2011年02月11日

今年も賃上げ

 

875284e4.jpg今年の4月からニュージーランドの最低時給は13ドルになる。

最低時給はすべての業種に適用されるし全国一律なので、日本のような地域別最低賃金とかではない。ちなみに今年3月31日までは最低時給は12.75ドル、去年までは12.5ドルだったから、毎年25セント刻みで上昇していることになる。

 

ぼくが15年前にオークランドで会社を設立したときの最低時給は6ドルだっけな、すんごい安かった。けどそれがどんどん上昇して現在は2倍以上になっている。

 

東京の最低賃金は821円だが沖縄では642円だ。

 

けどニュージーランドではオークランドのマックで働こうがハミルトンのマックだろうがクイーンズタウンのマックだろうがすべて同じ13ドルである。

 

現在の為替レートでいけば13ドルは900円くらい。でも13ドルの肌感覚は日本でいう1300円かな。

 

例えばバスに乗って15分程度で4ドル50セントかかる。バーガーキングのベーコンダブルバーガーセットで8ドル。映画は大人が16ドル。

 

この国は元々社会主義国だったせいもあり労働者に対して手厚い手当を取る。だから賃金はほぼ毎年上昇するし、下がることはあり得ない。

 

また労働者も意識?が高いから絶対にサービス残業なんてしないので、残業したらしっかりその分は手当をもらう。契約時に決めた労働条件にちょっとでも違反しようものなら大騒ぎで、すぐに労基署に駆け込まれるくらい労働者の意識は高い。

 

これが小売業に与える影響は大きく、賃金を上げすぎると経営者が委縮して雇用を縮小させる方向に向かうのだが、それでも最低賃金を上げることで現在働いている人々には恩恵となる。

 

雇用が減るじゃんと言っても、どんな企業でも一定数の雇用は必要であり、雇用されなかった人は政府の失業保険で65歳までずっともらい続けることが出来るから失業者が街に溢れるということはない。

 

日本では失業保険は半年程度で打ち切られ、それ以降は仕事がなければ飢え死にするしかないのでどんな仕事でもなんとか見つけて働くしかないから、企業を首になった中年サラリーマンがコンビニでレジ打ちをするという光景によく出会う。

 

しかしニュージーランドでは65歳まで失業手当が出るので、今の会社も飽きたしちょっとお休みしたいなーと思って退職、半年や1年くらいのんびりと失業保険で食っていくことが出来る。

 

平日の昼間からオークランドのカフェは中年男性をたくさん見かけるが、彼らは大体の場合投資家か失業者だ。どちらにしても食うには困らない状態の人々である。

 

ニュージーランドでは自分が手に汗して働くというのは「労働階級」と考えられており、金持ちになればイギリス貴族のように他人に働かせて自分はのんびりとする方が格好良いって思われてる。

 

なので昼間からカフェでのんびりしている人に「働かなくても大丈夫なの?」と聞くと彼らはのんびりした声で「あ、大丈夫、金に働かせてるから」だって。

 

これが失業者だった場合は「だって政府がおれの納得出来る仕事を用意出来ないんだもん」となる。労働者にとっては働く場所がない=仕事を提供出来ないのは政府が悪い、だから政府が罰金を払うということになる。

 

こんなの日本じゃ考えられない理屈であるがニュージーランドではこれで通る。だからWINZNZ政府のハローワークみたいな機関)がせっせと失業者の為に職探しをしたり政府の金で職業訓練学校に通わせたり、地元の企業に頼み込んで「なあ、悪いけど政府が半分給料出すから、能力のないこの子を採用して勉強させてくれないかな」となる。

 

全く恵まれた制度ではあるが、そりゃそうだニュージーランドは元々労働者天国として作られた国なのだ。

 

1840年にこの国が英国の植民地として開始され三代目のジョージグレイ総督が剛腕でこの国を労働者天国の理念を導入してその後も歴代首相によって最低賃金法、労働組合法、老齢年金、などなど様々な法律を整備していき1900年代初頭には「社会主義実験国家」として世界中の政府から視察が訪れたほどだ。


この背景にあるのは1800年代初頭のロンドンにおけるあまりに酷い労働者搾取にあり、資本主義に疑問を持つ貴族たちが新天地を作り上げようとしたのがニュージーランドなのだ。
 

それからニュージーランドは1960年代までの60年間は世界でトップクラスの裕福な国家となり、当時は英国からニュージーランドに出稼ぎに来る英国人もたくさんいたくらいだ。

 

ただ行き過ぎた社会主義がその後の国際社会で競争力を失うことになり1970年代後半には国家財政が崩壊した。

 

1984年に首相となったデービッドロンギにより市場の自由化、経済開放、国家公務員の大幅削減(8万人を3万人!)を行い、それからやっとニュージーランド経済は復活して1990年代からはまたも豊かな国に戻って現在がある。国家財政で見ると1993年から2007年まで毎年黒字を出している。


けれど国家創設の基本である労働者天国という考え方は変わらないので、今でも労働者、てか国民の基本的権利は見事に守られている。
 

のんびりとした生活、のんびりとした仕事、ミスしても文句言われない労働者、仕事がなくても食っていける人々、これで国家が運営されているわけであり、そう考えたら、やっぱり日本って働きすぎだし労働者への再配分率って、かなり悪いぞって感じですな。



tom_eastwind at 14:25│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 | NZの不動産および起業

トラックバックURL

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔