2009年06月16日

からっぽのハコ

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成田・羽田の国際線拡大、年9800億円の経済効果 国交省試算

 

 国土交通省は12日、2010年からの成田空港と羽田空港の国際線拡大について、年9804億円の経済波及効果をもたらすとの試算をまとめた。

 

成田・羽田の国際機能拡充に関する懇談会で提示した。訪日する外国人が増え、消費などが拡大するとみている。

 

 滑走路の延長や新設で、10年から成田・羽田の国際線が増える。運用が軌道に乗る11年度には、国際線の発着回数が07年度に比べ、成田で2万回、羽田で5万回増える予定だ。

 

 その結果、訪日する外国人が年219万人、海外に渡航する日本人が年387万人増えるとみている。訪日外国人と海外渡航者の消費額は計4100億円増加すると試算した。(12 22:01)

 

 

旅行取扱額、4月は14%減 6年ぶりの落ち込み

 観光庁が12日発表した4月の主要旅行会社62社の取扱額は、前年同月比14.5%減の40929700万円だった。前年実績割れは9カ月連続。減少率はイラク戦争や重症急性呼吸器症候群(SARS)の影響などで落ち込んだ2003年6月の19.4%以来の大きさとなった。景気後退を受け、国内、海外とも落ち込んだ。

 

 海外旅行は18.4%減の14761600万円だった。マイナスは11カ月連続。消費者の旅行意欲が冷え込んでいるうえ、韓国などの近場を選ぶ人が増えているのも一因という。国内旅行は11.8%減の25624300万円で、6カ月連続のマイナス。訪日した外国人の旅行は23.2%減の543700万円だった。(12日 17:36)

★抜粋終了

 

両方とも同日の日経の記事。空港を作れば客が増えるのか?現実に旅行業では次々と対前年を割るような危機的状況なのに、ハコを広げただけでどうにかなるわけ、ないじゃん。

 

羽田と成田の関係も明確ではない。今後の国際線をどう扱うかが不明なまま、中部や関空、成田で減便が続いている。

 

日本とニュージーランドの路線も、多いときは福岡・関空・中部・成田とあったのに、福岡と中部は完全に廃止、関空は大幅間引き、成田も間引きと機材の小型化と、要するに役所の言ってる事と正反対のことが現実には起こっているわけだ。

 

これは別にニュージーランド路線だけではなく、豪州線も同じだ。日本向けの格安路線が運行停止になったりと、とにかく旅行・航空業界では良い話がない。

 

また国内地方路線は近くに二つも空港があるのに3つ目を作った神戸空港や、中部でも羽田でも成田でも使えるのに静岡空港のように黒字化の目処もないままに作られたりしてる。けどその赤字は結局税金で賄われるのだ。

 

地方のいう事は決まっている。「地域住民の要請だし利便の為に必要だ」

 

だったら極端な話、一家に一つ空港作れというようなものだ。でもそんな事出来るわけがない。

 

だから日本を全体的に見て最適な場所に置くのが空港行政だし、その為に不便になる地方には我慢してもらうしかない。その代わり貴方たちには空港の騒音に悩まされなくても良いという利点もある。

 

だいいち、神戸にしても佐賀空港にしても、誰が使いたいと思うのか?要するに土建利権などと同じで、本当の意味での地域住民の意思は生かされていない。一部の声の大きい人間に行政が負けて便宜供与をしているようなものだ。けど何度も言うがそれは国民や地域住民の税金で賄っているのだ。

 

大事なことは、飛んで行く先(目的地)が高い運賃を払うだけの価値があるのかどうかって事。空港がきれいだからと飛行機に乗るのは航空マニアだけだし、中部国際空港に風呂があるからって、高い駐車料金を払って風呂に入る奴はいない。

 

中部国際空港が出来たのはトヨタがあるからだ。全日空の中国路線がここ数年好景気だったのも、日本と中国の取引が広がったからだ。

 

一つまたは二つの点に魅力があるときに、それを結ぶ線が出来る。線が先ではない。

 

勿論東京には世界的な魅力がある。では国民的視点から見て何故最初から羽田一本で拡張しなかったか?または霞ヶ関を再利用する方法もあった。そこに利便よりも利権のみを考えた千葉県出身の自民党の政治屋の利権が絡んだから山の中の田んぼを潰して成田空港が出来て、そこで野菜を売っているという奇妙な景色が出てくるのだ。

 

だから何をやるにしても折角民間がまともな感覚でやろうとしている時に政治が出てきて変な方向になるのが日本の問題点であり、空港に限ったことではない。

 

航空業界は以前は完全規制業界であり、国際線はJAL、国内幹線はANA、国内地方線はTDA(東亜国内航空)と割り振られていた。

 

当時は航空行政も政治家の票田に利用されていたから、田舎の議員が風呂敷抱えて霞ヶ関にやって来て「おらが村に空港作ってくんろ」となり、政治家は票が欲しいので運輸省を恫喝する。

 

それで赤字路線を抱えるのは航空会社だけど、彼らだって独占している幹線で利益を出して赤字の地方路線を支える方式が続いてきた。

 

もし本当に赤字が膨らめば、そこは幹線運賃の値上げを運輸省がやってくれるのだからこんなうまい商売はないね。

 

ところが世界は航空自由化への道を歩む。そうなるとお役所体質のJALは真っ先に大赤字を出して組合問題も発生して、遂にはTDAと合併したり路線撤退したりと、あっという間に鶴のマークは世界でその存在感を失った。

 

航空自由化になるとどこの航空会社も利益を出さないといけないから、今度は地方の赤字路線をばさばさと切り捨てていき、地域住民の要請なんて本音では何も考えてないのがよく分かる。

 

航空会社の人間からすれば、地方出身の「おらが村にカネを持ってきてくれる政治家」に頭を下げて赤字路線を作ってれば政治家に気に入られて出世するような気楽な航空会社勤めが可能だったから、自分の腹が痛むわけでもないので路線を作り、航空自由化で利益が問題になれば今度は赤字路線の住民なんてどうでもいいからバンバンと路線を叩ききる。

 

そうしないと自分の首がバンバンと飛ぶからね。結局役人体質の航空会社は役人の延長的な存在であり、世界の航空行政の中で日本がどうあるべきかなんて話が出るわけもない。

 

ゼロ戦結局国家としての大局観が全く存在しないのが日本の航空行政。てか、昔の国鉄も同じで、政治家が地図の上に線を引くとそこに線路が出来たってのは有名な話。

 

要するに誰も彼も国家の話はせずに、自分の目先の話だけで終わっている。だって国家が鎖国状態であれば最大のパイは国家であり、だからその中で利権を獲ればよかった。

 

けど国境がなくなり世界が最大のパイとなった現在、日本は世界によって食われ始めている。

 

国策アジアハブ空港として香港、シンガポールなど東南アジアの大手空港が次々とサービスを増やして利便性を追求して拡張を続けている。彼らはすでに世界の国境がなくなったことを理解しており、ハブになることで利用客を大幅に増やせる。

 

けどハブの端っこのスポークになってしまえば成田はアジア地域の端っこの一空港としての扱いしかなくなり、成田で乗り継ぐのはリムジンバスかJR、行き着く先はおらが村と言うことになる。そんな空港、誰が使う?

 

少子化や格差が進み若者が海外に興味を持たなくなり毎日の生活にしか眼が行かない現状で、これから先を見ても乗客が増えるような明るい未来はない。

 

戦前戦中にわたってパイロットだった人々が民間航空会社に再就職していう事の一つに「戦前の空港の方が使いやすい。風の流れや地形をよく考えてた」と言う。そりゃそうだ、今よりは利権よりも国益が優先していた時代だったからだ。

 

中島飛行機また戦前の日本ではゼロ戦など名機があったが、戦後日本の航空機製造産業は米国によって徹底的に潰されて、やっと最近になって小型ジェット開発が出来るようになったという屈辱的な事実も有名な話である。

 

 

航空会社、旅行産業、ともに50年に1度の変化である。ここで道を過てば、確実に業界は崩壊して、世界中から「うまいように食い物にされる」だけだ。

 

「成田は東アジアの地方の不便な空港で東京にも遠いし海外にも都合の良い乗継便がなくて不便なんだよね、だから会議は香港でやろう」となる時代は、もう来ている。



tom_eastwind at 11:12│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 | 日本ニュース

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