2008年11月05日

医療破壊 週刊東洋経済 11月01日号より

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成田から香港への移動時間は4時間30分。オークランドに戻ったらすぐに出社しよう、今回の日本滞在は長かったので、戻ってまずは机の上を整理しないと翌日の仕事に影響が出てしまうと考える。そのための「明日の予定」を頭で組み立てる。

 

メールも、書けるものは機内で全部作ってしまい、到着したらすぐに発信出来るようにする。

 

そんな事を考えながら成田空港で週刊東洋経済11月01日号を購入。医療破壊というタイトルで特集をやっていたので、機内で読む。

 

日本では医師不足や看護師不足が問題になってて病院が閉鎖されたりとか大変だという話はよく聞くが、この雑誌はそれをデータとして切り出しており、今の日本の医療が置かれた大変な状況を訴えてる。

 

・消える病院

・命を落とす医師

・さまよう患者と家族

 

どれもきついテーマ。でも問題の根幹は政府が国民の健康を真剣には心配していないって点なのは明快。

 

自分たちは国家公務員として手厚く保護された挙句に国民の支払った保険で飲み食いしたり使い込んでたりするわけで、それで行政の責任も取る事なく、告訴もされないんだからやり放題ですな。

 

要するに一番良いポジションにいるのだ。行政の失敗の責任は取らなくてよいけど行政の使える権利は全部押えてる。政治家と違って選挙もないから、首になることもない。国民が何か生意気言ってきたら、その場では聞いた振りをしてあとで行政で苛め抜いて二度と逆らわないようにする。

 

子供の頃から他人を蹴落として競争して大学に入り、そして役人となれば後は一生お気軽なんだから、そんな面倒な国民のことなんて考えてられるかってことでしょうね。

 

医療については長期的な視野で国民を守るという考えがあれば、解決策はいくらでもある。

 

消える病院ってのは現在の保険診療制度とそれに基づいて支払われるお金のバランスが合ってないってことで、無駄遣いはダメだけどきちんとやってるところにはちゃんとお金が払われる仕組みを作ればよいだけ。こういうのは厚労省で医療保険を担当している部署だろう。彼らは医療費抑制が目的であり患者救済という発想はないから、実態を無視して医療費を切り詰めようとする。

 

医師の過剰労働は古い時代の白い巨塔の名残りなんだから、そんなものは医師をきちんと人間として取り扱えば良いのだ。労働基準法を適用させてきちんと賃金払って週40時間で仕事が終わるようにすれば良いこと。

 

これは医師を管理する部署の問題。この部署は若い医師の苦しみよりも医師業界に君臨している老人の意思の方が大事である。そりゃそうだ、法律改正するたびに彼らの意見を聞く必要があるし、自分たちが病気になったら優秀な医者に診てもらいたいからね。

 

基本的に上意下達の世界だから、巨塔の一番上で君臨している老人医師は、自分が若い頃に死ぬほど働いたのだから、何を今の若造が文句言うか?労働基準法?そんなのは労働者にいう事で医者は聖職であると思ってる。

 

もう一つ言えば労働基準法を適用させると無理なこき使いが出来ずに人件費が増えるから病院としては払いたくないという気持ちもあるのだろう。

 

介護は誰にとっても大きな問題だけど、出来ればPPK(ぴんぴんころり)、介護が必要になればニュージーランドのように老人は老人とボランティアと医師が支えるリタイアメントビレッジを導入すれば良いのだ。

 

そのためには人々が死としっかり向き合って会話をする必要がある。この勇気がないままに政府を責めても仕方ない。

 

そうすれば子供が介護疲れで親を殺す必要もないし仕事を辞める必要もない。介護は核家族化が進んだ時点ですでに予想のついたことである。

 

介護だって三世代同居なら誰かが交代で面倒を見ることが出来るのだ。

 

ところが老人問題を扱う部署としては、自分たちの目標は先進国で最も長生きする国、寿命が長い国作りだから、その老人が体中にチューブ付けられてでも長生きをする「生かされてる状態」でも生きてればOK。介護にしたって自分がするわけじゃないから自宅でだろうがどこでだろうが、簡単には死んでくれるなよってことでしょう。

 

医療データ

 

核家族化ってのは長寿を扱う部署には関係ないし、医療費を扱う部署は長生きでも何でも保険さえ使わなければ良いので75歳以上の保険費用支払いは打ち切るという発想になるし、行政として法律を扱う部門からすれば核家族化も保険費用よりも自分が企画立案した法律を通すことが主眼となる。

 

 

要するに同じ厚労省の中でも部署によって目指す目標が違っており、それを国民視点で全体調整しようとするべき上層部が政治的都合を優先させて国民生活を後回しにする。そして政治家は自分が次の選挙でも勝てるように地元に都合の良い、国民に耳当たりの良い政策だけを作ってしまうから結果的に今日のような問題が起こったのだ。

 

それでも三世代が同居しておばあちゃんの智恵があった時代は、大家族で皆が支えることが可能だったけど、それがばらばらになったんだからお母さんが初めて子供を生む時にどうしてよいか分からず、かと言って産婦人科は激減しているのだから、こりゃ困るのは当然ですな。

 

子供が病気になったと飛び込んでくるケースの殆どは緊急性のないことばかりというデータがある。救急車をタクシー代わりに使う人もいる。

 

そして医者の尊厳がなくなってきたのか人々が無責任になったのか、医師が告訴されるケースが急増してきて、「だったら医師なんてやってらんねーよ」という事になって、結局患者は自分で自分の首を絞めてしまう。

 

つまり構造的に医療が崩壊しているのは、50年単位の長期視点で医療を見る人がいないから今のような問題が出てきてるのだ。

 

医師は神様ではないし、激務の中でちょっとでも失敗したら告訴されて免許取り消しでもされたら、折角10年以上もかけて獲得したものがすべて無駄になるわけだ。

 

国民は消費者という美名の下に政府によって甘やかされて、賞味期限がどうのこうの、医者の態度が悪いだの、学校の先生がエコヒイキするだの、とにかく何かあればすぐぎゃーぎゃーと騒いで「訴える!」だのなんの、おいおい、いつから自己責任を取らなくなったんかい。

 

医療崩壊でも

 

今やるべきことは全体的な医療改革と国民が自己責任を理解して学ぶことだけど、何でそれをやらんのかと言えば、国民が自己責任を理解して学んだ場合は政府が思いっきりバカだという事に気づくからだ。

 

  

江戸時代から何も変わってない政策「民は寄らしむべし知るしむべからず」、国民はバカのまま放置しておけ、それが一番の政策だってこと。

 

ここまで愚弄されて医療が崩壊されて、それでもまだ皆さん、それでOKなのか?

 



tom_eastwind at 00:46│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 | 日本ニュース

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