2009年02月03日

マリアージュ

878fc66a.JPG

僕は外国に住んでるけど英語はネイティブではない。

 

子供の頃から徹底的な「使えない英語」を学ばされてきたので、発音、表現共にネイティブと比較したら話にならない。

 

 

それでも何とかついていけてるのは日本語で色んな事象について学んだベースがあるからだ。

 

エンジンブルブル、ノーゴーゴー、である(笑)。

 

その点うちの竜馬君などは頭は悪いのに英語はうまい。少ない語彙の中で最適な言葉を見つけて喋ってる。うらやましいな。

 

そんな生活をしているからかもしれないけど、やっぱり日本語を大事にしたいし、日本語で表現できるものは出来るだけ日本語で表現をしようと思っている。

 

最近よく日本出張で耳にする言葉の一つがマリアージュ。レストランでもホテルでもデパートでも良く使われている言葉。

 

**

マリアージュとは、フランスで”結婚”を意味し、理想的な結婚生活のようにお互いを
一層高め合うという意味からワインと料理の組み合わせに対して用いられる。

一般的に軽い料理には白ワインや軽口の赤ワイン、重めの料理にはしっかりとしたワインが
合うとされている。

**

 

なるほど、最初はフランス語で結婚の意味だったのがそのうち相乗効果を意味するようになりそれがレストランで使われるようになって、日本に渡ってきたときに女性誌の編集者に「使いやすい新しい言葉」として認識されたのだろう。

 

要するに、お互いに単体では得られなかったものを自分が持つものと相手が持つものを共有または交換することで今までにはない新しい価値が生み出せると。

 

それなら他に例えば共有の意味なら「出会いの美しさ」とか「めぐり合いの素晴らしさ」とか「重なり合う妙」とか、堅く言えば「相乗効果」、英語好きには「シナジー効果(これも疑問・日本語がちゃんとあるのにね)」とか、交換の意味なら「パチンコと玉のマリアージュ」など色々と表現方法もあるのだけど。

 

いったんこうなると日本人の極端な性格だから、そしてどんな機会でも販売に結び付けたいから何でもかんでもマリアージュだ。

 

帽子と服のマリアージュ、紅茶とケーキのマリアージュ、素敵なお二人のホテル披露宴マリアージュ。

 

これくらいならまだしも、そのうち焼きたての焼鳥と冷えたビールのマリアージュ、いも焼酎とモツ煮込みのマリアージュ、あげくにはレストランの今日の昼定食「男にとって夢に見た!焼きソバと目玉焼き2個のマリアージュ!」なんてさ。

 

やってる本人からすれば日本語を少しづつ壊しているなんて認識はない、自分が望んだ最高のファッション職場で高級女性誌を作って毎週締め切りで真夜中まで働いてるんだから、そりゃ自分がキャリアウーマンってドーパミンが出まくって楽しいんだろ。などとついつい思ってしまう。

 

考えて見れば毎日忙しくてゆっくり考えてる時間がない人がついついお手頃のネタで済ませよう、ましてやそれが使いやすければと、それが日本語全体を少しづつ低下させることは考えもせずに使うのだろう。

 

けど海外に住んで日本語をベースにしている人間からすれば、このようなヨコモジの使い方はどうなんかと思う。

 

夜遅く、それも終電近くの時間、駅を出た帰宅途中に夜食を買いにコンビニに寄った若い女性がファッション雑誌を手にとる。

 

表紙に映る綺麗な写真を見て「マリアージュ」なんて言葉が目に入ると、その美しい響に賛美のため息をつきながら、今自分が夜遅くまで安月給で働いている状態を見比べて、言葉だけでも“マリアージュ”って使いたくなるんだろうな。

 

だから、作る側の女性にも自分の雇用確保や時間節約という理由があるし使う側の女性にもそれなりのストレス解消になるのだから、被害者がいないではないか、だから犯罪ではないぞとも言える。

 

キャバクラで彼女が商売道具として“あなたとマリアージュ!”と言って、それを真に受けたフランス語学者が結婚を迫り拒否されたので包丁で刺したら、これはフランス語学者の犯罪であり、この言葉を生み出した製作者の罪ではない。

 

日本文化をどうこう言う人がいるが、突き詰めていけば日本文化は日本語によって存在している。

 

例えば日本人は世界中どこの国に行ってもその国の文化や習慣を尊重して溶け込む。その結果子供は日本語を使わなくなり、彼らにとって日本人と言うアイデンティティは消滅する。

 

中国はその正反対で、海外に出た華僑は何世代経っても母国の言葉を忘れない。

 

マリアージュ(笑)

  

 



tom_eastwind at 18:24│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 | 日本ニュース

トラックバックURL

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔