2010年03月11日

こんな天気の良い日に

0c6af8a1.jpgこの写真は香港上海銀行(HSBC)の受付から見えるワイテマタ湾。

この時期になると世界中から客船がやってきて、今朝も客船からちっちゃな通関を通って観光客が降りてきているのが見える。



男性は半ズボンに明るい色のポロシャツ、足元は白い靴下に運動靴、首からカメラをぶら下げてサングラス、頭には野球帽(Cap)と誰もが制服のように決まった格好、けど女性はそれぞれにカラフルでカジュアルな格好を楽しんで、夫唱婦随で楽しそうだ。

「こんな天気の良い日にね〜」

これが今朝一番のHSBCでの会議で最初に発した言葉。期せずして彼も同じことを考えていたようで、
「ほんとだよね、まったく」
と返ってきた。

そう、今日はあまり楽しくない話題でHSBCとの会議である。

ニュージーランドに興味を持ってもらうのは有難いのだが、殆ど情報がない中で現地の法律も知らずに闇雲に不動産を買ってみて、後になって日本と法律の違いにびっくりして手放したい、けどそれが簡単にいかないって言っても、そりゃ後の祭りですぜ。

でもって祭りの後始末がこちらに回ってくる。うちの会社のような存在はある意味日本人にとっての駆け込み寺的な面があり、うちも費用さえ貰えばどんな交渉でもやるけど、それにしても日本人の契約観念の薄さには時々頭が痛くなる。

日本国内でやる分にはある程度消費者保護や仲間内の常識で“なあなあ”や“まあまあ”で通ることもあるが、外国では大体の場合において通用しない。

書類にサインした後に「ところでこれって何の書類ですか?」って、順番が逆ですよね。最初に書類を読んでからサインしましょうぜ。

後になって「聞いてない、知らない、分からない」なんて言っても、あなたがサインした書類は「不動産売買契約」だし弁護士に通訳入りで説明を受けて弁護士の目の前で「わたしは不動産に関するすべての情報をしっかり聞きました」と言う確認書類にもサインをしているんだし、銀行でも「あなたがやろうとしている事はこういうことですよ」と説明を受けているのだからどうしようもない。

そのどうしようもないものをどうにかならないかと交渉するわけだから、HSBCの担当者と僕は顔を見合わせて「こんな天気の良い日にね〜」となるのだ。

ニュージーランドの不動産市場は基本的に右肩上がりである。昭和の日本と同じで、どんどん人口は増えているしオークランド周辺に移住者は集中しているし、世界的にある程度以上の人々は積極的に国境を移動する生活をすることになるから、この状況がこれから最低でも10年間は続く徒予想される。

なので不動産については右肩上がりと言う神話が出来上がっているしそれは事実なのだが、勿論市場原理も働いているから過熱し過ぎれば調整もある。ある時期、例えば去年前半は不動産価格が20%程度下がったこともある。

けど今年になってまた価格は上がり始めているし、10年単位で見ればのこぎりの歯のようにぎざぎざを刻みながらも上昇している。

住宅価格が上昇する一つの理由は、ニュージーランドが世界経済の中で動いているからだ。

日本の工場が低賃金の労働力を求めて中国に工場を移しても、暫くすれば中国の人件費が上昇する。そうすると低賃金が中賃金になる。こうやって賃金はいずれ平準化する。

難しい方程式を書き始めるときりがないけど、風が吹けば桶屋が儲かる式で世界レベルで見れば時間はかかるけど賃金や物価はある程度収斂されていく。

その過程ではニュージーランドのように低賃金の国は賃金が上昇するし、住宅が世界的に見て安ければ上昇する。

その意味でニュージーランドの不動産を長期的に見れば投資対象としては良いと言える。何よりこの国では不動産売買に税金がかからない。無税で売買が出来るのだからこれは魅力的である。

なので長期的に保持をして住宅売却の利益=CapitalGainを狙うのであれば問題はない。

ただそこに日本の常識を持ってくるから話がおかしくなる。

「不動産が値上がりするなんてあり得ない!」

「新築しか価値がない!」

「中古住宅の価格が上がるわけがない!」

などなど、「今の日本」では30年前の日本では土地も値上がりしていたのをすっかり都合よく忘れて「今の話」しか言わない人が実に多い。

いくら説明しても聞く耳を持たず、とにかく「あり得ん!」を繰り返しておきながら、けど実際にニュージーランドに視察に来て不動産視察をすると今度はいう事が正反対になって「不動産がいい!」となる。

そしてこうなるとまたも人の話も聞かずに何でも買おうとする。

やめとけっつうのに不動産屋(最近ますますこの手のセミナーが増えた)にうまい事言われてその気になって、まるで中学生の小娘レベルである。

てか、最近の女子中学生はもう騙されないだろうから、小学生の男子児童レベルと言うべきか。

けどその不動産を誰がどう管理するのか、維持管理費はどの程度なのか、問題が起きた時にどのような法的措置が取れるのか、そういう大事な部分を「売りたいだけの」不動産屋に全部任せてしまう。

不動産屋は売れれば後は知らないんだからその場では「はいはい、何でもしますよ出来ますよ」と調子の良いことばかり言いながら、もちろん売れた後は「知らん。そんなもん自己責任でしょ」となる。

そこでドツボにはまるのは動かしようのない商品、つまり不動産を買ってしまった投資家である。

誰に貸せば良いのか、修理はどうすればいいのか、家賃の納税はどうするのか、最終的な出口である売却はどうすればいいのか、などなど問題は山積みとなる。

そしてある日、いよいよどうしようもなくなった時、ふと見た月刊ニュージーランドの広告で当社の存在を知り電話してくるってことになる。

僕は仕事だからどんな案件でも受ける。ニュージーランドと日本にまたがる問題であれば、ほぼ100%の割合で問題点を発見して解決する自信はある。

しかしそれはあくまでも顧客がその解決方法で納得してくれた場合であり、どうしても自分のやり方でないと嫌だとなれば、これはどうしようもない。

なので最初に案件の内容を聞いて、顧客がどこまで妥協出来るか、どれを捨ててどれを残したいか、優先順位をしっかりと決めてもらう。そこで初めて当社がお手伝い出来るかどうかが分かる。

今回の案件は更に複雑であり、HSBCの担当者も「こ、こんな複雑なのは初めてだぞ、どうすりゃいいんだこりゃ〜」って頭を抱えている。

こっちからすれば様々な選択余地がある。例えばA案、例えばB案、みたいに。

銀行とすれば出来るだけもめずに片付けたいけど、出来るだけたくさんの回収をしたい。そりゃそうだね銀行さん、けどさ、あなたも優先順位を付けようよ。

ちなみに今交渉している部署はクレジットデパートメントである。ここの人々はあまりネクタイをしていない。

銀行の表の顔となるセールスデパートメントのスタッフは全員ネクタイ着用だけど、銀行の裏の顔にあたる彼らの仕事は、英語で言えばクレジットデパートメントなんてかっこいいけどクレジットカードを発行するわけではなく「貸した金の回収」が仕事である。

だから債務者相手に「こら、どうなっとるんじゃい」が主な仕事なので、夏の暑い日の南太平洋の小島のちっちゃな街で借金取りをしている彼らにネクタイは必要ないとなるのである。

さて今日の話し合いは結果的に「またちょっと考えてみるわい」である。彼らにとっても複雑に権利関係が絡んでおり下手に何かやって後で裁判起こされるのも嫌だし、だからと言ってカネの回収は絶対だし、さあどうしよって感じである。

お互いにプロとしてやりあっているので感情的になることはない。けど隙を見せればすぐに相手のわき腹に短剣差し込むくらいの真剣さはある。

「お前、今こう言ったよな、いい間違いなんて言わせないぞ、おれ、聞いたからな」みたいのから始まって「おい、お前どうもモノの言い方悪いよ、お前と交渉したくないからウエの人間出せよ」とか「あのさ〜、ない袖振れないのは分かってるだろ、お前のことはToughNegotiatorだってお前の上司に言ってやるから早いとこ納めようぜ」まで、甘辛なんでもあり。

具体例を書けないのが残念なくらいだけど実に多様な表現が飛び回り、間違いなく英語の勉強にはなる。

まっすぐな米語と違い英語の場合は日本語と同じように最後の最後に今まで話してた事を全部ひっくり返す事が出来る。こういうのをお互いに何発もかましあいながら相手の顔色を見ている。

最初に相手に良さそうな話をしておいてどの時点で相手が「にやっ」とするかを見極めて最後の言葉で「〜じゃないんだけどね」とやって、それでがくっとした相手の顔を見て、考えている落しどころを見極める。

けどこれを乱発するとかえって相手の反発をくらって、「もういい、お前とは話をせん!」になってしまえばこれまたダメダメである。

こんなのを真夏の太陽がぎらぎらと照りつける南国の小島の海辺に立ってるビルの中で朝一番にやるんだから「こんな天気の良い日にね〜」となるのである。

2時間ほど話し込んでから、相手もボスと打ち合わせしてから返事をくれるとのこと。

“Ok, see you soon” と言う僕に対して彼はにやっと笑って“Hope NOT! “だってさ。



★ あ、そうだ、これだけは日本の方に言っておきたい。

今の日本は猫も杓子もエコエコって言うのに、何で住宅は今で使えるものを壊して「新築」にするのか、この意味が不明である。

“もったいない”なんて言葉が外国人に使われて喜んでいるけど、だったら中古住宅を買って中古車に乗りましょうぜ。「え〜、気持ち悪い」なんて言ってるうちはエコなんていわないほうが世界的にはYESだと思いますぜ。

そう考えたらニュージーランドはエコエコなんて騒がれなかった時代から古いものを何度も修理して使うような習慣があるので、よっぽどエコですぜ。


tom_eastwind at 19:23│Comments(0)TrackBack(0) NZの不動産および起業 | 諸行無常のビジネス日誌

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