2010年04月11日

本日の説明会も無事終了

本日の移住説明会も無事終了。その中で一つ面白い質問があった。それは「これだけ福祉、つまりセーフティネットがしっかりしててそれだけ税金を使っているのに何で10年以上も国家財政が黒字なのか?」である。

普通に旅行会社や留学会社は人を集めるために“留学セミナー!今なら手続き無料!”とか“xxツアー代発表会、参加者に抽選でハワイ旅行!”とかやって、出来るだけたくさんの人を無料で集める。

ところが当社の説明会はお客様に1万円を頂いて説明会を行っている。同じようなビジネスなのにこの違いは何かって言うと、彼ら留学会社や旅行会社が販売しているのはツアーや留学と言う商品であるが、当社は正しく正確な情報を提供する事自体が仕事なので、説明会そのものでお金を頂くビジネスモデルとなる。

なのでお客様の側に立って情報を提供するわけで、時には彼らの耳に痛い話もする。

この時の説明も、日本政府からすればあまり面白い話ではないだろうが、ニュージーランドにおける輸出の半分近くを占めているのが農業輸出であるという事を中心に説明した。

でも、もう一つ大きな点は、国家経営と言えども入る金を出来るだけ増やして出るお金を出来るだけ節約すると言う当然のことをしているから黒字になるのであるということ。

毎年赤字で赤字が当たり前な国に住んでると、いつの間にか赤字国債を発行する額をいくらにするかって話が中心になって、赤字になること自体の議論がなくなってしまう。

じゃあ何で日本は毎年赤字なのか?答えは簡単で入ってくる金よりも出て行く金が多いからだ。その支出の中でも最もムダなのが人件費である。他の費用、例えばコピーマシンを買いましたとかだったらその費用対効果は明確に分かる。

ところが人間の経費だけはその給与と労働内容が一致しているかどうか測るのが難しい、てか公務員の場合は測ろうとしないところに問題がある。

ニュージーランドも1970年代までは実質的な社会主義国であり(あまり知られていないが)、8万人の国家公務員が一生安定した立場で飛行機を飛ばしたりガソリンを売ったり果物を輸出したりしてた。

その結果として固定費が莫大に増加し、1960年代から70年代にかけてニュージーランド経済が南半球の国際化により大幅な売り上げ減少となった時にこの人件費=固定費が強烈なボディブローとして政府の赤字を増大させ、ついには国家財政破綻を招いたのだ。

そこで1984年に登場した労働党のデイビッド・ロンギ政権は財務省のロジャー・ダグラスと組んで徹底的な経済改革を行い、当時の8万人の国家公務員を3万人近くまで減少させた。今まで国家が非効率的に運営していたxx公社とかxx財団とかを全て民営化させ、公務員を民営化した組織に移してそれぞれのビジネスの効率化を図ったわけだ。

そして更に民営化された組織を上場させて海外の投資家に売却、これによって得られた利益で今までの負債を償還、更に外国の血を導入する事で経済を活性化させ、国民に活力を与えたのだ。

この時デイビッドロンギは首切り大臣とか売国奴とか呼ばれたが、今の経済の発展を見れば誰も何も言えないだろう。

1980年代から続いた経済改革はその後政権が国民党に移った後も継続され(これってすごいよね、労働党の反対政党でありながら政権を取った瞬間に見事に労働党の政策を継続したんだから)、さらに労働党時代には難しかった労働法の改正(労働党の支持団体は主に組合)を行い、プロフェッショナル労働活動家を会社から排除して経営者の自由を勝ち取った。

結果的にニュージーランドは本当の意味で自由になり起業したい人は安心して起業出来るし、政府は事後規制しかしないので皆がどんどん働くようになった。

その結果として消費が増えて、そこで消費税を12.5%に値上げしたもんだから消費税が国家収入の半分近くを占めるようになった。ところがこれは最初から内税だから誰も消費税の存在を感じないので文句も出ない。

そうやって国家の経営を立て直し、1993年には単年度黒字になり、それから14年間連続で黒字化を続けた。さすがにリーマンショックで去年は赤字決算になりそうだが、それでもまた来年からは黒字経済に戻るだろう。

けど黒字化の一番のポイントが何かって言えば、ごく当たり前のことを国家が行った、つまり収入以上にお金は使わない、無駄なカネは使わないって事を徹底しただけだ。

まずは税収を増やす為に人々が起業しやすい環境を作る。そこで得た税収は出来るだけ効率的に国民にセーフティネットと言う形で再配分する。税金と再配分の間に位置する政府は出来るだけ運営コストを削減する事で、少しでも多くのお金が再配分に回るようにする。

こうする事で国民は、自分の払った税金の行き場所が無料で学校に行けるし無料で医療を受けられるし65歳になれば誰でも一度も掛け金を払わなくても貰える老齢年金になると見えるので税金の不公平感がなくなる。

そりゃそうだら、忙しい仕事の合間に市役所に行ってなんちゃら手続きに並ばされてるってのに、だらだあらと市役所の職員がしてたりすぐに昼休み取っていなくなったりなんて、そりゃ〜おこるだな。こいつらの為にオレの税金使われているのか!怒るのは当然である。

だからムダに見える公務員はバシバシと削減、仕事を見える化して、その後に新しく出てくる仕事はすべて民間委託することで公務員は増やさずに現在まで来ている。

このような事が可能なのか?なんて聞かれたら、じゃあ10年前に民主党が政権取るなんて誰が想像したのか?である。要するに国民全体が本気で望めばどんな事でも叶うのである。問題は国民が本気で自分たちの為に良い社会を作ろうと取組んでいるかどうかである。

1990年代までの日本は正直言えば国民は存在せずに村民のみが存在して“おらが村”の利益だけの為に行動をする事で国家全体のバランスを壊してしまった。その為にアフリカ諸国のようにみんながみんなの足を引っ張って結果的に国全体が衰退すると言う道を辿った。

今の民主党を批判する事や自民党がどうのと批判するのは容易だが、京都府の選挙で投票率が41%だったと言う現実を見れば、日本が“おらが村”から脱却して自分の手で国家を作るためにはまだまだ過激な刺激が必要かなと思う。


tom_eastwind at 09:26│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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