2008年10月29日

デフレ解決の第二の方法

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デフレ解決の第2の方法

 

飯尾:
それでは、デフレから出るための第2の方策というのはどのようなものですか。

深尾:
もう1つのやり方というのは、バブル退治の時にやる普通の方法、バブルのターゲットに税金をかけることです。現在は、現金・預金・国債バブルですから、政府の保障する全ての金融資産に対して課税することで、バブルを止めることは可能です。そうすれば他のものにシフトします。

飯尾:
対象は、基本的には預金と現金ということですか。

深尾:
政府が将来のキャッシュフローを保障したすべての金融資産の残高あるいは現在価値に対して、課税日をもってデフレ率プラスアルファの税金を、デフレが続く限り何回でもかけるということです。現状で課税するならば23%がいいと思います。

 

このやり取りは最近の話ではない。5年ほど前に政府系の経済専門の調査機関RIETIが発表した時のインタビューの抜粋だ。

 

なんだかここ暫く金融危機ネタばかりになっているけど、毎日の為替が上がった下がったよりも、日本政府が今後世界の政府と共同でどのような政策を打ち出していくかに興味がある。

 

とくに日本の場合は、どのような政策を打ち出す場合も必ずそこには役人の利権が絡んでくる。大義名分を振りかざしておいて、裏では天下りのポジションを作ったり省益のために利権を拡大するのだ。

 

最近の分かり易い例はメタボ対策で、あんなもん数年前は殆ど話の端にも出てこなかったのが、ここ一年ちょっとで突然メタボメタボである。

 

メタボなんて昔からいっぱいいたのに、何で今になってメタボ対策やったら会社の健康保険料をどうにかしてあげるとか、その逆があったりする。

 

社会保険庁の解体に合わせて新しい天下り先を作ろうとする厚労省の素晴らしき独創的な発想なのだろう。

 

ただ、メタボは健康志向ってんだからそれなりに利点もあるけど、金融についてはそうはいかない。

 

純粋に学者の見地からすれば今のデフレーションを退治するには金を使いたくなる動機付けをしろってことになる。ところが経営者からすれば今のような不況では現金を手元に持っておきたい。

 

だったらその現金を手放させる為には、現金に対して課税しろってことだ。これはとても分かり易い。

 

現金持ってたら毎年税金取られる、だったら設備投資に回したりとか経費として使ったりとかしたほうがましということになる。

 

世界の政府と足並みを揃えながらどのような手段を講じるのか、まだ答は出てないんだろうけど、いずれこのデフレ退治をしなければ世界の経済が収縮してしまい、大恐慌の二の舞になってしまう。

 

そうなっては大変だからと政府は資金をじゃぶじゃぶと放出しているけど、このお金が現業を抱えている一般企業に下りていかないから、不動産を中心とした黒字倒産が連鎖的に発生している。

 

つまりお金が銀行で止まっているのだ。または政府のひも付きになるのを嫌がる地方銀行が、なかなか借りようとしないのだ。

 

そんな中では、じゃあ現金に課税しましょうってのは一つの選択肢ではある。以前も書いたけどそんな事が現実的に可能かどうかは別として、学者の議論としては成立する。

 

ただ、ここでちょっと賢い役人がいれば、マスコミを誘導して「お金持ちだけが儲けてお金を使わないから日本が不況なんだ」みたいなことを書かせれば、あっと言う間に世論を誘導出来るだろう。

 

その時に資産に対して課税をする「富裕税」を導入してしまえば、逃げ切れない資産家は次々と捕捉されて課税対象となるだろう。

 

何せ役人が国民の後押しを受けてやるのだから、こりゃやりやすい。役人と政治家の資産には影響が出ないように予め「事前調整」をしておいて、一般の人々から課税出来るのだから。

 

狙い撃ちにされた人は堪らないが、やるんだったらあっと言う間に法改正して「この未曾有の危機を乗り越えるために!」みたいなお題目を付けてしまえば良いのだ。

 

そして政府は金融緩和と正反対の措置を取り、民間企業の自由度を制限しながら政府の役割を拡大していくだろう。

 

そしていずれ出来上がるのが中央政府による「制御された資本主義」であり、戦前のような日本株式会社の復活となるだろう。いずれにしても起業とか自由とか、そういう言葉が闊歩出来る場所はますます縮小していくことになる。

 

世界中のお金が円と米ドルに戻ってしまい、今回の金融危機の一番の犯人である米ドルを強くするとかなんて、とっても変てこな状況になっている。

 

今は1ドルが40円台になったと大変な騒ぎだし、実際にこれはこれで大変なのだが、これは一過性のものであるのも事実だ。

 

ただそれよりも大事なのは、これから世の中の仕組みがどう変わるのかをしっかり考えて、このデフレと、それに続く激しいインフレ(日本の場合は給料が上がらずに物価だけ上がるスタグフレーションの可能性が大きい)に耐えるために人々にどのような選択の余地があるのかを今からしっかり考えておくことだろう。



tom_eastwind at 00:04│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 | 日本ニュース

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