2010年08月27日

正規も非正規もコップの中の嵐

9b7f1f8f.jpg趣味と実益と兼ねた仕事だな〜、ロッククライミング。

当社の向かいのビルはオークランドでもかなりの高さのビルで、そのビルの屋上からまるでSWATの襲撃のようにロープが降りて来てがっちりとした装具で固めた人が数人、するすると降りてくる。

おなじみ、窓拭きである。日本だとこの高さのビルであればクレーンで窓拭きバスケットに乗り込んでの作業だろうが、ニュージーランドでは趣味と実益を兼ねたビジネスとして理解されており、ロッククライミングの得意な連中の実入りの良い仕事となっている。

世界で初めてエベレストに登頂したのはエドモンドヒラリーであり彼はキーウィだ。とにかくキーウィはスポーツがdaisukiでクイーンズタウンなどはまさに山登りのメッカみたいな町である。

スポーツショップで働く店員が山登りの道具を非常にうまく扱うので聞いてみると「あ、おれ去年はK2に登って、来年のエベレストに向けてここで働いてカネを溜めながら休日はフィヨルドランドの山脈で練習しているんだよ」。

まあかっこいいというか、とにかく人生を楽しんでいる。あるキーウィ登山家は凍傷で両足をなくしながらも世界で山登りを続けている。

オークランドは坂の街であり自転車で移動するにはかなりきついが、クイーンストリートをスポーツ自転車で背中に赤いバッグを抱えてかっこよく走り抜けて、上り坂でもぐいぐいと登っていき、下り坂ではすごい勢いで駆け下りてきて、時には両手を離してみたり、赤信号ではペダルに固定した足を外さなくてよいようにぴたっとバランスを取ってみたり、きみは郵便配達と自転車漕ぎとどちらが主な目的なのかって聞きたくなるくらい上手だし楽しそうだ。

実は郵便配達の中でも大きな荷物は太目のおじさんがビルにバンを横付けして二輪車でオフィスに運んでくれて「おはよ、君んとこの荷物、今日はこれだけだよ」と楽しそうに渡してくれる。

郵便配達は基本的に個人が配達会社と契約をして一個いくらで運んでいるからみんなキーウィ標準の仕事の早さの三倍くらいの速度で働いている。それでも顔は楽しそうだしよく冗談も言ってる。気楽で楽しいよね。

自転車にしろロッククライミングにしろ普通の荷物運びにしろ、何だか皆自分の今やりたい事を上手いことビジネスに結び付けているって感じだ。

日本では雇用継続の為に一生懸命しがみ付いているって感じになるのでキーウィの働き方を見れば「ふざけてんのか」と思うかもしれないが、いつ会社を辞めてもセーフティネットがあるし学校に行ってキャリアアップも出来る、その間は政府が学費と生活費の面倒を見てくれる国であるから、このように働いている人の顔が明るいし冗談も出てくるのだろう。

第一この国では正規雇用も非正規雇用もないから非正規労働者がいつ首を切られるかなどとびびる必要もない。すべては契約書ベースで労働期間と賃金が決められており、国が関与するのは最低賃金と労働基準法の遵守のみ。

ぼくも労働基準署と何度かやり取りした事があるけど、彼らはお役人と言うよりも調停者である。企業を裁くとか法律違反をどうのこうのなんてケースは殆どない。何故なら企業が労働法違反等すれば、労基署が調査するよりも先に労働者が訴えるからだ。

実際に日本人経営者でも現地の法律の厳しさが分からずによく訴えられているが、労基署はどちらかと言えば原告と被告の調停者であり、日本のようにお上が裁くなんてイメージとは全然違う。企業があってこその雇用であるという現実を一番理解しているのは政府である。

雇用の自由な移動、ジョブホッピングはスキルアップの為に当然のように行われる。そこに正規と非正規等の言葉さえ存在しない。

解雇については日本よりも緩く、解雇をする場合はリダンダンシーパックという退職に関する手当てと保証を会社が提案してそれで働く側が不満なら条件交渉をするが、日本のような一生絶対雇用と言う発想はお互いにない。

週刊ダイアモンドで正規雇用と非正規雇用について特集が組まれておりさまざまな反応を呼んでいる。ぼくが見る限りブロガーの間ではほとんどの意見は解雇規制緩和または解雇規制廃止を主張している。

民主党が労働組合に支えられており組合が自分たちの既得権を守る為に解雇規制を認めない方向であるが、労働組合と言う名前の下に労働者を差別して労働者内部に階級を構築して自分たちだけが特権階級労働者として居座り続けている。

その結果としてどこの企業も「切れないし使えない無能な正社員」を抱え込むことになり、ある資料によれば彼ら社内失業者を含んで計算すれば失業率は17%になると言われている。

働く能力のない正社員を抱えて生産性が下がる不幸な企業があり、その反対側には働く能力があるのに働く場所がない非正規社員の問題、これこそ政治が判断して改革していくしかないが、肝心の政治がねじれ現象を起こしているし一応与党の民主党でさえ内部で分裂している。

政治を立てれば民立たず、民立たねば経済立たず、経済立たねば成長せず、成長せねば競争力なく、競争力なければ国家が立たず、国家が立たねば他国に支配される。

右翼の左翼のと言ってる場合ではない。雇用については世界にもっと進んだシステムがいくらでもあるのだから、労働組合も政府も裁判所も、日本と言うちっちゃなコップの中でがちゃがちゃやらないで世界を見回して今の時代に合ったシステムを導入してもらいたいものだ。



tom_eastwind at 13:20│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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