2008年12月19日
雇用不安激化
最近の日本の記事では大手企業が派遣社員を「雇い止め」にするケースが次々と発生している。
これも日本企業の特徴だろうが、一社のみがやれば叩かれるものでも「赤信号みんなで渡れば怖くない」の倫理だろう。
全社が一斉に雇用解雇に走ったのだから、こりゃ経団連の会議で打ち合わせしたのかと思うくらい。
■派遣切り次々
県内では、精密機器メーカー「キヤノンプレシジョン」(弘前市)が10月末に派遣社員約220人との契約を打ち切ったのをはじめ、弘前航空電子(同市)も12月末に約90人、ルネサス北日本セミコンダクタ津軽工場(五所川原市)も来年1月末までに約100人の派遣社員との契約を打ち切る方針を固めた。
弘前航空電子総務部は「自動車業界や家電業界の不振が影響し、受注が急減している。これほどの減産はかつてない。まずは派遣社員にしわ寄せがいってしまう」と話し、ほかの2社も景気悪化による減産を契約打ち切りの理由に挙げた。
青森労働局職業安定課の佐藤順一課長補佐は「派遣先による契約打ち切りは、そのまま派遣元による社員の解雇につながるケースが多い。10月末現在で0・36まで落ち込んだ県の求人倍率がさらに低下することも懸念される」と語った。
(2008年12月18日 読売新聞)
ただ、派遣と言うのは元々雇用の需給調整をするための受け皿でありそれは誰しも理解していたはず。民間企業が仕事の受注に応じて雇用調整をするのは当然だ。
派遣できる事業を拡大した結果として派遣社員が増えたわけではない。正社員を守っている雇用条件(解雇出来ない保険が必要賃上げ労働組合など)がきついから正社員を雇えない企業が、派遣事業を拡大しなければそのまま失業者となっていた人々を採用したのだ。
安易な雇用と言うが、労働者も商品である以上安易なものを購入するのが企業の判断である。採用だけを企業の生産性とは別枠と考えるほうにムリがある。だって企業は利益を追求するのが仕事だからだ。
この場合失業者が出れば、それは日本政府が憲法に定められているように「国民」に対して生活保障をすれば良いだけのことだ。これを企業に求めようとするから無理が出る。
どこのマスコミも本当は分かっているのではないか?「労働者」と「国民」は違うってことを。
労働者とは会社にとって商品を作るための部品や原価の一つであり国民とは社会を構築する決定的に大事な要因であり、社会を安定させるために彼らの生活を保障するのが政府の仕事だってことを。
元々は政府が行うべき国民生活の安定を企業に要求したところからムリが始まっている。戦後すぐの政府の金なし状態で企業が協力して挙国一致体制で終身雇用と年功序列を導入したのは、それなりにあの時代では正解だった。
けど今はもう世界が変化している。本来の形である「政府による保障」が行われるべきである。
大体雇用のいびつさは指摘されてしかるべきだ。つまり正社員だったら雇用も労働条件も確保されるのに派遣は確保されないってどうして?なんで公務員はクビにならないのか?
今やるべき事は正社員の雇用と解雇条件を緩和することだ。派遣も正社員も同じ労働条件にしてしまえばよい。簡単に言えば正社員もすぐクビを切れるようにすること。
だって国民からすれば正社員も派遣社員も同じ国民だ。
会社からすれば給料が高くて使えない正社員など不要である。それよりも使い物になる派遣社員の方が良い。
では何故雇用と解雇条件の緩和が出来ないか?
それは労働組合が正社員の雇用と賃金を守る為に同一作業同一賃金同一労働条件を認めなかったのが最大の原因だ。
この問題は1980年代から存在していた。それぞれの組合がいろんな取り組みをしてきたが、結果的に「問題の先送り」をして正社員=組合員の既得権益を守ることでずるずるとここまで来たのだ。
だから雇用問題についてやるべき事は分かっている。
1・正社員と派遣社員の雇用と解雇の条件同一化
2・同一作業同一賃金の導入
3・失業者への生活保障=政府の義務
4・生活保障をするための消費税増加=痛みは社会全体で分かち合う。
これが出来ないのは政治がきちんと国民全体のために機能していないからだ。消費税の値上げで選挙に負けることを恐れる自民党、労働組合の支持を受けている民主党が、共に手を付ける事が出来ない状態になっている。
しかしこれ、やれば国民は絶対に受け入れると思う。だってこれが一番正解なのだから。
ちなみにニュージーランドでも解雇の問題は出ているが日本のような深刻さはない。何故ならこの国ではセーフティネットが整備されており、すべての国民は65歳まで失業手当が貰えるし、65歳からは老齢年金がもらえるからだ。
ニュージーランドって国は資本主義ではあるが、社会制度はほぼ社会主義である。リチャードセドンが首相だった1893年から1906年の間に国民と労働者を守る様々な制度が導入された。
例えば1893年、ニュージーランドは世界で初めて女性の参政権を認めた。
そして1898年、ニュージーランドは世界で初めて老齢年金制度を導入した。
も一つ言えば、労働組合の活動を合法化して労働者の権利を認めたのもニュージーランドが世界で最初。当時の労働組合と言えば経営者や政府から蛇蝎のように嫌われており、日本や米国では組合活動をやるだけで警察や暴力団に殺されていた時代である。
世の中、やろうと思えば大体の事は出来る。政府が国民の生活を真剣に考えれば正しい政策は取れる。国民がおらが村の目先の利益だけを考えて政治家を選ぶから現在のような無政府状態になるのだ。