2010年05月21日

地下のプール

a611d45f.jpgロンドンでの話。

一人じゃ来れないな、本気でそう思ったロンドンのホテルの地下2階にある大プール。ピカデリーサーカスのすぐ隣にあるこのホテルは交通の便は非常に良く、ここ数回利用している。

今回もヒースロー空港に朝6時過ぎに到着してそのままホテルに向かい荷物を預けたのだが、随分体がなまってたし午後一番のアポもあるのでシャワーを使いたかった僕はフロントの可愛らしくころころしている若い白人のスタッフに「ね、どっかシャワー使えるところある?午後,濃纏なんだ、でもってスーツに着替えたいし」って聞いた。

すると彼女、バラの大輪のような笑顔でにこーっと笑って「もちろんそうですよね!お仕事でお見えになればまずはシャワーと着替えですよね。はい、地下にプールが御座いますしジムも御座いますのでご利用下さい。私が荷物をお持ちします」ときびきびと対応してくれた。

このホテルで働いている人の半数以上の苗字が東欧や中東の名前であろうともサービスは一流、やっぱり競争の厳しい業界でフロントで働くってのは大変な能力を要求されるのだろう。

ましてや国際会議がしょっちゅう開かれるようなロンドンのど真ん中にあるホテルなので、要領が良くないといけない。

彼女も早速ぼくの荷物を持ってフロントから出てくるとすかさず「それではエレベーターはこちらで御座います」とにこっと笑った。ぼくは運動不足もあるので、「いやいや、わざわざエレベーターを使うよりも歩いて降りましょう」と言う。

すると彼女、またもにこっと笑ってその荷物をそばを歩いていた中東系のコンシェルジェのお兄ちゃんを捕まえて手渡し、更ににっこ^−っと笑って僕に「さあ、あなたの荷物は彼が全部責任を持って運んでくれます、ご安心下さい!」だって。

そう。これくらいの要領の良さが生き残る秘訣なんだろう。まあいいや、誰かが地下2階まで歩いて運んでくれるんなら文句はない。

このホテルは最近一ヶ月ほど全館を閉めて大改装を終えて随分綺麗になったとの事だけど、基本的に古い外装は変更していないので、どこを改装したのかよく分からないのが面白い。

古い階段をくるくると回って降りると古い木製のドアを押し開けてジムに入る。ほうほう、確かにここは最近作ったばかりと言う感じがよく分かる。壁や内装がそれまでの廊下と全然違ってて近代的だ。

既存のサイズをうまく利用して器用に改造したって感じのジムを抜けるとそこはシャワールーム。更にその先にプールがある。まさに「地下のプール」である。水着に着替えてシャワーしてから(実は出張の際は常にスイミングパンツを持っていくようにしている)プールに向う。

しかしこれがどう見ても普通のプールに見えないのは僕だけではなかろう。

天井が4メートル以上の高さであり全体がゆらゆらとする青い間接照明を使っているのだが、とにかく地下なので窓がない。まるで海の底のドアを開けて入り込んだ感じだけど、水面下にいる感じだけではなく、何故かこのプール、丸いのだ。

まるで日本の温泉旅館で見かけるような、まるーい形をしているのだ。正確に言うとホタテ貝の殻みたいで短い一辺はまっすぐなんだけど、他はまるーくなっている。そしてプールなのに何故か直径1メートルくらいのドデカイ円柱が二本も立っているのだ。

なんじゃこりゃ?である。一体どうすればこんな丸いプールと、プールの中に円柱を立てるようなことになるんじゃ?

これはどう見ても既存の「水を満面に湛える場所」を改造してプールにしたとしか思えない。つまりもしかしたら100年くらい昔からある設備をそのまま再利用しているのだ。

でもってこの場所はピカデリーサーカスである。こんな地下に昔からプールがあったとは思えない。もっと言えば、たとえ100年前でもプールだったら長方形でしょうし、第一円柱なんて立てるわけがない。

それがこのようになっているのは・・・考えてみれば・・・・え〜っと・・・大きな建物の地下にあって、泳ぐ事を前提にしてなくて、けど水をたっぷり用意しているってのは・・・・ええっと、ここは・・・すでに泳ぐ必要がない人が使う場所だよね。オンセンではないよね、深いから。えっと、体を腐らないように横たえて地下深くの場所に保存しておく、それってまさか・・・ホルマリン漬けになった死体置き場じゃないよね・・・。

そう思った瞬間、足の下から誰から引っ張ってくるような、ぞっとする恐ろしさにかられた。何せつい最近ロンドンを舞台にした「感染地図」って恐ろしい本を読んだばかりだ。

当時のロンドンではしょっちゅうコレラが発生しておりその原因も分からなかったが、シティ内で頻発するコレラで亡くなった人の死体をすぐに隔離しなければ病気が他の人に移る可能性がある。そんな時にシティのど真ん中の地下に死体置き場があれば・・・。ぞぞぞぞ!

けどまあいいや、すでに若いアジア系の女性が一人で泳いでる、ぼくがここで引き返すなんてみっともなくて出来やしない。

そう思ってプールの中にそろっと入り込んで2往復くらいしたんだけど、プールのこちら側は深さが1メートルなんだけど、あっち側は深さが2メートル以上ある。壁にタッチしてちょっと下を見ると、当然足が届かない。

その瞬間、ぼくは「やば!」って本気で思った。ここで誰か怖い人にしたから足を引っ張られた終わりじゃんか!

すかさずクロールの全力ダッシュでこちら側に戻り、プールの壁を飛び越えるように上に上がった。

いっや〜、久しぶりにあのプール、怖かったな。一人じゃまずここを利用する事はないですね。それにしてもこのプール、本当は何だったんだろう、興味あるな。

写真はピカデリーサーカスからソーホー、劇場街を眺める場所。


tom_eastwind at 23:54│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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