2009年05月16日

激突!

それはまるで車を使ったチームレースの様相だったと言えば一番近いか。

 

土曜日の午前中にアルバニーのスイミングスクールを終わらせたりょうまくんと僕との二人は、昼ちょっと前にNorthern HighwayからWestern Highwayに入り、St Lukesに向かった。

 

この日は以前から約束していたWarhammerの戦車を買う日だ。戦車と言っても本物ではなく、WarhammerというNZで人気のゲームで使うプラモデルだ。

 

このノーザンハイウェイからウエスタンハイウェイに入る直通の道は以前はなくて、一旦下の道に降りてから再度ハイウェイに入ってた。けどここ数年の高速道路整備のおかげで、今では北のノースショアから西のヘンダーソンまで乗り換えなしでハイウェイを使える。

 

久しぶりに天気も良く、車もあまり多くないので結構すいすいとウエスタンハイウェイに乗れた。

 

僕らの目的地であるセントルークスは(StってのはSaintの略)ウエスタンハイウェイの最初の降り口になる。

 

ハイウェイに入って5分もすると、「あと1.5kmで出口ですよ」ってサインを見て、車を左側の車線に寄せていく。

 

すると普段はそんなに混雑していない出口が、遠くからでも渋滞しているのが見えた。この出口は上り坂になってて、日本と違って高速道路と言っても無料なので出口の支払いで込み合っているわけではない、その先にある信号待ちの車が並んでいるのだ。

 

けどこの日は天気が良かったせいかもしれないけど、渋滞が高速道路まで延びている。

 

へ〜、こんなの珍しいな。

 

けどこの渋滞、実は団子になってどんどん前に進んでいるのだ。要するに全然車間距離なしで時速50kmくらいで前進しているのだ。

 

すると団子状態からまるで弾けるように3台くらいの車が右に飛び出してきた。それはのろのろと運転してて渋滞に疲れた車が他の出口を探す為に出るってんじゃなくて、本当に弾け出された感じ。

 

そうこうするうちにこっちも渋滞の最後の方に近づいて来た。

 

車線を確認して一番左に入ってと、、そこで前方の車を確認してっと。

 

ここまでは何の問題もない普通の作業だった。

 

ところがこの渋滞の行列、一旦入ってしまうと思ってる以上にスピードが出てる。それまで時速100kmの制限速度で走ってたのだけど、この渋滞も実は80kmくらいなのだ!

 

普通なら渋滞だから速度が落ちるんだろうけど、弾け出た車の分だけ車間距離が開いたのか、どの車も速度を落とさない。

 

これって思い切りやばくないか??いつものStLukesと違うぞ、こりゃ車間距離とらなきゃ、そう思った瞬間、やっぱり僕の前を走る車が思いっきり急ブレーキをかけてきた。

 

要するに一番先頭の車の先は信号待ちの車なので止まるしかないのに、全員で高速で突っ走っていたのだから、先頭がブレーキを踏むと後続は次々とブレーキを踏む。

 

それが後ろになるに連れてどんどん車間距離が狭くなり、それが僕の目の前の車の急ブレーキになったのだ。

 

右足でペダルを叩きつけたようなブレーキだから、車の前部が思い切り沈み込む。運転してた白人中年女性の両手がこわばって背中が突っ張るのが座席越しに見える。

 

こっちも何も考えずにブレーキを叩き込む。ぎぎぎ!と音を立てる車、右目で前方の車の動きを見ながら次に右にハンドルを切るか左に切るか考える余裕もないまま、左目でルームミラー越しに後続車を見る。

 

後続車を運転しているのは30代半ばの白人男性。上品そうな黒いサングラスをつけて、カールしてる金髪を小奇麗にまとめて、これまた小奇麗な白いTシャツを着てる。

 

その彼が思わず引きつったような顔でこちらの車を見つめる。助手席で坐ってる若い女性の体が強張って顔が引きつるのが見える。

 

こんな時によくもそんな顔まで見えるものだ、本当に危ないときは逆にすべてがスローモーションになるってのはこれかと思った。

 

ぎぎぎ!後続車も思いっきりブレーキを踏み込む。

 

その間に前方の車はスピン寸前で車を右に振り、すぐその後に左に振りなおしながら何とかスピードを殺して直進する。

 

けどこっちはそんな余裕はない。踏み込んだブレーキを軽く外すと同時にハンドルを左に切って再度ブレーキを踏み込む。ポンピングブレーキの感覚だ。

 

雨が降ってなかったのが幸いで、何とかスリップせずにハンドルを少し右に戻して、要するに逆ハンみたいな状態。

 

後続の車の運転手はまるで映画を見るようなシーンだった。

 

目の前にぐんぐん近づくぼくの車を視野に入れながら首を右に振り左に振り、どっちに飛び出るかを一瞬の間に判断してちらっと首を右に傾けると同時にハンドルを大きく右に切った。それこそ、どびゅーんと言う感じで僕の車の右横をぎりぎりの間隔で飛び越していった。

 

ぼくは車を滑らせながら時々左右にハンドルを振ってスピードを殺す。

 

ところが後続車のすぐ後の車もまた同じようにこっちに突っ込んでくる。

 

おわ!前の車とぎりぎりのところで一緒に横滑りしているのに、また後ろから来るのかよ!

 

ルームミラー越しに運転している白人女性の引きつってる顔を見ながら、おおい、これ以上近づく前にはやいところブレーキ踏めよ〜!と心の中でお願いした。

 

すると願いが通じたのか、女性の車の前方がぐぐっと沈み込む。よっしゃ!ブレーキ踏んでる!

 

最初に渋滞を見てから団子に巻き込まれていくまで恐らく10秒くらい。そして団子に巻き込まれてからここまでは3秒もなかっただろう。

 

その間に右目は前方の車を見て左目は後続車を見て右足は思いっきりブレーキを踏み込んで両手はハンドルをぎりぎりのところで操作してて、ほう、人間って同時にいろんな動きが出来るんだとか脳みそが考えている。

 

左に切った僕の車はぎりぎりのところで右にハンドルを切った前方の車の後ろをすり抜け、僕の右横を弾けるように飛び出した後続車はずっと前方に走りぬけ、後方の車はなんとかスピードを制御して速度を落としていった。

 

そうこうするうちに、とは言っても5秒程度しかなかったのだろうけど、やっと団子状態になった車列が前部同時にスピードを落として、何とかそのまま団子を続けて走り続けていった。

 

ふ〜、こんなの、人生で何度経験するんだ?人は一瞬の間にいろんなことを同時に出来るし見ることが出来るんだなって思い、横にいるりょうまくんをちらっと見ると、ひざの上に広げた模型の本をずっと読んでた。

 

その10秒後には車列は何もなかったようにゆっくりと前方の信号に向かって走っていった。

 

「ねえりょうま、いまお父さんたちの車がすんごいことになってたの見てた?」

思わずそう聞くとりょうまはけろっとした顔で

「うん、知ってたよ、びっくりしたね〜」と、何事もなかったように言う。

 

う〜ん、これってナンじゃ?

 

落ち着いてから思ったのは、もしこの車列の中に一人でも運転の初心者とか全然前を見ない中国人のおばちゃんとかいたら、もう全員団子で終わってただろうなってこと。

 

ほんと、こんな時には白人の運転のうまさを感心するしかない。

 

子供の頃からハンドルを握っているってだけじゃなく、突発事故に対しての瞬発力が優れているってのか、要するに理屈ではなくて体が先に反応しているんだよね。

 

全員が一瞬の間に全部を見渡して一瞬の間に判断して即座に行動する。それが全員揃ってたから何とか無事に事故を免れた。

 

後続の女性の車もその頃は落ち着いてて、しきりにこっちに眼をこらしながら、けど結構ほっとした顔で車を運転している。

 

う〜ん、もともと車間距離を完全に読み違えた団子状態に問題があるんだろうけど、そこでふと気づいた。あ、そういえばさっき前方で見た団子から車が弾かれたように飛び出したのも、こっちと同じ状態だったんではないか?

 

スピードを落としたりょうまと僕はそのまま左折してStlukesに向かい、そこの駐車場で久々に晴れた天気なので車を洗車に預けた。

 

「今日は久々の晴れですんごい込み合っててさ、悪いけど1時間くらい後になるよ」

 

そういうインド系のお兄ちゃんに「大丈夫、今日は時間はたっぷりあるよ」と返して、ぼくとりょうまくんはそのままWarhammerに買い物に行き、たっぷりの手荷物を抱えてフードコートのKFCでお昼ご飯をゆっくりと食べた。

 

いやいや、それにしても人生、一瞬先は何が起こるかわかりませんね。



tom_eastwind at 13:49│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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