2009年01月16日

民放連の58年の歴史で最悪。

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本日のウェブ日経を読む。

 

「民放連の58年の歴史で最悪。民放55社が08年9月中間決算で経常赤字」

 

でしょうな。民放テレビ局が広告主にテレビ番組企画を持ち込み有料広告を入れてもらう。民放テレビは無料で視聴者に見せることで広告が見られて購買活動に繋がる。

 

このビジネスモデルはすでに壊れた。広告を自動的に飛ばす録画器械が出現して、インターネットでいろんなドラマや映画やニュースが見られる時代に、何であえて広告を見る必要があるか。

 

第一問題は、その広告効果が測れないということ。誰も高い割にその効果が分からないテレビ広告にお金は払わないよ。

 

随分昔うちの会社で無料情報誌を毎月定期的に発行していたことがある。当時は年間4千人近くのワーホリがNZを訪れ、携帯電話もインターネットカフェも発達してなかったので、情報提供手段として無料情報誌は効果的であった。

 

ただ無料情報誌を発行しても、そのビジネスモデル自体が成立しないことは分かっていた。つまり、作っても儲からないのだ。

 

何故なら新聞を制作する費用と取材編集にかかる人件費、配送費用を合計すると当時一ヶ月一万5千ドルくらい。これで印刷されるページ数と広告に使える紙面を計算すると、1ページ当たりの価格が出てくる。

 

するとこれがどうしても中国や韓国の新聞の3倍くらいの価格になるのだ。だから広告主からすれば高い日本語情報誌と思われるし、ましてやその印刷がどれだけ綺麗でもその広告を見て何人のお客が来たか分からない。

 

だからこりゃ商売にならんなと最初は思った。

 

ところが視点を変えて当社が外部に払っていた広告費合計がいくらかと考えれば、これはいける。

 

つまりビジネスとして利益を出すのではなく自社の広告費を削減すると言う考えだ。

 

例えば一万5千ドルの経費から外部広告費を差し引けば経費が5千ドルになるなら、この5千ドルをどう埋めるかを考えれば良いわけで、もっと言えば自社新聞の広告欄に自社広告を経費を気にせずに掲載することが出来る。

 

そして自社の意見表明が出来る場所を持つと言う意味でマスコミの強みが利用出来る。

 

これなら成立する。

 

しかしそれだけでは当然面白くないので、もちろん外部広告を取りに行った。その時に広告主と話をしていて分かったのは、彼らは効果さえ分かれば金は払うということ。逆に言えば効果が分からないのにお金は払えないと言う事実。

 

そこで僕はPayPerViewの新聞版を提案したことがある。要するに広告を切り取ってお店に持っていけば5%割引になると言う、今のほっとペッパーみたいな奴だ。

 

これなら効果が分かるのでどうですか?と提案すると、かなり多くの会社が乗ってくれた。これが今はインターネットで普通に使われている。クリックした分だけ課金する仕組みだ。うちもグーグルとyahooに掲載しているが、納得性がある。

 

納得性があるってのは、本当にクリックされたかどうかは合理的に証明出来る方法はないけど、少なくともテレビの課金システムよりはましだからだ。

 

その後インターネットが普及してきたので紙媒体はその役割が終了したと判断して発行終了、全面的にウェブサイトに切り替えたのが5年前かな。

 

止めるときは随分考えたけど、結果的に業務量を大幅に削減出来て本業に集中出来るようになった効果は大きい。

 

今もやってるんだからこれからも続ければ良いという「紅白歌合戦発想」では、今回の民放のようにいつかは行き詰る。

 

テレビ局の親会社は新聞社ってのは皆さんご存知のとおり。当時の新聞社が新しいメディアであるテレビ局に危機感を持ち競合相手と看做して、各県ごとに許認可制になった時にすかさず自分の会社に取り込んだことで、58年間の栄華を誇ることが出来た。

 

しかしテレビ局はその生い立ちを考えようともせずに、次世代のメディアであるインターネットを敵と看做して、事あるごとに「だから2ちゃんねるは教育に悪い」とか「インターネットには嘘情報ばかり」と攻撃をかけてしまった。

 

けど「嘘情報ばかり!」と叫ぶテレビ局自体が、実は多くのやらせ番組を作り、嘘の情報を流し、下請けをこき使う事実が表に出てしまったのだから、視聴者の信用は失ってしまった。

 

第一、広告効果を測る為の努力をしようとせずに「視聴率」のみをデータとして企業に示した。けどそんな広告代理店の子会社が作った数字を誰が信用するか。

 

そして一般市民はインターネットを選択し、企業もインターネットを含む、テレビを含まない広告手法を選択した。

 

早い時期からテレビ局がインターネットを理解してテレビとインターネットで取り込める仕組みを造れば良かったのに、パソコンも使えないおじいちゃん達は変化出来ずに乗り遅れてしまった。

 

当社は現在ウェブ一本だ。説明会を開催する告知もウェブだけなのに「よく毎回集まりますね」と取引先によく聞かれる。

 

時代は変わった。社会構造とビジネスモデルが大きく変化したのだ。だから企業もそれに合わせて変化する必要がある。

 

民放の広告激減は一時的な景気後退の問題ではない。テレビが終わる日の始まりなのだ。

 

**記事抜粋**

 日本民間放送連盟は15日、全国のテレビ局127社のうち43%にあたる55社が20089月中間期に経常赤字になったことを明らかにした。広告収入不振に加え、20117月に予定する地上デジタル放送への完全移行に向けた設備投資が収益を圧迫した。広瀬道貞会長は同日の記者会見で民放の経営状況について「」と語った。

 

 民放連に加盟する194社の地上波テレビ局とラジオ局のうち約47%にあたる92社が中間期に経常赤字を計上。テレビ局に限れば127社のうち55社が赤字だった。093月通期の見通しについて広瀬会長は「さらに悪化していく恐れがある」と厳しい認識を示した。

 

 地デジへの移行完了に向けた放送業界の設備投資額は民放だけで1兆円超にのぼる。同会長は「ローカル局の投資額は各30―50億円で、各局の利益の約10年分」と説明。一方で「(減価償却負担が増す)当面の局面を乗り切れば、またテレビの時代になる」と力説した。 (19:16)

**抜粋終了**



tom_eastwind at 11:03│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 | 日本ニュース

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