人は77円が75円で売り、75円で買って65円で売りと、小刻みにやって利益を小刻みに出してます)

 

円高が何故続くのか、何故米ドルが強くなるのか、何故証券が壊滅状態になったのか。その一つ一つはあと半年もすれば解明される。今回の事件も1~2年くらい経てば経済の教科書に掲載されるような大事件になるだろう。

 

このあたり、最近の池田ブログが簡潔に書いているので参考になる。

 

けど彼も書いているように、今回の恐慌はあくまでも金融界の、それもCDSなどの危険な証券を買い込んだ人々の問題であり、それ以外の人間からすれば、実はチャンスなのだ。

 

世の中の秩序が安定している時は、資金は自然と大手に集まる。政府が保護している銀行に集まる。その中では中小がどう頑張っても水面上に顔を出すことは出来ない。

 

しかし一旦秩序が破壊されると、それまで磐石と思われていたものが実は砂上の楼閣だったことを知る。

 

そんなときは大きな資金移動が起こり、投資に対する姿勢があっと言う間に変化する。大きければ安全、ではないのだ。ビジネスモデル自体が利益が出る仕組みになってるか、そこが大事だということが分かるのだ。

 

投資における一番のリスクとは資産が守られるかどうかである。それが今回、規模には関係ない、むしろ小さくても堅実にやってきたところ、例えばNZの銀行等が安全だと分かれば、小さいところの方が運用経費も安いわけで、だったら最初からリスクが同じならより運用経費の安い、ビジネスモデルが明確な銀行の方が良いということになる。

 

だからだろう、最近は日本からの送金が増えている。一年後には確実に値上がりが見込まれるNZドルだから、定期預金にして放置するだけで30%くらいの利益が見込める。

 

ところがそんな個人資金の動きを観て真っ先にパニックになるのが、実は一番キモの座ってない大手金融機関関係者なのだ。

 

銀行、証券などで働く人々はそれこそエリートコースを歩いてきた。幼稚園の頃から「お母様!」と呼び、閑静な自宅では時々庭の葉がかすれる音くらいしかしない。

 

小学校に入っても隣に座っている奴とつるんで早弁する事もなければ先生に「ざっけんな^!」と怒鳴ることもない。

 

要するに、静かに大人しく、親に言われたラインに従ってしずしずと成長してきた彼らは、暗闇でいきなりぶん殴られるような経験をした瞬間にびびり上がってしまい、今まで上等なスーツを着て英語で3文字や4文字言葉を話してた人々が、突如として今自分の手の中にあるモノが紙切れになったことを知り、青ざめるのだ。

 

すべてが予定調和の中で生きてきた人間には、現実世界では時々暗闇でぶん殴られるという現実を理解出来ない。

 

ところが数日前も書いたが、実体経済はそんなことでいちいち“びびっちゃいられない”。例えば病院では今日も患者が来る。為替が下がったからと言って手術をやめるか?

 

毎日田んぼで野菜を作ってた人が、証券会社の株が吹っ飛んだからと言って野菜の株を踏み潰すか?それどころか、彼ら農民は天災が襲ってくれば、必死になって自分の田んぼを守るだろう。

 

そして社会の荒波を生きていくサラリーマンだって、大波の中を家族を守る為に一生懸命生きる。要するに実体経済の中で生きている人々は、もうちょっと生活感があるし覚悟があるのだ。

 

生きるってのは戦いで、理屈だけで世の中が回ってないと理解して腹をくくって実体経済の中を生き抜く人々からすれば、今回の金融危機も「とんでもねえ騒ぎ」だけど、それは自分のビジネスの本質とは違うってことを無意識のうちに理解している。

 

実際にオークランドでも道を歩くビジネスマンの顔を見るが、みんな忙しそうだけど危機感はない。てか、「夏が来ましたね〜、ビジネスランチと称して、山水でワインのみましょうぜ!」とばかりに、ネクタイをした人々がビールやワインを片手に楽しそうにしている。

 

これから気をつけるべきことは、今は金融の中で収まっているが、これが実体経済に及ぼす影響を出来るだけ小さくするのが政府の仕事だということ。

 

要するに今必要なのは市場にお金を出し続けて、とにかく民間企業の日常の決済リスクを最小化させること。

 

ただ、今はまだ問題にされてないが、これをやると次にはインフレが来る。これはもう、ほぼ確実に来る。今回市場に出てきたお金は山火事のときの大嵐みたいなもんで、山火事は消せるけどその後に山津波とか雪崩れを起こすことになる。

 

だからこれから一番大変なのは日本だ。今回の金融危機が収束し始めれば様々な物価が上昇し始める。物価と賃金がスライド出来る仕組みを持つニュージーランドでは賃上げで対応出来るけど、今だ未組織労働者やフリーターが何百万人もいる日本では価格競争力を保つ為に弱い労働者への賃金転嫁は出来ない。

 

その結果として低賃金のまま物価上昇の波をもろにかぶってしまう人々は、貯蓄も出来ず結婚も出来ず小さなアパート暮らしを余儀なくされる。これが社会全体の逼塞感に繋がり(要するにどれだけ働いても明日の幸せが見えない)が出てきて、これが凶悪犯罪の増加に繋がる。

 

てか、今すでにそんな現象が日本のあちこちで起こってるので、これが更に加速化して急増するということになるだろう。

 

これを解決するにはいくつか方法がある。長期的には教育だし短期的には賃金体系の見直しだけど、どちらも既得権益を持つ連中からは受け入れられないので政治的に解決することは不可能。

 

総論賛成各論反対の常で、理屈では立派なことを言っても自分の痛みとなると受け入れられない一部の連中のために、これからも当分は日本の状況に良い方向での変化はないだろう。

 

「そんなことばかり言いやがって!日本人ならどうやれば日本が良くなるか考えるべきだろう!」と言われそうだが、そんな日本にしたのはいったい誰だ?

 

そして、何で「今の日本の既得権益に乗っかってる連中の体制」を守る為になにかをする必要があるのか。てか、どうすれば良いかはすでに分かっている。それを実行するべき連中が実行しないのだからどうしようもないだけではないか。

 

 

 



tom_eastwind at 13:37│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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