2009年01月20日

農業大国 その2

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Druryのイメージは1940年代のロサンゼルス郊外。「長いお別れ」で私立探偵フィリップ・マーロウが焼けるような赤い大地と青い空の間に挟まれながら、依頼者の自宅の屋敷に古い車で訪れる場面がある。

 

道を行きかう人はなく、道路沿いには街路樹が枝を広げているが、それで防げるほど日差しは甘くない。アスファルトの歩道とその両側に広がる芝生はきれいに刈り込まれているが、それをやっている人の姿は見えない。

 

朝食を食べるための食堂が作られている、そんな時代に建てられた住宅が軒を連ねる。まさにそんな雰囲気だ。

 

Druryの人通りのない街中には殆ど信号もなく、住宅街の四つ角は殆どがランナバウト(信号のない四つ角)だ。

 

ランナバウトで徐行しながら時々右側から通り過ぎる車を待ち、車が過ぎるとこちらも軽くアクセルを踏んでランナバウトに入る。

 

くるり。回った。あれ?太陽の位置が変わったぞ。

 

タイミングの悪いことに、その瞬間に黒い雲が僕の頭の上に急激に広がって、叩きつけるような雨に変わる。

 

おいおい、前が見えないぞ。ランナバウトのすぐ向うにある小学校の駐車場に車を突っ込んで、昨日印刷しておいたグーグルマップを取り出す。

 

み、道がない。

 

そう、僕が走っている田舎町の細い道は、どうも掲載されてないようなのだ。そんなことありくい!と思うのだが、もしかしてこの地図はオークランド南部を印刷しているんだけど、僕がいるのはオーストラリアのパースかもしれない。

 

道を歩く人もおらず、時折通り過ぎる車は「ビシャ!」と水を弾いて行く。

 

真っ黒な雨雲が抜けて、また強い日差しが車を焼き始めると、自分の行くべき方向を確認する。

 

えと、僕は北から南に向かって走っている。だから地図を逆にして見る。なるほど、目的地の位置は南西で、僕の進行方向からすれば太陽を右手にまっすぐ下り、右に右に行くようにすればいいんだな。

 

今回の目的地は、地図を見るとまさに農場地帯のど真ん中。

 

途中まで国道を走り、分かれ道で農道に入る。のだが、地図の上では非常にわかり安そうな交差点や二股道でも、実際の景色ではどれが正解か全然分からない。

 

何せ回りはすべて農場地帯。右に見えるのはキャベツだろ、えっと、左に見えるのはとうもろこしか?とにかくどこも丘陵地帯に広がる農園ばかりで、どれも同じ景色に見えてしまう。

 

時々出てくる道路標識が、どうしても僕の手元の地図と合わない。

 

時速100kmで日本で言う「普通の道」を飛ばしながら(そうしないと後続車から追い込みをかけられる)地図と眼前の景色を比較していくんだから、これは難作業だ。出来れば目玉が4つ欲しい。

 

pukekoheたぶん途中で、本来ならまっすぐ行くべきところを左折したんだろうな。気がついたら目的地を大きく外して(大体10kmくらい)、全然違う次の街プケコヘ(Pukekohe)に着いてしまった。

 

え〜皆様、右に見えますのがプケコヘ小学校、そんな事を一人でつぶやきながら、北に戻る道を探す。

 

何とかそれらしい道がある。よし、この道を北上して標識のあるところを左折だな、今度こそ、と思いながらそれらしい道を見つける。けど、この道は僕の手元の地図に出てる名前と違う。

 

どういうこっちゃい。まあいいや。

 

このあたりまで来ると、地名の付いてる街と言っても、人口200人くらいですなか。住宅が数十軒並んでたかと思うとあっと言う間に通り過ぎてしまい、次の街までは農地が続く。日本のように切れ切れに街が繋がっているなんてことはない。

 

イメージとしては、オークランドから真っ直ぐに南に下る道があり、その道沿いに「ここは俺の土地と家」って感じで住み始めて、何せ道路の向うに広がる農場が広いから、一つの街が何十軒も固まることが出来ないのだろう。

 

地図を見るうちに、だんだん分かったことがある。このあたりでは同じ道でも1ブロックごとに名前が違うのだ!

 

そして行く先を示す標識も、標識によってすぐ隣の町だったり、すんごい離れた西の端のタスマン海に面する町の名前を書いてたりする。

 

ええい、とりあえず左折できそうな道を見つけて、西へ進路をとろう。全然名前は違うけど、心は通じるだろう・・・・って、かなり意味不明。頭、つかれてきたか??

 

てか、このあたりの標識になると、知ってる人向けに作ってるわけで、100年以上前から道があって、100年以上生活している家族のための標識で、オークランドのよそ者が初めて来たって分からないように出来ているのだ。

 

patumahoe時のゆっくり流れる農場地帯で、僕一人がBBQの開始時間を考えながら「急がなきゃ」と思ってた。

 

そんな僕を、100年以上も地元の人々のBBQを見てきた畑。

 

彼らは、隣の畑と顔を見合わせながら笑ってるんだろう、そんなことを思いながらとにかく車を走らせる。こっちゃ日本人、時間には厳しいんだ。

 

けどこの判断が合ってたようで、やっと街の名前と地図の名前が一致し始めた。おうおう、なんとかいけそうか?

 

途中で地図にはない、農作物を積み込む引き込み線路を一旦停止せずに一気に通り過ぎながら、あ、これには説明が必要。

 

日本人には信じられないかもしれないけど、ニュージーランドでは踏切では一旦停止するほうが危ない。

 

何故なら、停まったらそのまま動かなくなる可能性があり、線路上で立ち往生する可能性があり、それが機関車にぶつかったりする可能性があり・・・・・どんな車じゃ!

 

けど、これは本当なんです。だから踏切では赤信号がなってなければ一気に通り過ぎろが基本なんです。

 

sheep途中両側に広がる農園風景を眺めながら、時には立派な馬が牧場を走り回る姿を見て、時には一般道を時速100kmで走る車の横でipodを付けてジョギングしている体格の良いおじさんをみかけた。

 

 

そして時には「しゃこたん」にフードパーカや野球帽を反対にかぶった若者がぎっしり詰め込まれた改造車が突っ走るのを見ながら、車は進む。

 

そうこうしているうちにやっと目的地にたどり着く。入り口の自動門を開けてもらってくぐると、すでに先客の車が一列に10台近く停まっていた。この御宅をお邪魔する頃には3列に車が並んでたから、そうとうの賑わいだったと言える。

 

ここもまた広々とした土地に果物の林や遠くに見える牛がのんびりと草を食べている。

 

こんなところで子供を育てたら、本当に素直に育つんだろうな。オークランドからたった一時間でこんな町があるんだもんな。

 

なんか、たどり着くまでに結局2時間近く車に座りっぱなしだったことになるけど、さてやっと本番、農業大国がどうして始まったかの話ですが、それはまた明日。



tom_eastwind at 00:32│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 | 移住相談

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