2010年05月15日

駐車場

トヨタ自動車の社長が愚痴った言葉に「うちの技術陣はヴィッツを作らせてもレクサスにしてしまう」というのがある。

これは別にトヨタ技術陣だけの問題ではなく日本人がその遺伝子として持っているものである。そしてそれは海外の日本食レストラン市場で大きな影響を与えている。

最近新しく韓国人ファミリー経営の定食屋が出来て、オフィスから歩いて2分なのでそこで丼モノとかてんぷらうどんを食べている。

このお店、たまたま僕が使っている駐車場の真下にあるのでスタッフには「駐車場でメシ食ってきます」と言うと眼を丸くされてる。

味は良い。値段も手頃。料理も早い。何せおかずが全部ショーケースに入ってて、丼に入った白ご飯を持ってるお姉さんが「はい、おかずは何にする?照り焼きチキン?」と聞いてきて2品の肉を載せると次は「はい、それで野菜は何がいいの?」と今度は野菜をどかっと載せて出来上がり。

長いカウンターの右端から料理が出来上がる左端までが1分と早い早い、でもってカウンターの一番最後に控えているのがお勘定場に立っているおじちゃん。こりゃサブウェイ方式だ。

お客は殆どがキーウィで、料理を見ながら「ねえ、これって韓国料理?」と聞くとスタッフは「じゃっぱにーず!」と答えてる。ふむふむ、え〜?!

確かに食材は肉と野菜とご飯だからこれで日本食は作れる。けど、照り焼きチキンにスパイシーチキンにスパイシーポークとかの上にそのまま生のレタスや玉葱とかをサラダとして載せるんだぜ、そりゃないだろ。

などと思いながら、それでも昼時になると地元ビジネスパーソンでごったがえすので商売としてはうまい方法だと思う。

オークランドに住んでいるとこんな感じで中国人や韓国人が経営している「日本食レストラン」を見かけることが多い。日本食レストランの数は多分100軒以上あるだろうけど、日本人が経営しているお店はおそらく20軒くらいではないか。

面白い事にこれはオークランドだけの現象ではなくバンクーバーでも香港でもシドニーでもどこでも、とにかくなんちゃってが多いのだ。

彼ら中国人や韓国人からすればアジア人の顔の区別がつかない白人相手に商売をする時は日本人の看板を持ち出してニホンショク!と言うほうが「かんこく!」とか「ちゃいな!」と言うよりも高い値段付けが出来るし最近健康志向の白人からすれば脂っこい中華や肉肉っぽい韓国料理よりもニホンショクが選ばれる傾向が高いのも事実。

そこでニホンショクレストランを経営するのだが、ビジネスモデルは勿論彼らのやり方なので日本の持つ独特の“やっていい事わるい事”なんておかまいなしだし“こだわり”はあくまでもお金だけ、だからなんちゃってニホンショクレストランが世界中で広まっているわけだ。

そういう現状を見た日本人が言う事は99%同じである。

「なんだこりゃ!こんなもん日本食じゃねえ!」
そして、
「だったら本ちゃんの日本人がほんもんの日本食を作ってやるぜ、美味しいものを食わせて日本の味を教えてやるんだ!」

となるのだけど、肝心の客である白人が白身魚を出されると全部同じ味にしか感じないし、第一白身魚の香りを嗅ぐことが出来ない人ばかりなので、いくら職人が頑張って美味しいもんを作っても「ふ〜ん」で終わり。

でもってここが本題なんだけど、日本人が持つ品質へのこだわりがあるから、日本人の経営するレストランはどうしても一定の費用がかかる。良い食材を仕入れて料理に手間をかけて綺麗なお皿に盛り付けて、とやるのだ。

ところが競合店舗はそんなのおかまいなしで使い残しの食材でも平気で次の料理に出すし客の食べ残しがあればそれも利用させて頂く吉兆精神である。

おまけに働く人の給料は低いし何でもかんでも交渉で値切るし、食材に至ってはまさになんちゃって中国産を平気で使う。

だから日本人から見れば明らかに「なんちゃって味」なんだけど、お客からすればそんなの知ったこっちゃないから安くて美味しい?ニホンショクレストランに行く事になるのだ。

でもって結局日本人が経営する日本食レストランは淘汰されてしまい、その街のニホンショクは中韓市場に制覇されてしまうのだ。

海外で頑張っている日本食レストランの為に日本政府認定マークを出そうと言う話があったけど結局それはお流れになった。

だから日本人がこだわりを捨ててヴィッツはヴィッツなりに作ってくれれば良いのだが、どんな安いレストランでも日本人が経営しているといつの間にかヴィッツをレクサスにしようと無意識に行動している。

まあこれは日本人の特質であり文句をいう事もないのだが、海外で日本食レストランを展開する事の難しさは、実はその日本人自体にあるのだってのが、笑っていいやら泣いていいやら、やっぱり「はあ〜っ」とため息をつくしかない。



tom_eastwind at 17:08│Comments(0)TrackBack(0) NZの不動産および起業 

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