2009年01月30日

脱出記 The Long walk

脱出記―シベリアからインドまで歩いた男たち (ヴィレッジブックス)
脱出記―シベリアからインドまで歩いた男たち (ヴィレッジブックス)
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第二次世界大戦の最中にソビエト軍に捕まりシベリア捕虜収容所送りになった著者が、シベリアから仲間と共に脱出し南へ南へと下り、つりにインドまで歩き続けていくノンフィクション物語。

 

最初はシベリアの原野にぽつんと建つソビエト捕虜収容所からの脱走。

 

そして普通では人間が生きていけないような環境のシベリアを縦断する。

 

次に越えるのは砂と土と灼熱の太陽しかないモンゴルのゴビ砂漠。飢えと渇きに苦しみながら縦断する。

 

最後は雪と岩で覆われた世界最高峰のヒマラヤ山脈を一本の古びた斧とナイフ、それに短いロープだけでまともな防寒具も無いままに真冬に縦断する。

 

殆ど何の装備も食料も水もなく約1年の脱出行で5千キロを歩き続けた人々の物語で、最初に出版された1956年から現在まで約50年間も読み続けられている。

 

まさに事実は小説よりも奇なりを地でいく様な物語だし、これがもし冒険小説だったらこんなストーリーは最初から誰もバカらしくて信用出来なくて小説としては絶対に売れないだろう。

 

だって世界の秘境ですぜ。シベリア、ゴビ砂漠、ヒマラヤ山脈と縦断するって、書けば簡単ですけどその距離だけで北海道から鹿児島まで縦断してもいっぺん北海道に戻ってそれからも一度東京まで戻る距離ですぜ。

 

冒険小説のように銃がバンバン撃たれるわけではなく、むしろ一つ見方を変えれば大自然探検のような感じさえもてるけど、でも実際はソビエト軍からの逃避行。

 

これはもう、人間の限界を超えたフィクションだけど、いや、それにしてもすごい。人間はここまで出来るんだって思うと、何だか「大丈夫だよ、いけるよ」と優しく背中を押された気になるから不思議なものだ。

 

本って素晴らしいですね。

 

 



tom_eastwind at 22:52│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 | 最近読んだ本 

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