2009年06月21日

海底からの生還

海底からの生還 ピーター・マース

 

超簡単に言えば第二次世界大戦前夜に米国近海で沈没した潜水艦から乗員救助をする物語。

 

前半は実に良くできてる。構成のうまさ、バランスの良さ、まさに時間と共に自分がそこにいるような臨場感を与えてくれる演出である。

 

これを買う理由になった本は「脱出記」と一緒に評価されていたから。ちなみにヒマラヤの雪男はこの「脱出記」によって世界に広く紹介された。

 

海底からの生還―史上最大の潜水艦救出作戦 (海外ヒューマン・アドベンチャー・シリーズ)海底からの生還―史上最大の潜水艦救出作戦 (海外ヒューマン・アドベンチャー・シリーズ)
著者:ピーター マース
販売元:光文社
発売日:2001-08
おすすめ度:5.0
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でもってこの本の紹介のコラムで「これも面白いよ」って書かれてたので即amazonに注文したのだ。

 

でもって潜水艦。

 

2年ほど前にシドニーに行った時にそこに係留されている観光用の潜水艦に乗り込んだことがあるけど、ありゃあ狭いよね。

 

閉鎖された空間で撃沈されて、空気がなくなるまでじわじわと追いかぶさって来る死の恐怖。

 

時間との競争で沈没した潜水艦乗組員を救助しようとする海軍。

 

官僚的な仕組みが革命的な開発を排除するのは何時の世も同じだけど、それにめげずに自分の信念を貫いた人々。

 

潜水艦の中で少しでも生存時間を伸ばそうとする方法を考えながら救助を待つ乗組員。

 

これら関係のある人々の感情が見事に表現されており、それが過剰でないところがまた良い。

 

ただ、後半になると一気に話が変わる。

 

この潜水艦救助で有名になった人々が今度は潜水艦技術を使って太平洋で日本軍相手にウルフパックと呼ばれる潜水艦攻撃シフトを作り、これが見事功を奏して多くの日本軍輸送船を撃沈していったのだ。

 

その中には軍需品だけでなく離島に残された兵隊の食料、兵員補給に向う兵隊も乗っており、彼らはたった一発の弾を撃つ機会もないままに南洋の海に沈んだのだ。

 

もちろんこれは米国海軍の戦略の勝利である。本来なら「すげ〜な、プロの戦略家でもないのにこんな強力な攻撃力を開発して敵軍の船を次々と沈めたんだな」となる。

 

けど、ぼくにとってはあまりに近すぎた。自分の父親の従軍体験を直接聞いており、更に戦後発行された戦記などを読むと、米国海軍ウルフパックのあまりの正確無比さ、その強力なパワーに怒りさえ感じるのだ。

 

第三者ではいられない話である。これがウルフパックを仕切った潜水艦の艦長の話なら良い。彼らだって同じ海の中でリスクを取って戦ったのだから五分五分。

 

ところがこのウルフパックを作った連中と言うのは南洋の島や米国本土で毎日家族と楽しく過ごしながら敵軍の殲滅を企画して、自分はたった一歩も現場に足を踏み入れずに潜水艦戦略を指揮して多くの日本軍兵隊を南太平洋の海の中に沈めたのだ。

 

後半の太平洋戦争の話は、個人的にはかなりどこにもぶつけようのない気持ちがこみ上げてきた。こいつか!戦争だから仕方ないとは言いながら、やはり心の中の下の方ではどうしても「このやろ!」って気持ちが抜けない。

 

読み終わった今も、心の中の端っこの方にしこりがあるのが分かる。

 

上記は僕の個人的な感想であり、脱出小説とか米国のある種の戦記として冷静に読めば実によく出来た本である。

 

けど自宅の鴨居に爺さんの軍服姿の写真を飾っている、とくに九州出身の人にはあまりお勧め出来ません。「こいつか!」と思ったら、そのまま米国に爆弾落としたくなるような内容ですから。



tom_eastwind at 07:57│Comments(0)TrackBack(0) 最近読んだ本  | 諸行無常のビジネス日誌

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