2008年12月15日

法廷会計学vs粉飾決算

62c98c3e.JPG

「法廷会計学vs粉飾決算」 細野祐二

 

日興コーディアルグループを解体に追い込んだリポート

 

とにかくこの本で出てくるある経済リポートが原因で日興コーディアルグループが解体に追い込まれたんだからすごい。個人の力でここまでやれるとは、こりゃ本当に凄い。そう思って読み始めると、これは案の定すごい。

 

元々財務専門家向けのネタとして発行されてたリポートではあるけど、ある程度の会計知識、つまりちっちゃくても自分で商売をしてて自分の会社の損益計算書とかの財務諸表を読める人なら、十分に理解出来る本。

 

何がすごいかって、上場会社なら義務付けられている財務諸表、つまり公表されているデータだけでこの会社の粉飾決算を見つけ出して、粉飾決算に加担した中央青山監査法人までも解散に追い込んだんだから、だ。つまり理論的には上場されている全ての企業に於いて全く関係ない外部の人間がその会社の内部実態を具体的な証拠を持って把握できるということだ。

 

もうこうなると殆ど推理小説。ガリレオのレベルではないですよ。これが本当に一個人で見つけ出したんだから、車椅子の捜査官もびっくり。

 

他にも日本航空の不正経理やNOVAの経理などを扱っているリポート集だけど、どれも読み応えがある。

 

全体を通じてこの作者の言いたいことがすべてのリポートに現れている。それは、今の日本はすでに法治国家ではないということだ。

 

ライブドアのやった事と日興コーディアルがやった事を比べれば、圧倒的に日興コーディアルの方が悪質で継続的だ。ところが法律の下では政治家や官僚と「うまく」付き合ってた日興の方が圧倒的に罪が軽いのである。

 

これが個人同士の取引なら当然にコネは大事である。しかし事柄が法律や裁判になってまでコネが大事となれば、これはもう法治国家とは呼ばない。

 

どれだけ法律を守っても、すべては政府や官僚のさじ加減一つという恐ろしさ。

 

白いものは黒くなり、黒いものは白くなる。役人に逆らわずに悪いことをすれば放任、役人に逆らって正しいことをすれば企業は倒産で社長は逮捕だ。

 

大体日本って、政府が意味のない規制を山ほど作っておいて、そいつを守らなくても政府に恭順であればOK、少しでも政府に逆らうときは意味のない規制を持ち出して当該企業を退出させたり時には経営者を逮捕したりする。

 

その規制にしても、企業の実態や社会の実態に全く沿っていない明治時代の民法だったり、第二次世界大戦時に非常事態用に作られた法律(不動産関連とかつい最近までは食糧管理法とか)が今も生き残ってたり、要するに意味がないだけではなく現代のビジネスにとっては大きな障害となるような法律である。

 

だから法律をまともに守ったら商売にならず、法律を無視すればお上の取り締まりと言うことになる。だから法律を破ってもお上ときちんと取引して役人の天下り先を用意して上納金を払えば企業として継続できると言う実態がある。

 

つまりそこには企業が成長するための合理的なルールや統治という考え方が全く存在せず、お上の裁量のみで統治されている、中国並みに酷い実態がある。

 

こんな国でまともにビジネスが出来るのか?出来る!政府のいう事を聞いてればよいのだ。

 

だからまともな考えを持ったある米国系の大手企業は「やってられない」と言って出て行った。そりゃそうだろう。ルールを作るのは役人で、その基準は役人の為になるかどうかだけである。

 

それでも1970年代は良かった。敗戦の苦しみを知る優秀な官僚が日本を敗戦から立ち直らせる為に一生懸命頑張って成長してきた。

 

しかし今の官僚はそのような苦しみを知らない人々ばかりである。自分の省の利益のみを追求してそれで自分が出世することしか考えていない。そんな人々の為にルールを作るんだから、まともな企業経営者ならばかばかしくてやってられないという事になる。

 

日本は全く持って企業統治や法治国家という感覚のない国だ。お上がOKならどんな悪いことでもOK、そこに法律はあるんか?!という感じである。

 

そんな日本の実態を、会計の現場で長く企業監査にあたってきたプロが本腰入れて書くのだから、その破壊力は凄い。

 

付け加える必要はないと思うが、読み物としても一流。実に理論的で読みやすい文章である。

 

ちなみにこの人、どう見ても推定無罪なのに逮捕・起訴されて有罪判決、現在は上告中。政府に対して本気で戦ってます。

 

法廷会計学vs粉飾決算
法廷会計学vs粉飾決算
クチコミを見る

 

 

 

 



tom_eastwind at 00:48 │Comments(0)TrackBack(0)この記事をクリップ!諸行無常のビジネス日誌  | 最近読んだ本 

トラックバックURL

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔