2010年03月06日

アマルフィ

657200c5.jpg新保作品は大好きである。ストーリー展開から話の流れまでいつも満足している。勿論内容が荒唐無稽であるのは承知の上。それでも充分に「話」として楽しめる。

けどさけどさ、この作品の主人公が外交官で、外交官が上司の指令を無視して民間人を助けるなんて筋書き、そりゃあんた、西から太陽が昇る時代になれば考えてもよいけれど、東から太陽が登り続ける限りあり得ない。

政府の役目は、例えば警察の仕事は治安維持でありその意味で反体制を取り締まるのが仕事だから一般市民よりも体制を大事にする。

外務省も同じであり、仲間内の官僚やお客である政治家を守るのが仕事、国民などは政治家の客なんだからオレには関係ない。

問題は僕の給料を直接僕の口座に入れてくれて、その金額の多寡を決めるのは顔の見えない国民ではなく目の前にいる上司だってこと。

1990年代の香港で領事館に仕事で打ち合わせに行った時に偶然その領事の部屋に緊急通報が入った。

「すみません、ついさきほど日本人駐在員のアパートで本人が突然死しておりまして、おそらく病気とは思われますが」
「そんな事は民間に任せておきなさい。何?その会社は運送会社?だったらますます良い、自分たちで死体を運べと言っておきなさい」

2001年にニューヨークでテロが起こった時もニューヨーク総領事館は日本人に対してドアを閉めたのは有名な話だ。

どこかの国で革命が起こって日本人が取り残されると肝心の日本外務省は何もせずに、結局トルコが日本人を助けて避難させたなんて話もある。

そんな中でアマルフィ。

これはないでしょ。いくらテレビ向きに作ったとしても、あり得ん。どうせ荒唐無稽にするなら特命係長の方が余程ましですぜ。

話自体はもちろん面白い。けど最初に「外交官が民間人を守る」と言う設定にがくっと来た僕は話の進行についてきながらも、まるで魚の小骨が喉に刺さったまま美味しい白身のサシミを食ってる感じで、どうにも納得が出来なかった。

民主党が政権を取っても当分この流れは変わらないだろう。

だって民間を無視して外務省のムリ無駄につきあった方が自分個人の利益になると外交官が理解している限り、東大を出た優秀な人間は計算が速いのだから当然誰もが「あんた、誰?民間人?ここは領事館ですよ、本国から来た政治家と官僚を接待する場所ですよ、あなた、旅行会社に行きなさい」と言う話になるのは自明の理。

まあ僕らも守ってもくれない人々を信じて真面目に付き合うことはやめて自分の道は自分で切り開いていくことだが一番である。


tom_eastwind at 00:00│Comments(0)TrackBack(0) 最近読んだ本  

トラックバックURL

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔