2010年10月08日

ポールヘンリーの失敗

9586d8ad.jpgNZでは毎朝「Breakfast」と言うテレビ番組があり日本の朝の2時間番組と同じような構成になっている。政治、経済から文化、映画、スポーツまで様々なテーマを朝食代わりに提供している。

その番組で2004年から司会を務めているのがポールヘンリーというパケハ(白人キーウィと言う意味)で1960年オークランド生まれの、良い意味でも悪い意味でも人気者だ。

彼のコメントは鋭く、問題点をよく理解しており、更に何よりも面白いのは、彼は頭の回転が速くて冗談がdaisukiだって事だ。実際これがニュージーランド国民の朝の楽しみと情報分析の一つのソースとなっている。

けれどあまりに頭の回転が速いものだから自分の今いる場所が国民全員の注視の中であり彼が口から発した言葉はそのままお茶の間に流れてしまうってのを忘れているのかわざとなのか(わざとの可能性が高い)、生放送でかなり強烈な発言を繰り返す人物としても有名だ。

今までもしょっちゅうモラルぎりぎりの発言を繰り返してきた。例えばグリーンピースの女性活動家をインタビューした際はその後のコメントで「口ひげが生えている女性だね」とか。

これはぼくからすればジョークの一つとして笑えるし実際に多くの日本人は「ほらやっぱり〜」と笑うだろうけど、人間より鯨がdaisukiで脳みその構造にかなり欠陥があり一段階でしかモノを考える事の出来ない、まるでクロイツエル・ヤコブ病に罹ったような人々からすれば冗談はでは済まないようで、そういう時は必ずテレビ局にクレームが山ほど届く。

でもって彼は今回もまた派手な発言をやらかした。ネタは、ニュージーランド総督を誰にするかの問題だ。ニュージーランドは実質的に独立国とは言え国家元首は今でもエリザベス女王であり彼女の代行としてニュージーランドに総督が派遣されている。

とは言えこれはあくまでもお飾りで、実際はニュージーランドが独自で総督を決めるし総督に何らかの政治的権限があるわけではない。2006年から務める現在の総督はインド系のアナンド・サティアナンドである。そして今年が改選の年となったのだが・・・・。

http://www.nzherald.co.nz/nz/news/video.cfm?c_id=1&gal_cid=1502728&gallery_id=114354

Henry made the comments while questioning Prime Minister John Key.
"Are you going to choose a New Zealander who looks and sounds like a New Zealander this time ... Are we going to go for someone who is more like a New Zealander this time?"
Mr Key seemed taken aback and said that Sir Anand was a New Zealander.

ヘンリーはジョンキー首相に質問をしている時にこうコメントをした。
「あなたが選ぶ総督は、今回は見かけも雰囲気もニュージーランダーでしょうか?我々が今回ついていく人はもっとニュージーランド人っぽい人でしょうか?」
ジョンキー首相はこれに対して驚いたように「アナンド総督はニュージーランダーだよ」と答えた。

この発言はさすがに冗談では済まなかったようで、とくにニュージーランドで生活をするフィジーインディアン社会が問題視して人種差別問題に広がっていった。

その為現在ポールヘンリーは2週間の給与なし停職を言い渡されて、最終的に司会を降りるのかどうなるかは今日時点では未定だ。

うちのテレビは壊れてて電波が受信出来ないのでTVONEを見ることは出来ないのだがNZヘラルドからビデオにアクセス出来るので、そちらで実際にどんな風に話していたのかを見てみた。

すると確かに真面目そうな顔で「あなたは今回はニュージーランド人らしいニュージーランド人を〜」と言ってる。

けどその数十秒前には今回のリストの中のある候補者の英語っぽくない名前をわざと“かみかみ”しながら読んでみたりして冗談やってる。

なのでそれに続く真面目な顔での質問も半分は冗談であり、最初は確かに「そうだよな、一般的パケハからすればそうでしょ」くらいに思ってしまったが、一瞬後に「あ、これじゃあ確かに叩かれるのもやむなし、相手はインド人じゃんか」と思ったのも事実。

ジョークで「国際会議の司会者にとって何が難しいかと言えば、どうやって日本人に口を開かせてどうやってインド人を黙らせるかだ」というのがある。

それくらいインド人はよく議論するし主張する。ぼくも何度かインドに行ったが、確かに呆れるような場面に遭ったことも何度もある。とにかく絶対に間違いを認めないし絶対に謝らないのだから、こういう価値観の違う人間とは一緒に仕事は出来んなと何度も思ったほどだ。

それはニュージーランドに来てからも変わらずで、やはりインド人は苦手である。例えば会社近くのコンビニがありそこではフィジー系のインド人が経営しているのだが、ぼくは韓国製カップ麺を買いに行ったら売ってなかったので店を出ようとしたら、すんごい迫力のある濃い口ひげを生やした親父がにらむように怒鳴るように「おい、オマエは何故何も買わないんだ、オマエが買いたいのは何なんだ!」と聞いてくる。

こんな質問のしかたにも価値観の違いを感じるし、彼らがぼくらと同じアジア人に区分けされている理由は唯一、区分けを担当した当時の欧州人が前夜のパーティで飲みすぎて思考回路が回らずに、ええい、ボスポラス海峡の向こうは全部アジアだ!と言い切った為だと本気で信じている。

ジョン・キー首相としてもヘンリーの質問を受けてすかさず「彼はキーウィだ」と言い切って難を逃れたが、もしこれでジョンが一瞬戸惑ったり躊躇ったとしてたら政治生命は危うかったかもしれない。

誰も腹の中で何を考えているか分からないが口に出した瞬間に言葉は独り歩きする。

ヘンリーからすれば普段白人キーウィが考えているけど公の場では口に出せない意見を代表した質問なんだろうし、普通の白人数人がバーに行って総督の話になれば「何でインド人が総督なんだ?」とも話すだろう。

彼の毒舌は実はかなり白人キーウィの本音を突いており、だからこそ批判が出るのと同じ数だけ擁護の数もあるのだと思う。

キーウィは西洋人国家の中では最も人種差別が少ない国である。けれどそれは彼らの理性が本音の感情を抑えさせてるだけで、酒が入っての感情論だけになれば当然「おれたちが一番」だろう。

けれどこれはぼくも同じで、僕は日本人が世界で一番真面目で優秀だと思ってるが、それを日本人の集まり以外の場所で公言することはない。

結局自国や自民族に誇りを持つってことはどうしても他民族に対する差別を生むのだ。差別がなくなるなんてのは逆に言えば自国や自民族に誇りを持たなくなった時だから通常の社会では考えられない。

しかしそれを言い出したらお互いに自分が一番!ってことになり、ニュージーランドのような多民族国家では社会が成立しなくなる。世の中は理想どおりには動かないし人間には感情がある。それを理想だけで完璧に殺す事は出来ない。だから思っていても言わない、そういう心の配慮が必要なのだ。

今回の事件で彼がBreakfastの司会を降板することになっても彼の考え=「なんでインド人が英国女王の代理で総督なんかやってんだ」と言う気持ちは変わらないだろうし多くのパケハも同じだろう。

まあこの程度の事でいちいち人種差別!などと言い出してたらきりがない。黒いものは黒いのだ。白いものは白い。そしてぼくらは黄色だ。その違いがあることを認めた上で、だけど自国民に自信を持つべきだろう。

ぼくは自分の肌が黄色いことを恥ずかしいと思ったことは一度もないし、実は腹の中では日本が一番と思っているから、もし白人が何か言ってきたら、「ほう、トヨタに乗って寿司を健康食として食べてる君が、何か言いたいのかい?気に入らないなら昔のように馬車に乗って油っぽい芋フライでも食っておけば(笑)?」とでも言うだろう。

今回の事件は白人が何か言ってきたら「ほう、だったら何故君が総督に選ばれなかったのかな?」と笑って流すだけの器量がない連中を相手にジョークを飛ばしたってのがポールの失敗だったって事くらいだろう。


tom_eastwind at 19:33│Comments(0)

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