2009年04月21日

特別に

キャリーバッグの取っ手がもげてる!

 

成田空港に到着してオークランドで預けた4個の荷物を集めてたら、服を入れたてソフトバッグには何もなかったのだけど、ぼくが5年くらい愛用しているキャリーバッグの取っ手が、かなり強烈な力でもぎ取られてた・・・。

 

こんなん初めてだぞ。一体どんな荷物輸送しているのか分からんが、とにかくオークランドでは荷物の扱いがぞんざいである。雨が降ってても普通に機外に放置するんだもんね。

 

おまけにこのカバン、すでに底の方のジッパーのあたり2箇所をかぎ裂きされたのは数年前のことだ。

 

こりゃもう再起不能かな、このカバン。

 

一応キャセイ航空のカウンターに持って言って、まずは冷静に伝える。

 

「すみません、預けたカバンの取っ手が全部もげてて、取っ手自体が紛失しているんですけど」

 

そう言った僕に対して受付の女性は一応「ああ、そうですか、どのような状況でしょうか、ちょっと拝見させてください」と丁寧な言葉使いながら、その底には「知るかい、預けたお前の問題だろ」ってのがちら見えだった。

 

これは彼らもマニュアルに従って話をしているわけで、カバンの取っ手の一つくらいでいちいち相手にしてられないのも分かる。

 

けどまあこっちからすれば長年の付き合いのカバンである。

 

一年で60回くらい飛行機に乗るわけで、5年も付き合ってくれたカバンなんだから、やっぱり一応航空会社にはクレームをしておきたい。どうなるか分からないけど、長年付き合ってくれたカバンの為にきちんと一言言わないと、やっぱり冷たい男ってなるでしょ。カネがどうこうではない、付き合いの部分でやっぱり一言ってなるのだ。これは仕方ないけど今後どうするのって部分。

 

さてどうなるかと思ってたら、最初は「あ、取っ手は免責ですから、うちは知りません」的な返事。

 

おいおい、ここの部分がいつから免責になったのか知らんが、そんな言い方はないだろうがよ。

 

これをお前が修理しろって言うよりも、今後はこうしますからみたいな前向きな話を期待していたのに、彼女の答えは正反対。

 

おおい、そりゃあ今の時代クレーマーは多いだろうよ。けどこっちはキャセイに何年乗っているか記録を見れば分かるでしょ。今までヘンなクレームした事がないのも分かってるでしょ。ブラックリストに名前がないんだから。

 

だから少なくともこっちの話を聞いて欲しい、その上でニュージーランドから香港区間での荷物の扱いについては注意を促してくなどの建設的なお話をしたいでしょう。

 

そのあたりから僕は少し腹が立ち、受付の彼女に対してこちらの意見を説明した。僕は切れると急に冷静になり、いきなり1秒前には考えもしなかった論点整理が頭の中で出来て、それが機関銃のように口から飛び出していくのだ。

 

これ、特技というのはヘンかもしれんけど、その時はとにかくこちらの言いたいことを説明した。

 

それが2分も続いた頃、彼女は突然「はい、ではちょっと上司に確認を取って〜云々」と言う話になった。

 

そして上司に電話を入れて指示を受けて電話を切り、こちらを振り向いた顔は笑み満々で「はい、では本来はダメなんですけど今回は特別に修理出来るように手配をいたします」だって。

 

これで僕は切れた。

 

そうではないのだ。僕だけ特別扱いをしてくれなんて言ってない。大体ぼくだって旅行屋で30年飯を食っている。カバンが壊れることもあるだろうし、それにいちいち航空会社が付き合っていられないのも分かっている。

 

しかし今回の事件はオークランドから東京の間のどこかで民度の低い人間が行った人的災害であると考えている。

 

そして僕が言いたいことは「お前、修理しろ!」ではない。あくまでもこれを機会に民度の低い連中がどこかにいるわけで、それへの対応をしてくれ、その結果このような事が起こらないようにしてくれと言うのが依頼の趣旨である。

 

ところがそれに対して「じゃあんただけ特別にね」なんて、じゃあナンだ、大きな声を出せば良いのか?じゃあ声を出せない人は泣き寝入りなのか???

 

そうではないだろう、制度としてきちんとやるべきであり、キャセイとしてシステムを考えることで乗客の利便を図るべきだろう。

 

長いものには巻かれろなのか?無理を通せば理屈が引っ込むとでもなるのか?

 

要するに社内ルールとか航空約款ではないのだ。お互いに利用者と企業が意見交換することで成長しようと言ってるのに、こっちを一方的にクレーマーとして声が大きいからこいつの言うことは聞こうというのでは、そりゃ違うでしょと言いたい。

 

僕は、自分の声が大きいからと特別扱いされたくないのだ。

 

僕がお願いしているのは「特別扱い」ではないのだ。僕の言ってることの理を認めて欲しいのだ。それこそ僕が子供の頃から思っていたことなのだ。

 

かなり頭に来たので、彼女に対しては「悪いけどあなたの話は理解出来ないし、あなたが私の話を理解出来てないのもよく分かる。あなたが連絡を取っている上司を呼んでくれ」とお願い?した。

 

びっくり顔の彼女は「はい!」と返事して上司に連絡を取りつつ、何かを期待するような顔で「あのすみません、責任者はあと20分くらいしないと戻って来れないほど遠くにいるのですが」と言う。

 

成田から早いとこ都内に入りたいだろ、このヘンで「すっこみな」、そんな背景がみえちゃんである。

 

こっちはこの後アポはない。1時間でも待てる。「そこの椅子に座って待ってますから、責任者の方が来たら声をかけてください」と言うと、彼女はこれまたびっくり!と言う顔で「はい、少々お待ちください」と電話に戻った。

 

椅子に座って5分もすると、遠くにいた顧客担当課長さんが名刺を持ってやってきた。なるほど、遠くというのは成田ではこういう使い方をするんだな、そう思いながら僕は彼の顔を見た。

 

一目見た瞬間に分かった。こいつ、プロだ。国際線で長いこと世界中の人種相手に渡り歩いてるな、それが分かった。

 

少し緩いお詫び顔と、相手を見極めるような軽い笑顔でこちらに近づいて来た彼、勿論最初はお詫びをするのだが、お詫びをしながら下からこっちをじっと見てる。

 

「こいつ、何か偉そうな事言ってるけど、何を要求してくるんだ」まさにそんな顔。

 

「てか、その辺のタコなら潰すぞ」って感じもあるから、おお、やるじゃんかって感じ。

 

ぼくはまず最初に

「カバンが壊れた件でぼくは一円もあなたに請求するつもりはないし、預けたぼくもバカだったからその事は言わない。けどオークランドから成田の間での荷物に関するトラブルはこれが初めてではない」

 

「特にオークランドから香港、おそらく僕の勘で言えばオークランドのスタッフがカバンの取り扱いが杜撰すぎると感じている。なので、あなたからその事をしっかり本社に連絡を入れて欲しい。そして今後こんな事がないように充分注意して欲しい」と伝えた。

 

ちょっとちょび髭を生やしたおじさん、お洒落な眼鏡をちょっと持ち上げながら「お、クレームではないのか。なるほど、これなら話し合いの余地があるな」と読んだみたいで話し始めた。

 

「いやいや、このカバン、こちらで修理をしますよ。それにオークランドにも連絡をして、こんなことがあったって伝えます」だって。腹の中で落としどころが見えたのだろう、うれしそうなのが眼に見える。

 

僕はそれに対して、dandan怒っている自分が馬鹿らしくなってきた。というのが、僕の目の前にいる彼はどうやら同業者なのだ。怒りもすっと引いてしまい、思わず苦笑しながら、

「あのですね〜、ほんっと、オークランドは酷いんっすよ。こんな事でもないと彼らに文句を言う機会もないと思うから、このあたりできちっととっちめてやってくださいよ」と、後半は笑顔で話しになった。

 

彼もこっちの意図を理解したのだろう、「はい、オークランドの荷物の取り扱いについては、きちっと次回の会議で話しますよ、そこは安心してください」と真面目な顔で返事をしてくれた。

 

ちょっとした事なんだけど、一体相手が何を望んでいるのか、それを聞くべきかどうかって判断は、最終的にはどれだけ色んな状況を潜り抜けてきたかどうかなんだろうなって思った。

 

先日のコンビニの話もそうだけど、キャセイ航空の受付の子もそれなりに頑張っているんだろうけど、やはり決定的に不足しているのは、修羅場をくぐった経験だろう。

 

マニュアルで処理出来るほど世の中は甘くないし、処世術にマニュアルは存在しない。

 

交渉の時は、相手の顔を見ながら相手の気持ちを読み取り、そして相手の話す内容に理があるかどうかを考えるのが最初だ。

 

マニュアルをいきなり出してしまえば、それで弾切れですぜ。

 

結局僕は取っ手の壊れたカバンを引っ張りながら成田リムジンバスに乗り込んだ。片道3千円、2時間の旅で定宿に到着である。

 

ふー、シャワーを浴びて行き付けのバーに顔を出す。今日はもう食欲なし。



tom_eastwind at 01:05│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 | 日本

トラックバックURL

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔