2010年01月25日

ニュージーランドの税制改革

税金システムの見直し変更

 ニュージーランド国内の税金システムに関する見直し変更でTax Working Groupが20日に提案したレポートに対し、John Key首相は、土地税の導入は困難であること、賃貸不動産の税金構成問題は考慮していく必要があるが、土地税の導入は解決策だとは考えていないと話した。

 更に家族所有の住宅に対するキャピタルゲイン課税についても否定した。

 この提案レポートは税金のシステムを根本的に変更するものであり、個人や法人課税率のカット、消費税の引き上げや、土地税の導入などが含まれている。

 Key首相は、過去の税率が低かった時期の国民の状態を基に、個人課税率を引き下げることにより、脱税を試みる人達を減らし、更に国民が貯蓄する意欲を掻き立てるものだと話している。

社会 2010年1月22日

NZdaisukiからの転載。

これだけだと分かりにくいので整理すると、日本で言う政府税制調査会のような組織が税制の全般的な見直し提案を政府に行った内容の抜粋である。

1・消費税を現在の12.5%から15%に上げる。
2・所得税を現行から下げる。
3・土地取引に対する課税を行う(現在は土地取引は無税)。
4・最低賃金を1時間15ドルにする。

1と2はセットで提案されており、消費財を上げる事で国民全体から薄く広く税金を取る仕組みだ。所得税を下げるのは中所得層(年収6万ドル以下)及び高所得層に労働意欲が出てくる。

つまり見方を変えれば低所得者もきちんと最低の社会負担はしてね、潜在的な高収入層である中所得層の皆さん、社会を牽引してね、お金持ちの皆さん、ガイコクに逃げないでね、と言う解釈で大体合ってると思う。

3は土地取引で儲けるデベロッパーや不動産業者を見た一般市民が「おれたちの所得では住宅買えないのに、あいつらだけうまいことやりやがって」の部分を排除するのが目的。主に南島牧場主、労働組合のあたりから出てくる意見である。

内容はそのままジョン・キー首相が回答したとおり、頑張ろうとする人の意欲を奪う事はしませんよ、と言うメッセージである。

表面的には安定したニュージーランド政治である。先住民族であるマオリとも共生を図り、強力なセーフティネットを構築し、同時に就職支援制度を国家として持っており、北欧国家と同等の政治システムが出来上がっていると言って良い。

しかし政治の内側に入れば、日本ほどではないものの、利権団体が動き回っているのも事実である。

伝統的な利権団体と言えばマオリであり、最近もマオリ議員が白人に対して「ずいぶんと失礼な批難」を行ったことで記事になった。

働かなくても食っていける国から1000年ほど昔に移住して来て「蓄える」と言う発想がほぼゼロであり、なおかつ「君のものはぼくのもの」と言う原始共産制度を持つMAORIやアイランダーの人々は、たかだか200年以下の移住の歴史しか持たない、後から来た白人が所有する土地に柵を立てて「僕のモノは僕のもの」とする私有制度に対して本能的に「嫌だ」と感じている。

なので何か白人がやれば必ずマオリがケチをつけて、両者が納まるようにマオリ省やマオリ裁判所がその時代に応じて「資源の再配分」を行ってきた。

ちなみにマオリは土地取引課税には反対だ。何故なら彼らこそ先住民として土地を貸し付けて一番儲けているのだから。

今もこの図は基本的に変わらないが、最近このチキンレースに加わったのが「帰ってきた労働組合」とアジアからの新移住者である。

労働組合は元々この国では絶大な権力を持っており、もちろん義務はないからやり放題で、結局1970年代の大不況を招く大きな原因の一つとなった。これが1980年代の労働党による構造改革で労働組合の権利が次々と剥奪され、その後の国民党時代に完璧に息の根を止められて、組合役員の職場立ち入り禁止となったのだが、2000年代に入って労働党が復活すると、ヘレン・クラーク首相は元々労組が支持団体であり自分自身も労組に近かった為、組合が復権してきた。

この人々は国民全体の賃金引き上げを狙っており、伝統的に「資本対労働の対決」と言う視点でモノを考える。21世紀のように「共生」と言う発想は、あまりない。

だからとにかく4のように最低賃金を上げろとなるわけだ。でもってこの国では人々は非常に真面目であるから、一旦上げればほんとにきちんと払うし、貰うほうもきちんと要求する。日本のように「なあなあ」で終わる事がない。

だから結果として最低賃金引き上げは不況時には労働者の採用手控えと言うマイナス現象が発生するのだが、「労組の壁」の内側にいる人にはそのような現実の声は届かない。

John・Key首相は「現実としてそんな事やったら失業増えるよ」と言ってる。これに対して労組側は「いやいや、それは経営努力不足である、ちゃんと雇いなさい」と反論する。

けどこれにはちゃんと裏がある。労組の利益は既存組合員であり、彼らが儲かれば良いのだから未加入の組合員のことなんて考えてない。そして一旦企業が無理して雇うと、今度は彼らを組合員に加入させようとする。

なんのことはない、他人のふんどしで相撲を取ってるようなものだが、こういう「左翼系知識人」はテレビに出ると立派な事を言うから、ついつい平均的キーウィは「そうよね〜」と納得してしまう。

ここに加わったのがアジア人議員を含む新興勢力だ。国会でも着実に議席を増やしつつある中国系は、今は物静かに大人しく国民党政権と意見を一つにしている。

けれどすでに表面下ではウェリントンでは優秀な中国系議員(北京と直接のパイプを持つと言われている)が中国の利益代表として動いている。ニュージーランドと中国はすでにFTA協定を結んでおり、これから取引量の増加が予想される。日本?Nothingです。

こんな、いろんな人の利益がぶつかり合う税制改革であり、結論は見えない。

けどこの一年のJohn・Keyや他の議員を見ていると、政権側は自分の意思を貫いていきそうだ。つまり
土地取引課税は導入しない、
最低賃金はせいぜい1ドル前後の上昇、
消費税UPは比較的賛成、
個人所得税を下げる事はもちろん賛成。

この1年、野党側は次々と敵失(批難メール、違法出張費問題など)、国民党は自軍の適切な運営による得点(銀行預金保護、経済の迅速な回復、住宅ローン保護、国連路線遵守など)でその差が開いている。

なんだ、ニュージーランドも日本も同じようなことやってるじゃんか。うん、そうですね。この部分を見ると、社会に選挙民が参加して政治による再配分をやろうとなると、どうしても声の大きな人、恥を知らない人に余分に配分してしまったりもするのが現実だ。

幸運なのは、余分に配分するだけの資産と、他の、受け取れなかった国民にも心の余裕があるからこれが政治闘争にならないってことだろう。

政治は毎日激しく動いてますが、夏の昼下がりのクイーンストリートではビジネスマンがあいも変わらず昼間からにこにこして街を歩いてます。

★なお、ここに書いたのはぼくの個人的な見解です。

なんちゃらデータとかどこそこ分析とかを引っ張りだしたのではなく、国民党政権の立ち上げから現状まで見てきて、上の人から下の人まで毎日話を聞いていると、自然と「ああ、この辺だな」と思える感覚の範囲で書いています。

詳細に興味のある方は政府のウェブサイト、要約版ならNZHeraldを検索すれば元ねたが出て来ます。



tom_eastwind at 11:20│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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