2010年08月16日

警察の紋章 佐々木譲

警官の紋章 佐々木譲

北海道警察シリーズ第三弾。クイーンズタウンの山の中で読了。

いつもはスキーの後はばったんと寝るほうなので本読めるほど起きていられるかなと思ったけど、不思議な事にあまり眠くもならずに毎晩友達のレストランでの夕食後近くのお店で買った氷を持ち帰り、部屋着に着替えて寛いで結局二晩で読み終わった。

この北海道警察シリーズは元々の発端が北海道で発生した裏カネ作り事件と稲葉事件をベースにしている。両方の事件とも警察上層部の関与が囁かれていたが今日現在も事実関係は白日の下には現れておらず。

小説と言う自由なフィクション形態を取ったことでかえって様々な情報が取れたのだろう、文中のあちこちで「推測されていたこと」が「事実」として描かれていく。

北海道警察シリーズでは佐々木譲の文体はいつもそうだけど、始まりはまるで春の陽気のようにぽかぽかとした切り口であり、中盤になると実社会では噂とされていた伏線が次々と表に出てくる。

そして物語は後半になると一気にクライマックスに入り、最後は爽やかですっきりした、まるで日本酒の「上善水の如し」のような口当たりが残る。

もちろんこの進め方を遅いと思う読者もいるだろうが、これはこれで一つのちゃんと出来上がった作品だ。いつもアリステアマクリーンやジョンルカレ読んでてたまにフリーマントル作品を開くと読みやすくてほっとするようなものだ。(日本人作家の名前を出そうと思ったがとっさに出てこなかったので英国作家)

読みやすい作品だし事実がベースなので臨場感もあるし、こういう作品は日頃本を読まない人、特に北海道出身の人には地名も分かるし取り付きやすいのではなかろうか。

ちょっと本筋とそれるけどこの作品はハルキ文庫から出ている。角川春樹がいよいよ本格的に復活している。「野性の証明」では日本中に角川映画の凄さを見せ付けた時代の異端児であるが、角川の復活も合わせて楽しめる北海道警察シリーズだ。





警官の紋章 (ハルキ文庫)警官の紋章 (ハルキ文庫)
著者:佐々木 譲
販売元:角川春樹事務所
発売日:2010-05
おすすめ度:4.0
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tom_eastwind at 15:27│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 | 最近読んだ本 

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