2009年08月25日

真夏の島に咲く花は

「真夏の島に咲く花は」 垣根涼介

 

最近は移動がむちゃくちゃ多く、新聞やテレビ等全然観ているヒマはないし見る気もないけれど、本だけはあいも変わらず読んでいる。

 

今週読了した作品で「真夏の島に咲く花は」ってのは、こりゃ面白い。何が面白いかって、一般受けするとは思えないけど、テーマが「移住」なのである。

 

フィジーに移住して日本食レストランを経営する日本人の若者と、フィジー経済を実態として握っているインド系フィジアン少女とフィジー生まれのフィジアンの若者の物語。

 

3人の人生が実際にあったフィジーのクーデターをテーマに揺れ動き、更にここに日本から来たワークビザの旅行会社社員と中国人が絡むのだけどこれ、まさに今のニュージーランドでも言える。

 

軒を借りるという感覚のある日本人に対して、それを「甘い」と考えるインド人や中国人。

 

「結局楽園なんてないんだ、楽園ってのはみんなの笑顔の中にだけある」

 

まさにその通り。だから楽園は作るべきものであり守るものであり、決して「そこに行けばどうにかなる」ものではないのだ。

 

垣根涼介って移住したこともないのに、見事に地元民と移住者の気持ちを掴んでいるな。びっくりである。

 

元々彼の作品は「ワイルドソウル」から始まって“はまりっぱなし”!であるが、やっぱり凄い作者だ。

 

ぼくら日本人移住一世は、あくまでも軒を借りているのだ。二世になって初めて地元民と対等に喧嘩も会話も出来ると思う。

 

これを卑屈と思うか不合理と思うか。

 

確かに合理性とか私有権とか法律上で言えば誰もが平等であるべきだ。先住民だから例えばバスに乗るのも彼らが先なんて優先権などないはず。

 

けどさ、世の中はそれだけで出来ているんじゃないって現実を理解することが移住の基本であるってのも事実。

 

沖縄に移住した都会の人々が地元に迷惑をかけて付き合いが悪くなってるって話を聞く。

 

そりゃそうだろう、他人の気持ちを無視して相手の利益を「合法的に」踏みにじって得たものなど、一旦クーデターが起これば引っくり返る。そんなのは歴史が証明している。

 

第一法律ってのはその国の人々の感情に対して理論を後付けしているのだから元々きちんとした理論に基づいているものではない。だから一旦彼らが移住者に対して侵入者と言う認識になれば暴力沙汰になるのは目に見えている。

 

先に来た者が後から来た者を疎外する歴史は古くからある。マイケルチミノ監督の「天国の門」などまさに、白人同士での縄張り争いを描き、あまりに醜すぎて(事実過ぎて)自由を主張する米国人から排斥をされた経緯もある。

 

要するに先取権を主張するのは感情的であり醜いのだけど、人々、特に既得権益者にとっては醜くても守ろうとするものなのだ。

 

だから移住をするときにはどれだけ移住先の人々の気持ちを忖度するか、相手の利益を確保するかが成功する移住の基本である。

 

戦いは剣のみではなく、剣も含めた外交である。そして外交とは利害関係の調整である。そして利害関係は二国間だけではない場合が殆どであり、周辺国すべてを含めて考えたほうが長期的安定に繋がる。

 

これは国家間だけではなく個人の移住も全く同じである。海外に住む日本人が嫌われないのも、常に相手の立場と利益を考える人種だからと思う。

 

「真夏の夜に咲く花は」は、こりゃ良い。移住を考える人には是非とも読んでもらいたい、辛口の一冊である。

 

 真夏の島に咲く花は真夏の島に咲く花は
著者:垣根 涼介
販売元:講談社
発売日:2006-10-13
おすすめ度:4.0
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tom_eastwind at 17:08│Comments(0)TrackBack(0) 最近読んだ本  

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