2010年04月04日

シムロック解除

SIMLOCK解除

いよいよ日本の携帯電話もシムロック解除になると発表された。これでぼくのように色んな国をまたがって利用している人間からすると非常に使い勝手がよくなっていく。

今回総務省が強力に進めている一般市民向けの携帯電話緩和政策は、携帯電話の番号は変えずに通信会社を変更する事が出来るMNPに継いで携帯電話の自由化を促すだろう。

だから逆に言えば今まで参入規制の壁に守られてた既存の通信会社は反対であるが、今回の反対の理由はおそらく日本国内で今まで通信会社が携帯電話事業で持っていた業界主導権を取られるからってのが本音ではなかろうか。

多くの日本人は日本以外で携帯電話を使うことがないからシムカードが元々なぜ存在するかを深く考える事もなかっただろう。もっと言えば、携帯電話ってのはドコモやソフトバンクで購入するものと思ってただろう。

けどシムカードが作られた理由は欧州で国を移動しながら携帯電話を利用する人は、ローミングが発達していなかった時代にはいちいちその国で利用出来る携帯電話が必要となった。

けどそれじゃあ5カ国をまたいで旅をする人は5個の携帯電話が必要になる。それで利用者の利便を図る為に

1・欧州の通信会社は共同規格を構築しておいて顧客にあくまでも「通信設備」のみをシムカードを通じて提供する。
2・携帯電話端末を作る会社はどこの国のシムカードでも使える携帯電話を販売する。

と言う風に住み分けをした。こうしておけば利用者はその国に入ったらシムカードを入れ替えるだけで同じ電話が使えることになる。もちろん国内利用なので後日発達した海外ローミングで高額の請求(詳細は後述)が発生することもなくなる。

つまり通信会社は政府から一定の周波数帯を貰って安定した通信インフラを整えればOKな、例えば東京電力みたいな位置付けになる。電気代は利用方法と使用量によって決まる。

そして端末会社はシム規格に合わせて様々な利用方法を提供するが、これは明確に価格とサービスが比較出来るので顧客からしても分かり易い。

簡単に言えば、例えばあなたがテレビを買う時にはヤマダ電器に行くけど、そのテレビは東京電力と契約をしないと使えない。そしてテレビの性能と電気代に関連性はない。

例えば東京電力で電力の2年契約をするとテレビが半額になるって言ったら、「はあ?」と思うでしょ。けど携帯電話の世界ではソフトバンクがIphoneの携帯電話を売っているし、ソフトバンクと新規契約をすれば本来は8万円のIphoneがほぼ無料になるという、電気製品の世界ではありえない状況になっているのだ。

結果的に端末の本来価格は消費者に見えず(一応単品価格は出しているものの不明朗)、2年契約でどれだけ自分が得をしているのか、通信料金の仕組みがあまりに複雑すぎて分からなくなる。

このカラクリが分かるのは契約期間途中で自分の電話を無くしたり壊した場合に電話機だけ買おうとすると「数万円!」と言われたときだろう。

でもって以前は携帯電話の番号を変えてしまうってのは大変な作業だったから、「あんまり好きではないけれど、ドコモ」と言う利用者が多かった。

ところが番号を持ち歩き出来るようになると好きな会社を使うことが出来て、それに合わせて携帯電話番号が一種の個人認証番号になってきた。

今回のシムカード入れ替え自由になったことでシムを使っている利用者はずいぶんと選択肢が増える事になるし、携帯電話を作る会社かあすれば参入障壁が思い切り下がるので、日本市場から一度は撤退した欧州の会社も再進出してくる可能性がある。

こうすれば日本が「携帯ガラパゴス」と呼ばれて世界から無視されてた状態が一気に変化して、1億台の携帯電話が売れる市場として海外の端末会社が日本市場に目を向けてくれるだろう。

そしてこのような競争は国内企業を切磋琢磨してくれる。ただこれは国内企業を弱くすると言う意味ではなく、むしろその反対である。

何より大きいのはこうやって海外勢と戦う中で日本の端末企業が世界の潮流を理解して世界に向けてその最高のサービスを提供していく事で、今まで世界の端末の10%程度しかなかったALL−JAPANがノキアやサムソンを抑えて世界のトップに出られる可能性が一気に高まると言うことである。

今のままではいくら作っても儲からず、国内標準と違うから海外で販売する事も出来ず通信会社の言いなりになって赤字ばかり作ってた端末会社が、これで一気に世界標準に近づけていけるのだから、総務省よくやったと思う。

ちなみに僕はソフトバンクと2年契約をしてIphoneをほぼ無料で購入した。勿論毎月パケット料金を支払っているが、その端末のシムロックはIphoneが英語で世界にばら撒いていると思われる説明書を使って解除してもらった。

解除費用はNZ80ドル(約6千円)、ニュージーランドの端末会社で普通にサービスとして提供している。

なので今は2枚のシムカードを使い分けているが、通信会社側の言うような「不都合」は出ていない。てか、ある程度の不都合ってのはコンピューターの世界の中ではどうしても起こるものであり、「全然使えない!」と言う話ではない。

実は今回も香港でIphoneを取り出してみると、NZのvodafoneでは全然繋がらない。空港到着後何時間経っても「圏外」。ところがそこに日本のソフトバンクのシムを挿すと一発でsmartvodaにアクセスできた。

ただこのやり方だと日本で課金されるので大変な騒ぎになる。なので香港ではメール受信の瞬間だけローミングサービスを開いて、後はすぐに「機内モード」に切り替えて使用している。

ちなみに先月のロンドン出張で4日間使用した際の請求書は約7万円!あり得ん!普通に日本で使うような使い方しかしてないのに、とてつもない事になる。

最近は日本から来る人も殆ど日本の電話をそのまま持ち込むようになったし、見てると普通に日本に発信するだけでなく受信もデータ通信もばりばりやっている。

ありゃあ通信料金、あとで大変なことになってるぞと思う。

個人的なことだが今回シムロック解除になると日本の携帯電話を持ってきたお客が空港でvodafoneのシムだけレンタルするってことになり、今まで大儲けしてた海外ローミング利用に影響が出るからではないか、なんて勘ぐってみたくなりもする。

それにしてもこういう形で政治が民間ビジネスの競争を促進する土台を作ってくれるのは当然とは言え今までの日本ではあり得なかったわけで、その意味で総務省ありがとうですね。

追加で書いておくと、シムロック解除だけではなく周波数の問題があるので今回の解除で日本の市場が全面的に開放されるわけではない。けれど問題は解決していけばよいわけで、方向性としはプラスに向いていると思う。


tom_eastwind at 15:44│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 | 日本ニュース

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