2009年01月22日

農業大国 そして今

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英国から船に乗って赤道を越えてやってきた初期移住者がPatumahoeを切り開いてから160年後のある晴れた午後。

 

 

「牛がいいっすね。羊とかも悪くないけど、手間とかを考えると今のニュージーランド農業だと牛がいい」

 

来週にはPatumahoeの牧場を引き払って南に150kmほど下ったところの、もっと大規模な牧場に移る予定の牧場主がそう言った。

 

「ここはちょっとちっちゃ過ぎるんですよ、もっと牛を飼おうと思うってね」

 

今の牧場でもずいぶん広いと思うのは子供の頃から風呂も付いてない公営団地の2DKに住んでた貧乏人の気持ちがそうさせるのかもしれないが、とにかく自宅の庭から向うの丘の中腹で横たわっている、かろうじて牛と見分けられるサイズの白黒の物体を指差してそういうのだから、「は〜、そうですか」と頷くしかない。

 

午後の明るい光を取り入れて眼下に広がる農地を見渡せてるオープンデッキでは、友達が三々五々に持ってきた手料理の名古屋風チキン、手作りののりまきおにぎり、昨日獲って来たウニやカニが並ぶ。

 

こちらのパーティでは「お呼ばれ」は一皿が基本。けど料理の役に立たない男はワイン一本かビール6パックである。

 

オープンデッキの片隅では炭火で焼くBBQ、反対側では日本人が何十人も三々五々に固まって、クーラーボックスに入ったビールやワインを楽しんでいる。

 

車で来ているのだ、お酒を飲んでよいわけがない(笑)。だからビールかワインを飲む人は、今日の行きの運転手。幸運なことに帰りの運転を奥さんにお願い出来る旦那さんなのだ。

 

奥さんたちは熱い日差しを避けて部屋の中でこれもまた三々五々と固まってハーブティーやおしゃべりを楽しんでいる。「あら、これは奥さんが作ったの?すごい!ねえねえレシピ教えてくださいな」、「勿論喜んで!メールアドレス教えてくださいな、後でお送りしますわ」

 

100年経っても女性は変わらない。変わったのは通信手段だけだ。

 

変わらないのは男性も同じで、集まって話すことと言えば「最近どうでっか〜?」、「ぼちぼちでんな〜」とか「ほら、あの入り口に置いてたビンテージカー、誰んかな、えれー格好いいよね」とかである。

 

100年以上前にこの土地を切り開いた人々は、今その土地で日本人が牧場を経営しているのを見てどう感じるだろうか。

 

「新移民さん、こんにちは。農業は大変だけど遣り甲斐あるよ。頑張ってね」そういってくれてるかな。

 

電気が通り水道水が使えて、ましてや電話や高速インターネットの設備まで整った大きな農家は、すでに日本人のイメージする暗い農家ではない。

 

けど、間違いなく農家だし、間違いなくニュージーランドを支える基幹産業であるのだ。

 

農業が暗いとかダサいとかで、日本ではクビを切られた派遣社員でも行きたがらないような環境らしいが、ニュージーランドでは立派な社会的地位を持つ仕事である。

 

例えて言えば戦後すぐに新日鉄で働いて「鉄は国家である」と誇ってた人々のようなもんだ。力仕事だし汗かいて大変だけど、自分たちの仕事に誇りを持てるのだ。

 

今の日本で誇れる産業ってあるのかな?

 

僕は今年ニュージーランドの海や大地で作られたPureNZの食品を売っていく予定である。

 

販売方法は、出来る限り生産者と消費者の直結であるため、これはインターネットを使った通販形式になる。

 

安心で安全、顔の見える生産者と農場から直接購入した食品を、直接消費者の食卓に送る。

 

生産者は「食べて頂きたいな」と思い、消費者は「分けて頂く」と言う気持ちで、お互いが対等の立場で農業を語っていければと考えている。お金は媒体でしかない。大事なのは気持ち。

 

今の日本では生産者が叩かれ消費者が騙され、儲かっているのは中間で搾取している会社のみだ。

 

それは生産者情報が消費者に伝わらないし、消費者の要求に生産者が応えられないというお互いの情報格差に問題があった。

 

しかしインターネットの発達と物流手段の発達により、この二つの壁は壊れた。僕らはもう、嘘を言う中間搾取会社は不要なのだ。

 

「こんにちは消費者さん」、「始めまして生産者さん」、両者がついに直接手を結べる時代がやってきた。



tom_eastwind at 00:11│Comments(0)TrackBack(0)

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