2010年08月04日

シェーカー

バッシャーン!盛大な音を立ててシェーカーがぶつかり中のアイスカフォレがキッチン一体に飛び散る。

「大丈夫、ぼくは何でも出来るんだ!」といつもの口癖で竜馬君は生まれて初めてのシェーカー振りに挑戦するも、振る前にきちっとトップのふたをするって基本をやらずにいきなり馬鹿力で振り回したもんだから、中身は飛び散るわ、慌てて取り落としたシェーカーから残りのカフェオレが飛び散るわで、台所は大変なことになっていた。

最初にお母さんが「このふたをね、ちゃんとこうやって」と説明している最中に「大丈夫、分かってるから、お母さんはあっち行ってて!」と言い、お母さんが“あっち”に行った瞬間にバッシャーンだから、可笑しくて可愛くてしょうがない。

普通の日本人なら汚れたキッチンを見て怒るだろうが、ぼくやお母さんの場合はどっちかと言うと起こらなかったこと、つまりこれで竜馬君が怪我をせずにまた一つ人生で生きていく方法を実戦と言う形で覚えてくれたほうがうれしい。

ニュージーランドの教育方針は日本とは全く違う。そして社会構造も全く違う。だから子供に対する親の接し方も全く異なる。

ぼくは教育の専門家でもなければ医者でもないから、ニュージーランドの教育のどこが日本と比較してどう良いのかとか、何でぼくの香港政府及びニュージーランド政府お墨付きの生まれつき自閉症の子供が小学校5年くらいで普通クラスに編入出来て、今では親に向って「分かってるから、あっち行ってよ!」って言えるかを理論的に説明は出来ない。

ぼくのブログはコメント欄は作ってないけど、書き込みをしてもらうと読むことは出来る。いろんな書き込みが来る。

どう見てもこの人、お酒飲んで書いてるでしょって感じのワンフレーズ「フィービジネスやってる奴がなに偉そうなこと言ってんだ」とか、君さ、専門用語使って書き込むしおまけに自分の名前をTakuなんて書いてしまうと、おれんちはtakuよりは一年長生き出来たんだぞってのが見え見えでしょ、隠したいならもっと上手にやればと思わず微笑んでしまう。

返信出来ないシステムのコメントなのでROM(読むだけ)になるんだけど、興味のあるコメントについては数日中のどこかのブログの中でその人に分かるように情報提供をしている。

昨日受け取ったコメントが自閉症とNZで検索してたらぼくのブログにたどり着いたと言う方からだった。

ん〜、竜馬君ネタだけど、問題はぼくは自閉症の専門家ではないので偉そうなことは何も書けない、ただ、竜馬君と一緒にずっと今まで一緒に生きてきたってだけだ。

だから上に書いたように専門家でも医者でも教育者でもないのであくまでも素人としての、ただ現場を経験してきた人間の立場からしか言えないけど、ニュージーランドは人を人として、個性を個性として認めてくれる国だってのだけは言える。

生まれて最初の5年くらい、竜馬君は一言も話が出来なかった。全く言葉が出てこないのだ。うーうーと唸るわけでもない、にこにこしているしとても元気なのだが、まったく話をしないし記憶力が殆どなく会話も不能だし少しでも嫌いなことには異常なほどに反応してしまう。

初めて香港の幼稚園に連れて行った時に教師から「この子は普通の子とちょっと違うからお医者さんに一度見てもらって下さい」と言われて病院に行くと「お母さん、残念ながらこの子は自閉症です、普通の学校に行く事は出来ません」と宣告された。

ところがお母さんはその話を聞いた瞬間、お医者さんの前でびっくりするほどにこにこしており、「あ、そうなんですね先生、有難う御座います」びっくりしたのは医者の方で
「あの、お母さん、大丈夫ですか?」
「いえ、あのですね、変な意味じゃなくて、この子のお父さんってこの子以上に変なんです。けどまともに社会で生活して一応家の大黒柱として働いてもらってるので、だったらこの子も問題ないなって思ったんですよ」

嘘みたいな、けど本当の話だ。その晩奥さんから聞いた時、ぼくも「ああ、そりゃそうだな」って思わず頷いた。ぼくら二人にとっては竜馬君は個性を持つ可愛い子であり、それ以上でもそれ以下でもない、とにかくこの社会で楽しく生活出来ればそれで十分と思っていた。

自閉症を気にするのは親だが、子供は自分を自閉症と思っていない。ぼくが生まれてから30半ばまで自分をおかしいと思わなかったのと同じだ。

周りが気にするから本人も気になり、そのうちどんどん悪くなっていく、そういう事ってないだろうか。例えば小学校でトイレに行った子供を周りの子供が笑いのネタにして、それが段々周囲の虐めに繋がっていくとか。

子供も同じように、いつの間にか周囲の遠慮するような雰囲気とかを感じ取って「あれ?ぼくっておかしいのかな?」って思うようになる、そんな事ってないのだろうか。

オークランドに移住してきた時も、お姉ちゃんは優秀で周囲の空気も読めて本心はどうか分からないけどそれなりに学校にも通った。けど竜馬君はここでもまた「ニュージーランド政府のお墨付き」をもらって特殊学級へ。

ある時おくさんから「あ、そう言えば何だか政府から毎月200ドルくらいお金が振り込まれてるわよ」と言われた。聞くと、竜馬君の自閉症で大変だろうからって政府から支給されるお手当らしい。

結果的に幼稚園の学費も全額香港政府持ち、ニュージーランドでは勿論学費は無料だけど、更にお手当貰って学校に通う状態である。

月曜日から木曜日までは特殊学級、金曜日は普通学級で勉強をする生活を小学校一年から大体4年くらいかな、繰り返した。

当時は英語どころかお母さんの母国語である広東語でさえ殆ど話せなかった竜馬君で、学校の教師からしても大変だったろうけど皆本当によく子供に普通に接してくれて、竜馬君も学校でいつもにこにこしてて、笑顔だけはとても可愛くて、本当に楽しかったのを覚えている。

続く

ネスカフェ

tom_eastwind at 17:56│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 | 移住相談

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